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    グリーンスクールで主体性を育む…芝浦工大柏

     芝浦工業大学柏中学高等学校(千葉県柏市)は毎年、中学1年生を対象に2泊3日の「グリーンスクール」という体験型の環境学習を行っている。福島県の会津高原で、仲間たちと共に自然観察、育林、木材加工見学などを行う。自然の中で発見し、考え、発表するプロセスで生徒たちは主体的な学びを身に付けていく。この特別授業の中身を紹介する。

    自然に学び、仲間意識を育てる

    • 1年生を受け持つ福田先生(左)と松本先生(右)
      1年生を受け持つ福田先生(左)と松本先生(右)

     同校の「グリーンスクール」は、「自然の中で感性を高め、仲間意識を育てる」ことを目的に、1999年の中学開校以来、毎年行われている。初めは畑に作物を植え、秋の収穫を祝う農業体験を中心に活動していたが、2008年に森での活動を中心とする今のスタイルに変わった。新しい活動の場として、福島県南会津町の国有林約1ヘクタールを55年間借り受けたのだ。これは国の分収造林制度を利用したもので、同年入学の中学1年生が約2700本の杉の木を植えて「芝浦創造の森」と名付けた。

     生徒たちは現地で宿泊をしながら、自然を観察したり、今や3メートルの高さに育った杉の森で林業の知識を学んだりする。めいめい自然との関わり方を考えるとともに、飯ごう炊飯などの集団行動を通して協調性や社会性を磨いていくのだ。

     今年も5月15日から、1年生199人が前後半2グループに分かれて、2泊3日のグリーンスクールに参加した。1年生の担任を務める福田允先生が日程と目的を説明する。「1日目は自然観察。2日目は木を育てる。3日目は出来た木がどうなるのかを見させていただく。つまり自然を見て知って、木を作って、それがどのように加工されていくのかまでの過程を3日間で見せるというのが目的の一つです」

    自ら発見し、考えることの意味

    • 八木ノ沢での自然観察。発見することが何より大切だ
      八木ノ沢での自然観察。発見することが何より大切だ

     5月15日、生徒たちはバスで現地に向かった。バスを降りると会津高原の豊かな自然が広がっていた。参加したS君は、「すごく空気が新鮮でした。いつもなら足に泥が付くぐらいで、うわって思うんですけれど、それも不思議と気持ち良くて、この感覚は何だろうと思いました」と話した。

     1日目はサワグルミ、ミズナラ、トチノキなどの落葉広葉樹がみられる八木ノ沢という国有林で自然観察を行った。調査区域の簡単なスケッチや植物観察で気付いたことなど、事前に与えられた六つの課題を解決するため、グループごとに調査を行う。生徒たちは安全のために長靴を履き、長袖・長ズボンで山道を歩き、メモを取ったり、カメラで草花や木々を撮影したりして情報を集めていく。

     森の中は鳥の声に満ち、吹き抜ける風の音も新鮮だ。そんな森の音だけを数時間も録音していた生徒がいたという。自然観察の仕方を指導している生物の松本嘉幸先生は「そういう生徒は初めてでしたね。すごいなあと思いました」と、率直に感嘆していた。「自然観察で大切なのは発見することです。これがここにあります、という説明を聞くだけでは、それで終わってしまいます。でも、自分で発見をすると、他の場所に行っても、こういう環境だから同じものがここにもあるかも、と考えが働く。発見から学ぶことはとても大切なんです」。

    • 1日目の晩ご飯は飯ごう炊飯でカレーライス作り
      1日目の晩ご飯は飯ごう炊飯でカレーライス作り

     森での調査を終え、生徒たちはすでにへとへとだが、晩ご飯は班ごとに飯ごう炊飯だ。薪に火をつけるところからカレーライス作りを始める。「ニンジンに火が通っていなかった」「フライパンの焦げがなかなか落ちなくて」など、なかなか苦戦したようだったが、仲間とともに作ったカレーは忘れられない味になるだろう。

     2日目は育林体験。午前中は「枝打ち」という作業を体験した。会津森林管理署南会津支署の指導を受けながら、「芝浦創造の森」で杉の余分な枝を切り落とす。初めてノコギリを握ったYさんは、「下側から枝の太さの3分の1ぐらいまで刃を入れ、それから上側を切ると枝を落としやすくなる。そんな方法があるんだと驚きました」と話す。

     福田先生も「最初は森の奥の方は見えないんですけど、枝打ちをしていくと段々と見えてくるのが楽しかったですね。今年は枝打ちでしたが、木の成長に合わせて作業も変わってきます。近い内に間伐が始まると思います。その時はすごい光景が見られるでしょうね」と期待を込めた。

     午後は尾瀬ブナ平でブナの森を散策した。生徒たちは、この時期特有の明るくみずみずしい緑の若葉を楽しみ、さわやかな森の空気を味わった。

    木材加工から学ぶ物の大切さ

    • 廊下などに設置されたベンチの数々はグリーンスクールの歴史でもある
      廊下などに設置されたベンチの数々はグリーンスクールの歴史でもある

     最終日の3日目は、地元の木材加工販売業者の協力で、大きなカラマツの木をチェーンソーで切り倒し、板材に加工するまでの工程を見学した。その際、生徒たちは板材に残った皮をむく作業を手伝った。この木材は2年間かけて乾燥、加工した後、ベンチにしてもらう。

     同校の廊下には歴代の生徒たちが加工に参加したベンチが並んでいる。「今年の生徒たちが加工を手伝ったベンチは、今の小学5年生が、当校に入学してグリーンスクールに行く時、もらって帰ることになります」と、福田先生は早くもその時を楽しみにしていた。

     ちなみに、この作業で出た廃材は同校の文化祭の飾り付けなどに再利用される。学校が記念品として小学生に配っている鉛筆も廃材を利用して作っている。

     3日間の日程を経験してみて、Yさんは「森林と触れ合い、枝打ちをして、自然がとても身近に感じました。普段使っている紙も木から出来ているので、無駄にしないようにしたいと思いました」と話した。S君は「都会にいる僕たちは木材を本当に大切にしているんだろうかと考えました。物を大切に扱うようにしたいです」と話した。

    三つのキーワードで生徒を支える

    • グリーンスクールでの学びをもとに文化祭でプレゼンテーションを行う
      グリーンスクールでの学びをもとに文化祭でプレゼンテーションを行う

     同校のグリーンスクールは、これで終わりではない。生徒たちは、この3日間の体験で学んだ事をもとにテーマを設定し、9月の文化祭でプレゼンテーションする。さらに1人1枚ずつ「環境新聞」を作って掲示することになっている。その際、タブレット型PCを駆使するため、作業を通して資料の作成からパワーポイントの使い方までマスターしてしまうという。

     この流れは、同校の学校行事に共通している。グリーンスクールだけでなく、上野の国立科学博物館での研修や、2年次の奈良・京都での歴史文化研修などでも、テーマを見つけ、体験し、プレゼンテーションするところまでが一つのセットだ。

     こうした同校の主体的に学ぶアプローチは、様々な学習の場面に展開されている。生徒自身が手帳でスケジュールやタスクを管理する「手帳指導」や、2週間ごとにPDCAサイクルを管理する「目標達成シート」、Web授業動画の「スタディサプリ」を活用した能動的な補習など、これらはすべて「アクティブラーニング」の考えに基づいている。

     同校は、これまでも海外へのホームステイやWebコンテストへの参加などを通じてグローバル社会に対応する教育を行う一方、科学技術者育成を目指す「芝浦サイエンスクラス」を設置するなどサイエンス教育にも注力してきた。

     そして、「アクティブラーニング」がもたらす主体性な学びの姿勢が、「グローバル」と「サイエンス」、二つの教育理想を支える柱となる。この三つのキーワードを軸にして同校が推進する教育は、グローバル化の進む現代社会を生き抜く子供たちの大きな力となるに違いない。

    (文:渡辺貞行 写真提供:芝浦工業大学柏中学高等学校)

    2017年07月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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