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    高校生が論じたAIと人間の未来…清泉女学院

     清泉女学院(神奈川県鎌倉市)の高校生有志が、今話題のAI(人工知能)が提起する倫理的課題を考えようと、他校にも声をかけて共同で「第1回AI倫理会議」を開催した。生徒たちの真剣な議論は、SF小説家アイザック・アシモフの「ロボット工学3原則」さながらに「憲章(ルール)」としてまとめられた。この内容を政府にも提言していきたいという。白熱の議論を聞きに行った。

    「AI、自分たちで考えなきゃ」

     会議開催のきっかけは、清泉女学院で行われた倫理の授業だった。倫理の小野浩司教諭はAIについて積極的に授業で取り上げてきた。人工知能「アルファ碁」が囲碁のトップ棋士を破った話題を取り上げたり、人型ロボット「ペッパー」を教室に迎えたりして、さまざまな角度からAIについて考えてきたという。

     生徒は初めのうち、AIの進化が引き起こす変化に対する期待や不安を漏らすばかりだったが、やがて自分たちが担う将来について、もっと積極的に見識を深めようと、議論の場を作ることに決めた。また、せっかくの機会なのだから、他校生にも呼びかけ、一緒にAIの活用法や倫理的課題について話し合うということや、「憲章(ルール)」を作成して内閣府や経済産業省に提言するという方針も決まっていった。

    アイスブレイクで緊張をほぐす

    • アイスブレイクの様子
      アイスブレイクの様子

     1月28日午前9時、清泉女学院4階の階段教室に、中学3年生から高校2年生までの約40人が集まった。カリタス女子、横浜雙葉、横浜共立など神奈川県内の女子高からの参加に加え、東京都内の学校から男子生徒の参加もあった。

     初対面同士で緊張した雰囲気を一掃するために、まずはアイスブレイク。20分ほどでグループ分けと自己紹介が済むと、生徒たちは互いにすっかり打ち解け、表情もすっかり和やかになった。

    専門家の講演で議論の土台作り

    • 波多野さんの講演
      波多野さんの講演

     すぐに議論に入りたいところだが、もう一つ準備が残っている。議論をちぐはぐにしないためには、素材となるAIの知識や情報を一定のレベルで共有することが必要だ。共通のベースを作るために今回は、AIの専門家による講演が用意された。

     テーマは「AI・ディープラーニングの可能性」。講演者の波多野健さんは、東芝インダストリアルICTソリューション社のディープラーニング技術開発部参事。生徒が自分たちで講師として選び、招いた人物だ。

     講演の重要なポイントは、AIはディープラーニングという学習方法を取り入れたことで、新たな進化の段階に入ったことや、AIは今後も進化を続け、シンギュラリティ(技術的特異点)がやってくるということだった。2045年には人間の能力を超えたAIが誕生するという話もあり、そうなれば人はAIに仕事を奪われ、人工知能に支配されてしまうのではないかという不安の声も上がってくる。

     ここから多岐にわたる議論が生まれるが、波多野さんは問題点を巧みに整理し、簡潔に紹介していた。生徒たちもスムーズに理解できたことだろう。

    五つのグループに分かれて議論

    • グループ別での議論
      グループ別での議論

     講演後、生徒たちは事前に考えておいたサブテーマに応じてグループを作った。サブテーマは「AIに感情を持たせるべきか」「どのようなAIを作ることができるのか」「AIの進化が社会に与える影響とは」「AIをいのちと呼べるのか」「AIは人類の脅威となり得るのか」の五つだ。

     階段教室を離れると、議論に集中できるようグループごとに割り当てられた教室に移動した。教室をのぞいてみると、どのグループも活発な議論を始めていた。これから昼食を挟んで約4時間の議論を行い、グループごとに「憲章(ルール)」案を作成する。

    定義付けから徹底的に議論

     「AIに感情を持たせるべきか」グループの議論は、5グループ内で最大の11人が参加した。議論は「そもそも感情とはなにか」という定義から始められた。

     「感情は過去の体験やコミュニケーションを通じて育まれていくもので、人それぞれに異なっている」「人間は感情を抑えるために、理性を持っている」「AIに感情は必要なのだろうか」「AIに感情を持たせたら、人間との違いがなくなってしまうのではないか」など、活発に話が進む。初対面とは思えないほど、ストレートに意見をぶつけ合っていた。

    AIと人間共存のルールは

    • 各グループが憲章案を発表する
      各グループが憲章案を発表する

     議論の時間が終了し、全グループが最初に集まった4階の階段教室に戻ってきた。いよいよ「憲章(ルール)」案の発表だ。読み上げられた内容に耳を傾けていると、人間がAIに優先することや、AIの悪用防止、AIを使う人間側の責任などの論点が、いくつかのグループにまたがって共通の認識になっていた。

     ただ、「AIをいのちと呼べるのか」を議論したグループは、AI自身が心や感情を持てば、「いのち」と呼べるとし、AIを個人として認め、社会の一員として扱うこと、人間はAIに依存せずに自立するべきなどの提言を行い、異色の内容となっていた。 

     小野教諭によると、今回はグループごとに「憲章(ルール)」案を煮詰めていき、生徒が話し合った倫理憲章の報告書として、内閣府の社会システム基盤グループの担当者に提出する予定だ。今後も勉強や話し合いを継続し、3年をめどにして内閣府や経済産業省などの関係機関にAIに関する倫理憲章を提案することを目標にしているという。

     シンギュラリティ(技術的特異点)の到来が論じられる2045年を見すえ、中高生たちが真剣に話し合った意見が役立つことに期待したい。

    (文と写真:丸山典昭)

    清泉女学院中学高等学校のホームページはこちら

    2017年02月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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