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    模擬国連国際大会で見せた英語力…浅野

     浅野中学・高等学校(横浜市神奈川区)のディベート部員2人が、高校模擬国連の全国大会で優秀賞に輝き、米ニューヨークで5月に開催された国際大会でも見事な英語力を発揮した。アフリカの島国代表役を務めた2人は英語を駆使して他国チームと交渉し、貧困問題を解決する決議案を堂々発表したという。部員と顧問の宮坂武志教諭に、快挙までの道のりを尋ねた。

    ニューヨークの模擬国連で堂々決議案

    • ニューヨークで開催された高校模擬国連国際大会
      ニューヨークで開催された高校模擬国連国際大会

     日本代表派遣団として5月12、13の両日、米ニューヨークで開催された高校模擬国連国際大会に参加したのは高3の小塚慶太郎君と高2の宗武陸君だ。

     模擬国連は、2人1組で一国の大使役を担当し、世界が直面するさまざまな問題について他チームと議論を戦わせ、国益を踏まえた合意を目指す活動。今回、2人は北アフリカの西沖合に位置する小さな島国カーボベルデを担当した。議題は「金融の安定化と低所得国における開発について」だった。ほとんど聞いたこともない国名に戸惑い、事前のリサーチにも苦しみながら臨んだ会議で、2人は貧困問題解決に向けて「モバイル・バンキング・システムの構築」を提案。他国チームの協力を取り付け、グループ代表として決議案を出すまでにこぎつけた。

     2人が所属し、日頃プレゼンテーションや交渉力を磨いている同高ディベート部は、2014年に有志で発足し、16年に正式な部に昇格したばかり。

     大会前の取材で、宗武君は「資料が極端に少ない国。英語の文献さえなかなかない」とリサーチの苦労を嘆いたが、小塚君が「でも、小国だから議論のターゲットになりにくい。戦略上有利だよ」と返す場面があった。性格も考え方も異なる2人だが、そこがかえって補い合い、好結果を生んだのだと思う。

    数か月にわたるハードな下準備

    • 模擬国連に向けた準備を紹介する小塚君と宗武君
      模擬国連に向けた準備を紹介する小塚君と宗武君

     模擬国連の練習や活動方法は具体的にどういうものなのか。小塚君と宗武君に聞いた。

     「大まかに言って準備は四つ。担当国のリサーチ、議題のリサーチ、政策の立案、会議の戦略です」。さすがに説明の仕方も歯切れ良い。

     国際大会出場を決めた2016年秋の第10回全日本高校模擬国連大会を例にとってみよう。2人はポーランドを担当し、議題は「国際安全保障を踏まえたサイバー空間の運用」だった。

     定石は、利害が近い国でグループをつくり、議論の主導権を握ることだという。このケースでは、大国ロシアによるサイバー攻撃への対応が大きな課題だった。そこで、ポーランドと立場が近いベラルーシと協力し、ルールの設定を要請する決議案の提出にこぎつけた。これが評価され、ベラルーシ担当の灘高等学校と最優秀賞、優秀賞を分け合い、国際大会進出を決めた。

     国際大会に参加するにあたっては数か月の準備と多くの議論を費やした。教員や卒業生を頼って、元外交官をはじめ、世界銀行や外務省、JICAなどの職員にカーボベルデの事情を取材した。東京大学の模擬国連サークルから戦略アドバイスを、世界史が専門の宮坂教諭から「特別授業」を受けたりもしたという。

     事前のリサーチ資料は、カーボベルデについてのデータと現状分析はもちろん、英語で書いた決議案の草稿、さらに大会までの1日単位のスケジュールまできっちり準備してあった。「議題が漠然として幅広いので、膨大な下調べが必要でした。数十ページの英語の論文を一晩で読んで要約、なんてザラです」

     この準備作業を通して2人がたどりついた戦略は、「模擬国連は常連校が多く、単純なスキルではかなわない。ならば、他国チームに、同じ方向を向かせる役割を担おう」というものだった。

     その背景には、小塚君の苦い経験がある。「ある練習会で、強引に議論をまとめようとしてメンバーの反感を買い、大失敗しました」。小塚君は、議論や交渉のスキルに加えて「仲間」の力が不可欠と思い至った。「本戦では笑顔を心がけ、ムードメーカーとして議論を引っ張るのが僕らなりの秘策です」。ニューヨークでは狙い通り、関係する他国チームとの議論をまとめ上げたようだ。

    深まり、広がるグローバル教育

    • ディベート部設立からの経緯を語る宮坂武志教諭 
      ディベート部設立からの経緯を語る宮坂武志教諭 

      ディベート部の生みの親は、現在、顧問を務める宮坂教諭だ。宮坂教諭は、同校が神奈川県の「私立男子校御三家」と呼ばれ、学問と部活の「文武両道」を掲げる学校でありながら、生徒たちの姿勢が内向きなのが気になっていた。そこで、生徒の視野を広げようと、模擬国連に着目。数人の生徒に声をかけて部をスタートさせた。

     ディベート経験のある英語担当教諭にも加わってもらい、各地で行われる模擬国連やディベート大会、練習会に出場し、力をつけた。現在は、登録部員数は約60人に拡大した。週3回の練習に常時10人から20人が参加しているという。

     宮坂教諭は、昨年度まで学校の「グローバル化推進委員会」の委員長を担当し、模擬国連以外にも世界に視野を広げ、知的活動を行うプログラムを授業や研修に取り入れてきた。

     中3社会科の特別授業には、模擬国連の体験授業を導入している。1クラス45人を5人ずつ、9か国に分け、1か国から1人ずつ派遣する形で五つのミニ国連をつくり、世界の現実に即した問題を議論させている。

    • 米スタンフォード大学での研修風景
      米スタンフォード大学での研修風景

      高1、高2を対象とした海外研修も単なる語学研修を超える内容だ。米スタンフォード大学での研修では、「ユースリーダーシッププログラム」に参加し、商品開発など実践的なテーマにグループで取り組む。これを通じて自己PRやブレーンストーミング、プレゼンテーション、ストレスマネジメントなどを学ぶ。また、英オックスフォード大学での研修では。「リベラルアーツプログラム」に参加し、美術や文学、歴史、マルチカルチャーなどのテーマでグループ学習を行っている。

     これらのプログラムを消化できるよう、英語力のテコ入れにも目配りしている。中学の家庭学習では、パソコンによる音読録音トレーニングシステムを導入し、「読む、書く、聞く、話す」の4技能を底上げする。中2の春休みにはネイティブの講師による3日間の集中プログラムがある。そのほか、横浜市国際学生会館(YISH)で各国留学生と交流する「YISHアカデミア」、アメリカの大学生と5日間に渡って議論する「エンパワーメントプログラム」などを導入した。

    大きな成長のきっかけに

     模擬国連の経験は二人に大きな変化をもたらしたようだ。

     小塚君は、「以前は、漠然とどこかの民間企業に就職できればと思っていましたが、今は国際機関に行って様々な問題に取り組みたい」と希望を膨らませている。

     学校の教員志望だったという宗武君も、「個別の教育より教育政策に関心を持つようになりました。貧困を救うための教育改革に携わりたい」と、一歩踏み込んだ未来を見つめていた。

     2人が異口同音に語ったのは、「もっと大きな世界に挑戦したい」という気持ち。これからの時代に最も必要なことを学んだのかも知れない。

    (文と写真:上田大朗 一部写真提供:浅野中学校・高等学校)

    2017年06月20日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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