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    英語弁論で「メッセージを伝える喜び」…聖ヨゼフ学園

     創立64年のミッション・スクール、聖ヨゼフ学園中学・高等学校(横浜市)では、英語弁論大会が創立当時からの伝統行事だ。今年も、オーディションを通過した中1から高3までの17人が、熱のこもった英語弁論を披露した。出場した生徒や英語教諭、清水勝幸校長らに英語弁論大会、そして同校の英語教育が目指すものについて聞いた。

    司会進行もすべて英語で

    • 生徒たちは、全校生徒、保護者らの前で堂々と弁論する
      生徒たちは、全校生徒、保護者らの前で堂々と弁論する

     「Honorable Judges,teachers,and friends, welcome to St.Joseph’s annual speech contest.(ジャッジの皆様、先生方、生徒の皆さん、聖ヨゼフ学園の校内英語弁論大会へようこそ)…」。昨年度、同校英語弁論大会で1位になった小板橋あや乃さん(高2)が、チェアパーソン(司会)として大会の始まりを告げた。

     大会は弁論だけでなく、開会のあいさつなどの進行もすべて流暢な英語で行われる。続く清水勝幸校長も「…So,listen to your friend’s speech carefully and attentively.(友達のスピーチを慎重に注意して聞きましょう)」と英語であいさつした。

     英語弁論大会は、学年によって競う内容が異なる。中学生は聖書の一節や短い物語の暗唱、高1、2生は前もって作成した英語弁論、高3になると、前日にくじ引きで当たった演題についてスピーチすることになる。高3は、たった1日しか準備期間がないため、英語と弁論の実力が歴然とする厳しい大会だ。

    • 清水勝幸校長「英語弁論大会は自分とは違う意見を聞く場でもあります」
      清水勝幸校長「英語弁論大会は自分とは違う意見を聞く場でもあります」

     出場者が流暢(りゅうちょう)な英語で次々と暗唱や弁論を披露するたび、会場は拍手で沸いた。審査の結果、中3で1位になった大沼萌奈さんは「途中で一瞬英語が出なくなったとき、1時間くらい時が止まったように感じました。だめだと思っていたので、優勝できて本当にうれしい」と大粒の涙を流した。毎日、NHKラジオの基礎英語を聴き、どっさり出される英語の宿題をこなして力をつけてきた。中2で実用英語技能検定(英検)準1級も取得している。「中1から3年間、英語弁論大会に力を入れてきました。人前で発表するのが上手になったと思います」

    少人数の英語教育でコミュニケーション力

     審査員を務めたフェリス女学院大学の奥原ジョージ講師は、「長年この審査員を務めていますが、年々素晴らしくなっています。創立以来変わらない聖ヨゼフ学園の家庭的な雰囲気の中で、きめ細かい教育を受け、英語が堪能な生徒が育っていますね」と話す。

     英語教育に力を入れるのは同校の伝統だ。中学では1クラスを二つに分けて13、14人の少人数で教える。中1の後期から英語の多読を行い、高校での速読につなげている。昨年度は中学2、3年までに英検準1級、2級、準2級を学年全体の4割が取得した。高校2、3年では7割に達するという。

     授業以外にも英語に触れる機会は多く、週に1度、英語での朝礼があり、月に1度の講堂朝礼も英語で行われる。高校ではアドバンスト・イングリッシュコースも設置されていて、週10、11時間の英語科目を履修する。

    • 英語科主任の山嵜美香教諭
      英語科主任の山嵜美香教諭

     英語科主任の山嵜美香教諭は、「大学受験のためだけの勉強はしてほしくありません。せっかく6年間英語を勉強するのだから、その後の人生に生かせる学びにしてほしい。音楽がどんな民族にとっても喜びであるように、言葉でお互いを分かり合うことは、人間みな楽しいものです。英語が持つコミュニケーションの力を感じてほしい」と熱く語った。

     清水校長は「きれいな英語を話すだけではなく、中身を育てていかなければなりません」と話す。宗教の時間には、自ら「死や愛について考える授業」をしている。「死について考えることで、どう生きるかを考えてもらうのです。英語弁論大会も同じです。少々英語が間違ってもいい、どう生きるかという、伝えたいメッセージがあることが大事なのです」

    自分の伝えたいメッセージを表現する

     先生たちのこうした熱意ある授業などを通し、同校の生徒は、社会問題に目を向け、自分の内面を見つめ直す。英語弁論で表現されるものは、生徒たちがこうして見つけだしたメッセージが多い。

     高2で1位に輝いた黒住菜月さんは「My new self(新しい自分)」と題してスピーチした。内容は、英語のサマーキャンプに参加し、自分を変えた経験だ。

     黒住さんは、入学当時は引っ込み思案だったそうだ。やがてESS(English Speaking Society)で活動を始め、この経験を生かそうと、中3から英語弁論大会に挑戦し始めた。中3では3位だったが高1では賞を逃し、悔しい思いをしたという。そこで挑戦したのが、高1夏の英語サマーキャンプ。黒住さんはこれを機に、自分が変わるのを感じたという。

     「アクティブになって、自分の意見を言えるようになりました。それまでは、他人の反応を気にしてあまり意見を言えない『静かな人』でしたが、自分のアイデアを出せば賛成してくれる人がいて、ディスカッションすることでより良い結論が出せるということに気づきました。英語弁論大会の経験を重ねて発表する自信がつき、今回、この気づきを発表できました。やって良かったと思っています」

    • 卒業生でもある英語科の木下エリカ教諭
      卒業生でもある英語科の木下エリカ教諭

     山嵜先生は、黒住さんの変化をしっかり見ていた。「中学のときは先輩に何か聞かれても、反応はいまひとつ。よろよろして部活も辞めるのではと心配でしたが、内面の変化を力強い言葉で表現し、声の出し方、パフォーマンスの仕方まで変わりました。大きく成長した姿を見て涙が出ました」

     同校卒業生で現在、英語科の木下エリカ教諭も自分の体験を話す。「私は中1から英語弁論大会に出続けました。高3では1位を取れましたが、悔しい思いもしました。先生の厳しい指導に涙が出ることもありましたが、そのくらい熱を込めて指導してくれます。聖ヨゼフ学園は少人数で、どの先生も自分のことを知ってくれているという安心感があります」

    4技能統合の授業が本当の力を育てる

     高3で1位に選ばれたのは、宮村るなさんだ。前日のくじ引きで当たった演題は「When is it O.K.to lie?(ついていい(うそ)とは?)」。宮村さんはイタリア映画「Life is Beautiful」を題材にして夜2時頃まで考えて練習したという。

     「ユダヤ人収容所に収監された親子の話で、お父さんが子どもに嘘をつき、そのおかげで子どもが生き延びたというストーリーの映画です。聖ヨゼフ学園の英語の授業は、Writingがとても多く、社会的なトピックスなどをリサーチして書き、それを発表してディスカッションします。ですから、今回もいつもの英語の授業の延長で書けました」

     同校はReadingやListeningで得たことを話し合い、その後SpeakingやWritingへという技能統合の授業を長年行っているという。一晩で演題からテーマを考えて実際に弁論できるのは、そうした普段の英語教育があるからなのだ。

     宮村さんは「英語ができるだけでは足りないと思っています。将来は英語をツールとして、何か人のためになる仕事がしたい」と将来への夢を膨らませていた。

     山嵜教諭は「借りてきた言葉ではなく、友達の心からの言葉だからこそ、コミュニケーションの喜びを感じるんだと思います。この喜びこそが、言語習得を推進するのではと思っています」と話す。生徒たちはまさに、英語弁論大会で自分の思いを伝え合っていた。英語を通して分かり合えた会場で、涙がいくつも光っていた。

     (文と写真:小山美香)

    2017年09月05日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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