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    本物に触れ、生き抜く力養う…國學院久我山

     國學院大學久我山中学高等学校(東京都杉並区)の今井寛人校長は、今年で就任5年目を迎えた。サッカー、ラグビーなどのスポーツ強豪校として知られる同校に特別進学「STクラス」を導入し、進学でも大きな実績を築いてきた。文武両道の教育を推進してきた今井校長に、教育方針や信念について語ってもらった。

    文武両道の実現へ

    • 文武両道の教育を推進する今井寛人校長
      文武両道の教育を推進する今井寛人校長

     今井寛人校長は、國學院久我山を卒業して東京理科大学(数学科)に進み、母校に帰って数学教師となった。同校と共に歩むこと半世紀。4年前、校長に就任したが、今も求めがあれば喜んで教壇に立つ。根っからの教育者であり、いわば「久我山人」だ。周囲からは「アイデアと決断力があり、かつユニーク」と慕われている。その今井校長が情熱を傾けてきたのが「文武両道」だ。

     「中学時代にもサッカーで活躍していたある子が、推薦ではなく通常の入試でうちの高校に入ってきました。この子が『部活だけやるんだったら他の学校に行った。ここには部活も頑張りながら大学に入れる学習環境がある』なんて生意気なことを言ってきたんですよ」と、今井校長はほおを緩めて話した。「サッカーに限らず、バスケット、ラグビーなどで活躍し、受験勉強を頑張ってうちに入ってきたという生徒は多いんです。こういう、バランスのとれた文武両道が、伝統として息づいている。卒業生たちのおかげですね」

     同校は、全国レベルの実力を持つ運動クラブが多い。昨年1月、かつて今井校長が顧問を務め、「文武両道イレブン」の異名で親しまれたサッカー部が、全国高校サッカー選手権大会で準優勝に輝いたのは記憶に新しい。ラグビー部も一昨年、通算40回の全国大会出場を果たし、5回の優勝経験を持つ強豪チーム。野球では夏の甲子園に2度、春も3度出場している。サッカー、野球のプロ選手、ラグビーの実業団選手を輩出しており、スポーツ強豪校のイメージが濃い。

     しかし、サッカー部が「文武両道イレブン」と呼ばれたように「文」の側面、学力強化、進学対策にも目を見張るものがある。今井校長は文武両道を文字通りに実現すべく、「文」も力強くリードしてきた。

     「文」の強化を象徴的に示しているのが、2008年に中学でスタートした特別進学クラスの「STクラス」だ。STはSummit(頂上)・Straight(真っすぐ)・Spirit(気概)の略だ。STクラスは、中高男女12学年のうち各学年2クラスで構成されており、東京大学や一橋大学など最難関と言われる「頂上」への現役合格を目指す。スピーディーに単元を消化していく「進度」、高度な思考に耐える応用力を鍛える「深度」が授業の特徴だ。

     17年度の大学入試では、STクラスから国公立に20人、早慶上理に95人が合格する実績を挙げた。さらにSTクラスが牽引(けんいん)役となり、同校全体では、東大を始めとする国公立に66人(うち現役46人)、早慶上理に270人(同203人)の合格者を出している。こうした実績を好感し、同校を第1志望として複数回受ける受験生も多いという。

    「世界に発信する力が久我山らしさ」

    • 高校女子「能楽」の様子
      高校女子「能楽」の様子

     現在、多くの学校がグローバル社会で活躍できる人材の育成に目標を置いて教育を進めている。同校も、もちろん積極的に対応を進めているが、特徴的なのは「発信力」の重視だ。

     海外の文化、社会、伝統を理解するだけでなく、「日本から世界に発信していける力を身につけることが久我山らしさ」と、自身の体験を振り返りながら今井校長が強調する。

     「筝曲部の顧問をしていた時のことです。ある女子部員が『アメリカ人とカナダ人の友達2人が日本に来るので、日本の伝統文化である(こと)を体験させたい。夏の合宿に連れていっていいですか』と相談してきたのです」

     既にグローバル化が叫ばれ始めた頃だったが、中高生を留学させるのは、今ほど簡単ではなかったという。「私は『日本にいてもグローバル社会を体験することはできるはず。海外からの合宿参加は、部員たちにとっても得難い体験になるはず』と、当時の校長に提案して実現することができました。私の期待した通り、部員たちは『さくらさくら』を弾けるよう、2人に手取り足取り教え、片言の英語で懸命にコミュニケーションしていました。言葉の壁を乗り越え、全員で筝を演奏できたときの感動はひとしおでしたね」

    国際理解も文化体験も

    • 掲示板に貼られた「グローバル・リーダーシップ・ワークショップ」の写真
      掲示板に貼られた「グローバル・リーダーシップ・ワークショップ」の写真

     この合宿の成功をきっかけとして、同校は多彩な英語学習、海外研修プログラムを開発していく。

     たとえば、07年にスタートした「イングリッシュ・サマーキャンプ」は、長野県の蓼科にある國學院大学の寮で行われる2泊3日のプログラムだ。期間中、米国からの留学生らと英語だけでコミュニケーションをとり、プレゼンテーションやゲームを行う。

     「英語で地域探訪」というプログラムでは、生徒がガイド役を務め、國學院大学に在籍する留学生たちを、久我山周辺に点在する歴史・文学にゆかりの深い場所に案内し、英語で紹介する。

     このほかにも「グローバル・リーダーシップ・ワークショップ」「英字新聞作り」など、さまざまな取り組みがある。今井校長が自ら作成し、今年から使われている「Mathematics in English」という教材もその一つ。生徒に、英語のテキストからじかに数学を学んでもらう試みだ。

     海外語学研修も活発で、毎年、希望する高1の男女約50人がイギリスを訪れる。夏休みの17日間、ホームステイしながら各国から参加した生徒たちと同じ教室で学び、交流を深めている。

     「世界に発信するには、英語を学ぶだけではなく、日本の伝統文化を深く理解する必要があるし、本物に触れる必要がある」という今井校長の方針のもと、同校ではさまざまな催しを開く。

     中学生は3年間で能、ミュージカル、クラシック音楽を鑑賞する。いずれもサントリーホールや東京オペラシティコンサートホールなど一流の演奏会場で催される本格的なもので、保護者の多くも楽しみにしている。

     1985年に発足した同校女子部には、初年度から「女子特別講座」が設けられ、中2で華道、中3で茶道、高1で能楽、高2で日本舞踊の指導を受けている。毎回一流の講師を招き、技能や作法を学んでいるという。

     また、これまで女子部の高1だけが受講してきた「能の講座」を、今年から男子部も中2で年8回受講することになった。

    生き抜く力を養う

    • 授業風景
      授業風景

     同校では、「忠君孝親」「明朗剛健」「研学練能」という三つの箴言(しんげん)(格言)を「学園三箴」と呼んで教育理念としている。

     この三箴の意味するところを生徒たちにも受け止めやすいようにかみ砕いて、同校では「頭の力・体の力・心の力を育てよう」と言い換えてきた。さらに今井校長は、「私はこの三箴を『生き抜く力の涵養(かんよう)』と捉えています」と話す。「そのために、生徒たちに良いと思えるものは何でもやらせたい」

     「国際理解教育や文化体験に力を入れているのも、部活を奨励しているのも、生徒たちにいろんな体験を積み重ねてほしいからです。そのような体験が、生き抜く力となり、社会に出たあと、どのような状況にあっても、どのような人間に出会っても、柔軟に発想し、対応して『面白い!』と思われるような人間に成長することを心から願っています」

    (文と写真:松下宗生 一部写真提供:國學院大學久我山中学高等学校)

    2017年08月31日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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