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    受験相談から「運針」まで生徒が作る1日体験…豊島岡

     女子御三家に迫る進学校として注目を集める豊島岡女子学園中学校・高等学校(東京都豊島区)で7月17日、「豊島岡1日体験」と銘打ったオープンキャンパスが開催された。生徒たちは、将来の後輩になるかもしれない小学生を相手に、クラブ体験や受験相談を行ったり、伝統の「運針」を体験させたりするなど、親身な姿勢で同校の素顔をアピールした。

    3000人の募集枠が4時間で埋まる人気

    • 「1日体験」に参加するため並ぶ小学生と保護者ら
      「1日体験」に参加するため並ぶ小学生と保護者ら

     今年の「豊島岡1日体験」は、7月17日の海の日に開催した。従来は8月に開催していたが、塾の講習会などの日程と重ならないよう、昨年から夏休み直前の休日に設定している。受け付け開始前の午前8時半の時点で、校門には既に50組ほどの家族が列を作っていたため、予定を少し早めて開場した。

     入試広報部長の岸本行生教諭によると、3000人のインターネット予約枠がわずか4時間で埋まり、募集枠を500人増やしたという。

     この行事はもともと、文化祭で行っているクラブ体験コーナーを学校案内の一環として独立させたものだ。教員による模擬授業や学校説明会も行うが、多くの来校者の目当てはやはりクラブ体験だという。「我が校を知ってもらうには、生徒を見てもらうのが一番」と岸本教諭は話す。

     まず、生徒が各コーナーを一通り案内してくれる約20分のガイドツアーに同行した。同校には文化系、運動系合わせて49のクラブがあるが、この日参加したのは17のクラブ。文化祭の準備・運営を行うさまざまな部門のうち「学校紹介部門」の生徒有志7、8人が各クラブを案内してくれる。

     副部門長を務める高1の福田彩乃さんは、「学校の魅力を伝えたくて、この部門に参加しました。今日はたくさんの人に楽しんでもらいたいです」と笑顔で話した。

    ハイレベルで楽しい理系クラブ

    • 立ち見が出るほどにぎわった「生物部」コーナー
      立ち見が出るほどにぎわった「生物部」コーナー

     「理系に強い学校」と言われるだけに、理科系クラブのコーナーは大盛況だった。生物部のコーナーでは、顕微鏡でのオオカナダモ観察やウミホタルの発光実験など、部員たちが教壇や実験中の各テーブルで丁寧に説明、指導していた。鶏の頭の解剖もあったが、生物部には医学部志望生もおり、普段から魚やイカ、貝などの解剖を行っているそうだ。

     化学部のコーナーでは、人工イクラ作りや、エタノールによる雲の発生、透明な水溶液を混合すると一定時間の経過後に発色する時計反応、銅色から銀色、銀色から金色へと変わる黄銅メッキなど、多彩な実験を紹介していた。顧問の水村弘良教諭によると、同部は日本学生科学賞や国際化学オリンピックでの入賞をねらって活動に励んでいる。だがこの日は「小学生が楽しめること」を目標に掲げ、丁寧に説明できるよう練習してきたという。

     これらのほか、中学数学部の部員が今年度の入試問題の解き方を、授業のように板書して解説する模擬授業コーナーもあり、受験志願の小学生たちの注目を集めていた。

    子供たちの手を取って共に楽しむ

    • 阿波踊りクラブ「桃李連」の練習
      阿波踊りクラブ「桃李連」の練習

     音楽・パフォーマンス系のクラブでは、女子校で唯一という阿波踊りクラブ「桃李連」が大人気だった。18年ほど前に就任した徳島県出身の教員が指導を始め、現在は地元の「東京大塚阿波おどり」に毎年参加するまでになった。部員は、踊りはもちろん、(かね)や太鼓といった鳴り物を子供たちに体験させ、楽しい司会で会場を沸かせていた。

     弦楽合奏部とマンドリン部は、10分間のミニコンサートと楽器体験コーナーを用意した。部員は児童たちの手を取って、バイオリンなど楽器の扱いを指導。最初はおっかなびっくりで音を出すが、すぐに部員と一緒に「メリーさんの羊」「さんぽ」などの曲を演奏できるようになり、部員は拍手でねぎらっていた。

     同校には、「高3まで全員クラブ活動参加」という決まりがある。勉学との両立は気になるが、テニス部顧問で生徒部長を務める小美野貴博教諭は「クラブに熱心な生徒は、概して勉強も好成績です」と言い切る。「勉強だけでは視野が狭くなります。クラブはコミュニケーションや気配り、行動力など、さまざまな人間教育の場でもある。勉強とは違った満足感や自信が獲得できます」

    生徒による受験相談も

    • 人気の「生徒会役員による受験相談」
      人気の「生徒会役員による受験相談」

     「1日体験」のプログラムで、クラブ体験と並んで人気を集めるのが、「生徒会役員による受験相談」だ。会場の黒板には相談員の名前と受験当時の得意/苦手科目、通った塾や現在の所属クラブなどが掲示してあり、参加者は希望の相談員を選ぶことができる。

     相談は、「この時期はどんな勉強をすべきか」などの一般的な質問から、「成績が下がった時の気の持ち方」など、中学受験の経験者にしか答えられないデリケートな質問までさまざま。それぞれの質問に親身に回答する生徒たちの姿に、保護者も感じ入った様子だった。

    運針で無心の時を過ごす

    • 「運針」を体験する小学生
      「運針」を体験する小学生

     最後に、豊島岡を語るときに欠かせない「運針」を紹介しよう。同校では毎朝、授業前の5分間、全校一斉に運針を行う。生徒たちは静寂を守りながら、長さ1メートルほどの白布に、玉結びをしていない赤い糸でひたすら並縫いする。端まで縫い終われば糸を抜き、再び縫い始める。

     これは同校の前身である裁縫学校の文化を受け継いだもので、半世紀以上続く習わしだ。自身が豊島岡の卒業生でもある家庭科の長谷川綾教諭は「運針をやる間は無心になるので、緊張をほぐしたり、乱れた気持ちをリセットしたりするのにもいい。大事な試験の前や、何かあってむしゃくしゃした時にやっている生徒もいるようです」と話す。「最初はほとんどできなくても、1年たつと5分間で1メートル、卒業時には3メートルと上達します。小さな積み重ねが大きな成果につながると信じられるようになります。また、5分間でこれだけできる、という感覚も身に付くので、隙間時間の使い方がうまくなります」

     豊島岡独自の文化を体験しようと、「運針体験」コーナーには多くの子供が集まった。指導に当たった手芸部と洋裁部の部員は、各自小学生2人を受け持ち、小さな手が無心に縫い針を進める様子を静かに見守っていた。

     来場した小学生たちは、憧れの学校で1日の体験を満喫したことだろう。後輩として同校の門をくぐれた日には、さらなる歓迎が待っているに違いない。

    (文:上田大朗 写真:中学受験サポート担当)

    2017年10月03日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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