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    創立41年目「生徒が育ってこそ学校は光を放つ」…江戸取

     広大な利根川に接するように立つ江戸川学園取手中・高等学校(茨城県取手市)は、今年度で創立41年目を迎える。来年度には学園の小学校から新1年生を迎え、12年一貫教育という新しいステージに入る。ユニークな道徳教育を軸にさまざまな教育機会を広げ、「世界型人材」の育成を目指す同校の竹澤賢司校長に展望を聞いた。

    目の前の目標は12年一貫教育の完成

    • 道徳教育を通じて「世界型人材」育成を目指す竹澤校長
      道徳教育を通じて「世界型人材」育成を目指す竹澤校長

     江戸川学園取手中・高等学校は、1978年度に創立され、今年41年目を迎える。「医科コース」「東大コース」「普通科コース」を備えている高校に合わせ、中学でも2016年度から「医科ジュニア」「東大ジュニア」「難関ジュニア」の3コース制を導入した。すでに次の10年を見据えた教育改革が始まっている。

     竹澤賢司校長がその展望と目的を話す。「新年度はジュニアコースの中学生が3年生になって、中高が一本のラインにつながります。目的は、生徒たちの主体性を育て、もっと学びの質を高めたいということです。コース制にすることで、子供たちは中学受験の段階から自分が将来どういう方向に夢を持っているのか考えるようになります」

     中学のコース分けは入学時に、「医科ジュニア」(1クラス30人)、「東大ジュニア」(1クラス30人)、「難関ジュニア」(6クラス180人)となっているが、学年が上がるとき、希望と成績によって他のコースに移ることも可能だ。実際、現在の2年生はコース変えを希望する生徒の多くが成績向上したため、「医科ジュニア」「東大ジュニア」とも2クラスの編成とした。

     「途中からコースを変えてもいいんです。中学生はまだ志望が固まっていないから、コース変えは当然多い。医科コースに入っても、病院を見学したり、医師の講話を聞いたりする中で、自分には合わないと思えば、次年度から他コースに移ればいい。しかし、なんらかの方向性があることによって生徒たちは自分をよく見つめ直すことができる。そこにコース制の意義がある。新規に移ってきた子供たちは勢いがあり、いい刺激になっているようです」

     一体化を進めているのは中高だけではない。来年度は、2014年度に設立された江戸川学園取手小学校(取手市)から初めて新入生約70人を迎える予定だ。小中高の太いつながりが見えてくる。「小学生も、中高にコースがあることを意識して小学受験をする子が増えています。12年一貫の教育体制を完成させるのが中期的、というより、すぐ目の前の目標になっています」

     12年一貫教育によって実現したい理想について竹澤校長は、「校歌にもあるように『世界を築く礎』となる人材の育成です」と説明する。

    道徳教育を通じて「世界型人材」を育成する

    • 「人作り」の柱として力を入れている道徳教育
      「人作り」の柱として力を入れている道徳教育

     世界に通用する人材を竹澤校長は「世界型人材」と呼ぶ。その育成を目指すには、どんな教育を行うべきか。同校が出した一つの答えは意外なことに道徳教育だ。

     同校は、「心豊かなリーダーの育成」を教育理念に掲げている。世界に通用する人材とはまさにこのリーダーシップを発揮できる人間にほかならない。道徳の授業は、その「人作り」の柱になっている。

     中学では14回、高校では8回、道徳の授業が行われる。いずれも副校長、学年部長ら8人のベテラン教師が担当する。授業時間は70分で、前半35分は教師が講話を行う。この講話を受けて、生徒たちはグループに分かれてディスカッションを行う。最後にグループ代表の生徒が意見を発表し、教師が全体をとりまとめる。さらに、生徒らは各自が自宅で「道徳のノート」に自分の考えを書いて教師に提出することになっている。教師は個々の意見に対してほぼ同じ分量のコメントを書き込んで返す。

     2017年度のテーマは、「友人の多様性を受容する」「いじめのない社会」「働くことの意義」「命の尊さを知る」など、いずれも今日的であって簡単には答えが出せないものばかりだ。

     「道徳の授業は、他の教科を教えるよりも難しいと思います。公式にあてはめれば答えが出るものじゃありませんから。大事なことは、学校においては教師が範を示せているかどうか、家庭においては両親が、生きる姿を子供たちに見せられているかどうかであって、それに尽きると私は思っているんです。教師は道徳的に完成した人格者として生徒に臨むのではなく、生徒とともに良い人生を求めて努力する。伴走者みたいなものです」

     授業の進め方についても同校の道徳の授業はユニークだ。生徒同士、生徒と教師の双方向的な意見交換によってアクティブラーニングを実現し、新しい学力観への対応を可能にしている。その意味で竹澤校長が特に重視するのは、生徒たちに自分の考えを書かせることだという。

     「70分の授業で終わりではありません。それをじっくり考えて自分の考え方をノートに整理する。書くことによって自分の考え方が整理され、より鮮明になる。新学習指導要領は、思考力・判断力・表現力の育成を課題として掲げていますが、そうした力を本当に深めていくには書くことが大事なんです。自分の考え方を文章にしたためてみて、推敲(すいこう)してみる、そこから新しい考えが芽生えます。それに対して教師は、常にプラス思考の返事を書くよう心がけています。教師と生徒の双方向の授業を本校は昔からこの道徳の授業の中でやっています」

     道徳教育は、学園の小学校でも重視されている。授業では、世界的にベストセラーとなった自己啓発書「7つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著)の内容を、小学生にも分かりやすく編集したオリジナル教材「リーダー・イン・ミー」を使用している。「主体的である」「最優先事項を優先する」など私的成功のための習慣や、「Win-Winを考える」「シナジーを創り出す」など公的成功のための習慣など、「世界型人材の育成」を念頭においてリーダーシップ養成にウェートを置いた内容となっている。

     また、「人作り」という意味で、道徳の授業同様に同校が重視しているのは、あいさつや5分前集合などの規律だ。教育方針にも「規律ある進学校」という言葉を掲げている。

     「本校では、『規律が人を作る』と考えています。規律は人への思いやりです。社会は規律で回っており、学校は社会の縮図です。ですから、学校生活の中で規律を重んじることで、人を思いやる心や、社会人としての基礎を作っていくんです。信頼される社会人になり、まずは一隅を照らせる人物になる。そうでなければ、人々の真ん中に立ち、全体に対して光をあてられるような本当のリーダーにはなれません」

    可能性の芽を開かせる学習環境の整備

    • アメリカ・アカデミック・ツアーに参加した生徒たち
      アメリカ・アカデミック・ツアーに参加した生徒たち

     「心豊かなリーダーの育成」のために同校が実施しているのは、もちろん道徳教育だけではない。

     同校は茨城県の私学版「未来の科学者育成プロジェクト推進事業」の指定を受け、医科教育を中心とする研究活動を進めてきた。この事業の目玉は、「メディカルサイエンス」を学校設定科目(1単位)として立ち上げたことだ。iPS細胞などで脚光を浴びている再生医療の問題点の検討や、ウニの発生に関する実験、医療統計の研究、科学英語の学習などを、医科コースの高1~3年の3学年が一緒に学ぶ。講義、グループ討議、発表を年間9セット行い、ルーブリック(評価表)を使って、生徒同士が研究内容を評価できるようにした。こうした環境によって、上級生が下級生を指導したり、互いに学び合ったりすることが可能になり、学びの質を深めることができたという。

     このほか、2013年度からスタートし、今年5回目となる「アメリカ・アカデミック・ツアー」では、有志の生徒たちがアメリカを訪れ、ワシントンDC市内やニューヨーク市の国連本部を見学したり、MITやハーバード大学の研究員の講話を聴いたりして国際感覚を磨いている。

    • オンラインスピーキングで英会話を学ぶ生徒
      オンラインスピーキングで英会話を学ぶ生徒

     また、インターネット電話サービス「Skype」を使ってフィリピンの講師と英会話の練習をさせるなどの試みも始まった。

     学園の小学校でも、音楽、スポーツ、造形芸術、ダンス、英語など20以上のアフタースクールを開催し、さまざまな才能を伸ばす機会を提供している。

     こうしたさまざまな取り組みについて竹澤校長は、「可能性の芽は、どの生徒たちにもあると思うんです。でも、それぞれが持つ潜在的なものを表に顕在化させるには環境が大事です。そういう学びの環境を本校は今後も整えていきたい」と話す。

     「6年間さまざまな能力を身に付けてきた学園の小学生が来年度から中学に入ってきます。この子たちが核になって、中学受験、高校受験組をリードするようになれば、学校の景色も変わってくると思います。12年一貫で学ぶ生徒たちが、学校をよりパワフルに変えていくことは間違いありません。本校はこれからも生徒たちの伸びようとする芽を個性豊かに育てていきます」

     (文・写真:中学受験サポート)

     江戸川学園取手中・高等学校についてさらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年05月31日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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