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    デザイン思考が育む創造性豊かな教育…同志社

     創立者新島襄の教育精神に基づく伝統校・同志社中学校(京都市左京区)は、近畿では唯一、「教科センター方式」と呼ばれる教室運営方式を採用している。これを実現しているのはキャンパス全体の校舎配置とオープン構造の教室群だ。生徒の知的好奇心・探究心を刺激するキャンパスデザインとチャレンジングな教育プログラムを見ていこう。

    「動く授業」:環境が変われば、生徒の行動が変わる

    • 社会科センターでは、メディアスペースに専門教室(左奥)、教科ステーション(正面奥)が隣接する
      社会科センターでは、メディアスペースに専門教室(左奥)、教科ステーション(正面奥)が隣接する

     同校の中学棟は2010年、京都市上京区の今出川校地から同市左京区の宝ヶ池に移転した際、「教科センター方式」という新しいスタイルを企図して建設された。全国的にも導入例が少なく、近畿の中学校では唯一という。廊下に教室が並ぶ従来のいわゆるハーモニカ形式でなく、教科ごとに関連施設・教室をゾーン化しているのが特徴だ。

     社会科のセンターを見てみよう。廊下から仕切りなしに連続する「メディアスペース」というオープン空間がまず目に入る。生徒たちの発表作品が多数展示されており、異なる学年が様々なテーマに取り組んでいることが一目で分かる。広いテーブルと椅子が設置され、グループワークや発表作品の制作などにうってつけだ。

    • 同志社中高副校長の竹山幸男先生
      同志社中高副校長の竹山幸男先生

     その奥には電子黒板、プロジェクター、1人1台ずつのiPadに対応可能なWi-Fi環境が整えられた「専門教室」がある。「メディアスペース」に直結しているので、通常の授業スタイルに加え、発表やディスカッション、制作などを柔軟に組み合わせることが可能だ。さらに教科別の職員室である「教科ステーション」にも隣接し、全体で一つの教科ゾーンを形成している。他に、生徒たちの個人ロッカーが備えられている「ホームベース」もあり、そこは、コミュニケーションスペースともなっている。

     同校はノーチャイムだ。生徒たちは毎日、自分で時計を見て時間割を確認し、各教科の教室へと移動する。当然、移動が増えるので、当初は混乱を心配する声も聞かれたが、「環境が変われば、行動が変わる。この校舎は、むしろ生徒の自立を促します」と竹山幸男副校長は語る。

     実際、「あと3分あるから英単語の課題をする」「あと1分あるからリポートを出してくる」という生徒の声を耳にし、積極的に時間管理して学習に臨む姿勢を実感した。近年、多くの学校で、能動的な学習を重んじるアクティブラーニングへの取り組みが盛んだが、同校の教室構造はまさに生徒の自主性、協働性を促進し、アクティブラーニングを最適にサポートしているといえそうだ。

    教育環境にサインデザインを導入

    • 数学科の専門教室。木製の円盤には数学の「ス」をデザインしたマーク
      数学科の専門教室。木製の円盤には数学の「ス」をデザインしたマーク

     校内を見学中、いくつもの不思議なマークが目についた。フラッグや木製のボード、ガラス窓に貼ったシールなど様々な素材にシンボライズされた形がデザインされている。説明によると、国語の「コ」、社会の「シ」、数学の「ス」など頭文字を図案化したものだという。このような仕掛けは一般に「サインデザイン」と呼ばれ、視覚的なマークで場所の案内や説明、歩行の動線などを示すために使われる。

     海外の学校では広く導入されているが、国内の学校ではまだまだ。同校は、生徒たちに探究心や、感性を育むアカデミックな環境で学んでほしいという思いから、学校施設の設計に造詣の深い設計者、監修者を選定し、キャンパスデザイン全体を創り上げた。

     竹山副校長は「教育がどんな場所で行われるかには、十分に注意を払うべきであると考えます。デザインは、図案や設計を意味するだけではありません。デザイン思考と表現されている通り、現在は『デザイン』や『センス』といった言葉の意味も広がりを持ち、ともに思考と密接に関わっています。人工知能(AI)の進化に伴って、記憶型の学力だけではなく、創造性を育む高度な学力が求められる時代に入りつつあります。今、教育の場はイノベーションを生み出す場でなくてはならないのです」と、こだわりの理由を語った。

    国境を超えた協働を準備する「STEAM」

     職員室にあたる「教科ステーション」はオープンな雰囲気が特徴だ。生徒たちが相談しに来やすいのはもちろん、教員同士も率直に意見交換ができ、同校ならではの「新しい学びと研究」が生まれる場となっている。

     その一つが、「同中学びプロジェクト」だ。このプロジェクトは、各教科の教員がそれぞれ工夫を凝らした課外授業。放課後や土曜、長期休暇中を利用して実施しており、希望する生徒は年間100を超える企画から選んで自由に参加できる。

     内容は、フィールドワークや施設見学、専門家に指導を受けるワークショップなど多岐にわたる。これまでも京大iPS細胞研究所、東大スーパーカミオカンデ訪問、3DCAD&3Dプリンター実践講座、プログラミング講座、「三角関数を学ぼう!」など専門家の指導の下、様々なプロジェクトに挑戦した。 

    • STEAM Campでは、海外の生徒らと共にロボットを製作する
      STEAM Campでは、海外の生徒らと共にロボットを製作する

     また、今、注目されているのは昨年から沼田和也教頭が中心になって展開している国際交流プログラム「STEAM Camp at Doshisha」。STEAMとは、Science、Technology、Engineering、Arts and Mathematicsの略で、科学、技術、工学、芸術、数学の教育分野を指す。

     このプログラムでは、国・地域の異なる中学生がチームを作ってロボット製作などの課題を一緒に乗り越え、結果をチーム同士で競い合う。同志社中学を会場に、今年は香港、韓国、インド、中国などから中学生が参加する予定だ。

     「他の多くのロボットコンテストと異なるのは、既存のチームで競うのでなく、初めて会った海外の中学生たちとチームを作り、英語を使って目の前の課題に一緒に取り組む点です。現在の中学生が大人になったとき、国・地域を超えて協働することが求められるでしょう。中学での成功体験が貴重な財産になるはずです」と、沼田教頭は狙いを語る。

     ロボット製作やプログラミングは、スーパーサイエンスハイスクール指定高校などで、類似した取り組みがあるが、中学では珍しい。同校は、科学・技術分野や芸術分野について学ぶことは、進路を問わずに重要と考えており、STEAMプログラムを積極的に展開している。

     このほかにも英語学習・海外プログラムの充実が目を引く。例年、米国のハーバード大学とマサチューセッツ工科大学で特別講義を受けるボストン研修、カナダやニュージーランドでの語学研修がある。国内プログラムでも、秋田の国際教養大での国内留学や、ハーバード大生を招いて交流する京都市内でのイングリッシュキャンプなどがある。

    自由な空気が創造性を育む

     このように新しい学びが次々と展開されていることについて、竹山副校長は「創造的なものは自由な発想や思考の中からしか生まれません。それが同志社創立時以来の自由・自治・自立の伝統でもあります」と語る。生徒にも教師にも、自由に積極的に活動できる場があってはじめて、新しい学びのスタイルが花開く。アクティブラーニングに適した校舎建築・キャンパスデザインは、それを支える土台だ。

     同志社には、創設者の新島襄から受け継がれる「(てき)(とう)()()という言葉がある。才気がすぐれ、独立心が旺盛で、従来の枠組みを超えた発想を生み出し、行動していくという意味だ。それは創立以来の人間像の理想でありながら、まさにグローバル・AI(人工知能)時代が求める人間像そのものではないだろうか。同校の教育は日々、新島の精神を新しい時代に生かし、創造性豊かな生徒たちを育んでいるようだ。

    (文と写真:水崎真智子 一部写真提供:同志社中学校・高等学校)

     ※ ●は稠の「禾へん」を「人べん」に置き換えた字

    2017年07月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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