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    「敬神奉仕」の精神と多様性を認め合う心…東洋英和

     東洋英和女学院中学部・高等部(東京都港区)は130年以上の伝統を誇るミッション系の女子中高一貫校だ。高い進学実績を誇る同校の教育方針や、人間教育に重要な役目を果たす野尻キャンプ、また特に英語教育の伝統について、石澤友康部長に話を聞いた。

    日々の活動に生きる「奉仕」の精神

    • 中学部の石澤友康部長
      中学部の石澤友康部長

     「神様を敬う『敬神』と隣人を自分のように愛する『奉仕』を合わせた敬神奉仕の精神が創立以来大切にしてきたものであり、全ての基本にあるものです」。中学部の石澤友康部長は、こう話した。

     同校は女子進学校として知られ、東京大学や京都大学をはじめとした国立大学や早慶上智、MARCHといった難関私立大学にも合格者を輩出している。しかし、重きを置いているのは、いかにして豊かな心を育むかであり、人間教育なのだという。

     東洋英和は1884年(明治17年)に、カナダ・メソジスト教会(現カナダ合同教会)によって創設されたプロテスタント系のミッションスクール。構内には、米国人建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964年)の設計によるスパニッシュミッション様式の校舎や、荘厳な大講堂や鮮やかなステンドグラスをあしらったチャペルもある。キリスト教の信仰を土台に人間形成・人格形成を重んじる女子教育を行っている。その柱となるのが「敬神奉仕」の精神だ。

    • ディアコニア活動で車椅子を体験する生徒たち
      ディアコニア活動で車椅子を体験する生徒たち

     「ギリシャ語で人に仕えるという意味の『ディアコニア』という活動を年に7回ほど行っています。街中で車椅子の方が困っていたらどう助けたらいいのか、目や耳が不自由な方と接するときには、どのようなことに気をつけるべきなのかといったことを学びます。つまり手を差し伸べるときに、その方法を知っていれば一歩を踏み出しやすいというわけです。しかし最も大切なことは、実際に車椅子に乗る、目隠しをして誘導してもらったり、硬貨を触ってみたりするなど、生活のほんの一部ではありますが、体験することにより、その思いを想像する、それが寄り添って生きることにつながっていくと考えています」

     さらに、中学1年生は「花の日礼拝」という活動があり、それぞれ花を持ち寄って老人ホームや養護施設を訪問し、奉仕活動を行う。また、部活動単位でも奉仕活動がある。テニス部であれば車椅子テニスの大会のボールパーソンを務めたり、音楽部であれば養護施設に赴いて共に歌を楽しんだりする。

     「隣人を自分のように愛しなさい、という聖書の言葉を読むだけでなく実際に行動に移すことで、たとえ目や耳が不自由でも、お年を召していても人はみな神様のもと等しい存在であることを学び、やがては当たり前のように助け合える心が育まれるのだと考えています」。大きな教育方針が実際の行動に具体化されていくのが同校の持ち味だ。

    聖書の言葉が育む自己肯定の気持ち

    • 厳かな雰囲気の大講堂
      厳かな雰囲気の大講堂

     こうした奉仕活動と並び、「敬神奉仕」の精神を養ううえで欠かせないのが礼拝であり聖書の授業だ。生徒たちは毎朝、大講堂で聖書を読み、讃美歌を歌い、教師の話に耳を傾ける。

     入学を考える受験生の全てが、キリスト教に親しんでいるわけではない。校風になじめるかどうか不安を訴える声もあるだろうが、石澤部長はこう打ち消す。

     「教会に行ったことがありません、聖書も開いたことがありませんという生徒が大半です。実際、私も着任する前はわからないことだらけでしたし、何も知らない方でもわかるよう初歩的なところから学んでいくので何の問題もありません」

     「東洋英和というと物静かでお嬢様といったイメージがあるかもしれませんが、むしろ明るく屈託がなく好奇心旺盛といった生徒が多いんです。勉強に遊びにと伸び伸びと学校生活が送れているのは、聖書に書かれている言葉によって自己を肯定できる前向きな気持ちや他者との違いを認め合い尊重する心が育まれているからだと確信しています」

    宿泊行事で互いの多様性を学ぶ

    • 大勢の生徒が参加する野尻キャンプ
      大勢の生徒が参加する野尻キャンプ

     奉仕活動や聖書の授業に並び、生徒の人間教育に大きな役目を果たしているのが多彩な行事である。毎年8月には長野県信濃町の野尻キャンプサイトで5泊6日の野尻キャンプが行われる。これは東洋英和ならではの歴史ある宿泊行事である。中学3年から高校3年の希望者を対象とし、学年が違う生徒同士がグループを組んで寝食を共にする。

     「学年の違う生徒たちが助け合い、湖での遠泳やカヌー、ヨットといったアクティビティーを体験する。都会育ちの英和生が野尻湖の大自然に抱かれ、仲間との共同生活の中、心身を鍛錬し、真の友情を培い、歌と愛情に囲まれて、新しい自分と神様に出会う場。ときにはトラブルに直面することもありますが、そうした刺激を受けて一回りも二回りも大きくなって帰ってきます」

     生徒同士で多様性を認め合うという意味ではクラス分けも同様だ。同校では文理の区別をせず、いわゆる特進コースといったクラスも設置していない。

     「“文系”も“理系”も“芸術系”も入り交ざったクラスですから、いろんなタイプの生徒がいて進路先も多種多様。一つのクラスに東京大学に行く生徒がいれば、宝塚の音楽学校に進むような生徒もいます。一人一人違っていても、助け合いの精神や他者を尊重する心が根底で共通しているので、互いに認め合って伸び伸びと学校生活を送っていけるんです」

    本当に使える英語力が身につく環境

    • ネイティブの教員による英語の授業
      ネイティブの教員による英語の授業

     「敬神奉仕の精神」と並ぶ、同校のもう一つの特徴は、英語教育の伝統だ。もともとカナダの女性宣教師が創立した学校だけに、日常生活でも使える生きた英語習得に力を注いでいるという。高校を卒業する頃には多くの生徒が海外での高等教育に対応できるほどの英語力を身につける。

     中学1年のうちから週に6時間の授業があり、そのうち2時間はネイティブの教員による英会話レッスンだ。他にも讃美歌やお祈りなどを全て英語で行う英語礼拝や、学年に応じて英語のスピーチや有名な演説や詩を暗唱するコンテストもある。日々の学校生活の中に取り入れられた英語を学ぶうちに、生徒たちは一度日本語に訳して理解するのではなく、英語を英語のまま理解できるようになるのだという。

     「英語は言ってみればツールですので、目標は英語を使って科学や社会、文化といった教養を身につけることです」

     このほか、カナダやアメリカへの語学研修、あるいはオーストラリアの協定校への短期留学など、希望者がさらに語学力を伸ばせる制度も整えている。

     このような英語教育を受けている生徒は同校の学校案内にこんな言葉を寄せている。

     「中学3年生のときにカナダ語学研修に参加し、現地の子供たちやホストファミリーと触れ合う中で、英語を介してさまざまな人と関わり文化や意見を交換することの驚きと楽しさに目覚め、英語って素晴らしい!と素直に思いました。英和で学ぶ英語は実用的で、それを発揮できる機会が多いことが特徴です。英和に入学してから世界を身近に感じるようになり、日本とはどんな国か? 自分とは?と考えるようになりました」

     人生で最も多感で濃厚な12歳から18歳の時期をどのように過ごすかは、その後の人生に大きな影響を与える。同校の生徒たちは毎朝、聖書の言葉に学び、キリスト教に基づいた自己肯定と他者尊重の精神を培っているという。

     「中高時代は、社会に出るための準備期間でも、大学へ入るための訓練期間でもなく、長い人生で、そのときにしか過ごせないきらめくような貴重な一瞬。このかけがえのない時間を、中学生らしく高校生らしく、大いに学び、大いに遊んでほしい」。

     建学の精神であり学院標語でもある「敬神奉仕」を胸に、生徒たちは毎日、のびのびとした学校生活を送っているようだ。

    (文と写真:森祐一 一部写真:東洋英和女学院中学部・高等部提供)

    2017年04月28日 05時40分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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