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    校長「自分らしく、しかも他者に寄り添える生き方を」…立教女学院

     緑濃いキャンパスに立ち、140年の歴史を誇る立教女学院中学校・高等学校(東京都杉並区)は、知性とキリスト教に基づく人格の教育を二つの柱とし、多くの人材を輩出してきた。校風はあくまで自由だが、生徒たちは互いを認め合いながら、自主性、自律性ある学校生活を送っている。田部井善郎校長に彼女たちの横顔を紹介してもらった。

    違いを認め合っていく生徒たち

    • 就任3年目を迎えた田部井校長
      就任3年目を迎えた田部井校長

     取材日前日の3月19日は、高校の卒業式だった。アーチ窓やステンドグラスを施したロマネスク様式を基調とする校舎内には、式の余韻のように吹奏楽の音色や生徒たちの快活な声が響いていた。

     「明るい元気な子が多いです。非常に知的好奇心も高いと思う」。就任3年目を迎える田部井善郎校長は生徒たちの印象をそう話した。「この学校には、立教女学院小学校から約70人、帰国生が約20人、さらに約110人が中学受験で入ってくる。三つの背景を持った子供たちが入って来て、あっという間に仲良くなる。違った者同士がお互いに認め合っていくというミッションスクールの伝統的な雰囲気が本校にあるからでしょう。お互い足りないものを自然に補い合うような学校生活です」

     同校は、1877年に米国聖公会の宣教師らが東京・文京区湯島に設立した立教女学校から140年の伝統を持つ。関東大震災(1923年)で校舎を焼失したが、翌年から現在地に仮校舎を建てて授業を続け、1930年に今の校舎を建設した。高校の校舎などは当時のままだ。校地の半分は緑に覆われ、夏場は周辺より平均2度ほど涼しいという。

    • 緑に囲まれた校舎
      緑に囲まれた校舎

     「この学校には二つの大きな柱があります。一つはレベルの高い女子教育。知識の面ですね。もう一つは、キリスト教に基づく人格教育です。それは他者のために生きることができることであり、世界の平和についての教育です。その精神は建学の時から変わりません」と田部井校長は話す。

     人格教育の基本は、毎朝の礼拝であり、教会のカレンダーに沿ったイースターやクリスマスなどの行事を通してキリスト教への理解を深めることだ。6年間必修の聖書の授業を通しても命や奉仕について学んでいく。

     このほか、各界の識者を招いての講演や映画鑑賞などを通じて人としての生き方を学ぶ「土曜集会」が年に10回くらい開催される。「中等教育の勉強は机の上だけではなく、色々な経験を聞いたり、知らない世界を知ったりすることによって自分の将来を考えていくもの。私たちが最終的に子供たちに望んでいるのは、いかに一人一人がその生徒らしくこれから生きていく、その基盤となるものをこの時期に作ってあげたいということです」

    自主、自律の心を養う生徒会活動

    • 生徒会が企画運営する運動会
      生徒会が企画運営する運動会

     互いの違いを認めて、足りないものを補い合う、そんな生徒たちの姿をよく表しているのが同校の生徒会だ。生徒会は自治の精神を養うことを目的に1927年に発足し、90年以上の歴史を誇っている。

     生徒会は9月の体育祭や10月の「マーガレット祭(文化祭)」、留学生の歓送迎会などを自主的に企画、運営していく。とりわけ力が入るのは、2日間で受験生ら1万人近くが来場する「マーガレット祭」だ。中学、高校それぞれに「マーガレット祭運営委員会」がある。毎年4月、新役員に選ばれた瞬間から準備が始まる。教室や体育館のステージで、どの団体が何を発表するかを割り振り、受け付け係やスリッパ係、誘導係、放送係などを決め、シフトを組む。売店で提供するハンバーガーやクレープなどの食品業者やパンフレットの印刷業者を選定し、交渉するのも全部、生徒たちが行う。

     生徒たちは、力仕事も含めて全部自分たちでこなしていく。ときには友達同士の摩擦も乗り越えながら、協同して一つのことを成し遂げる。そうした経験を通して自主性、自律性が育つという。「ですから、この子たちは『右向け右』を嫌うんですよ。教師たちがこうしなさいと言ってもだめですね」と田部井校長は愉快そうに笑った。

     同校は創立以来、生徒の服装を原則自由としている。決まっているのは校章を付けること、スカートを着用すること、そして決められた通学(かばん)を用いるということだけで、学校は質素清潔で学生にふさわしい服装という程度しか求めていない。

    • 自主的に始めた生徒会の立ち番
      自主的に始めた生徒会の立ち番

     パーカの上からブレザーを羽織るような格好がはやることもあるが、生徒たちが自律心を忘れることはない。山岸悦子教頭によると、時々の流行でスカートの長さが短くなってくることがあるという。「教員も注意しますが、生徒会も真剣に議論しています」。このほかにも髪は染めない、夏場のノースリーブは不可、などの生徒会の申し合わせがある。新しいルールは生徒総会にかけられ、いったん承認されればみんなで守っていく。

     毎朝の立ち番も生徒の自律性をよく象徴している。同校の正門は、最寄りの井の頭線「三鷹台駅」から100メートルほどしか離れていない。自転車置き場も近く、朝の通学路はかなり混雑する。このため、数年前に生徒会側から学校に立ち番を提案してきて、朝7時半から登校時の交通整理を続けている。さすがに試験前の1週間は立ち番をしている余裕がないが、その間は教員が代打を務めるという。生徒と教師の連携プレーも阿吽(あうん)の呼吸だ。

    「困っている人に寄り添う」ボランティアの心

    • 南三陸志津川小学校で、ボランティア活動をする生徒たち
      南三陸志津川小学校で、ボランティア活動をする生徒たち

     生徒たちの自主性や行動力を語るうえで欠かせないもう一つの要素が、ボランティア活動だ。ミッションスクールらしく長い伝統があり、週末や夏休みなどを利用して有志が教会での日曜給食活動、特別養護老人ホームへの慰問、保育園での乳幼児の世話を行うなどしている。

     田部井校長がボランティア活動を通して生徒に学んでほしいのは「自分が与えられているものを他者に還元して初めて意味があるということ」だという。「自分からまず行動してみること。できる範囲でいいから一生懸命やること。その場に行ってみたらできることがかならずあると思います」

     過去、このボランティア精神が見事に発揮されたことがある。1995年の阪神淡路大震災のときだ。大学への推薦入学が決まったばかりの立教女学院の高3生有志が、すぐに現地に向かった。その後も何陣にも分かれて現地入りし、教会で自炊をしながら、避難所での炊き出しやトイレ掃除を行った。参加した生徒らは最終的に40人ほどに上った。

     当時、ボランティアを引率した山岸教頭によると、生徒は夕方になると自発的に集まり、「今日の振り返り」をしていた。「避難所の布団を干してあげよう」という声が上がったときは、プライバシーを守りにくい避難所では、私物を布団の下に隠しておくことが多かったので、恥ずかしい思いをさせないようにするにはどうするか、どう声を掛けるかなど、夜遅くまで話し合っていたという。

     また、東日本大震災の後も、被災地を訪問し、学習・交流を行っている。毎年3月には宮城県南三陸町の町立志津川小学校の新1年生に、体操服を寄贈する活動を行っている。訪問は今年で7回目となった。

     田部井校長は、「今、困っている人がいたらそこへ行って寄り添う。行けばきっと何かできることがある。それは話を聞いてあげることかもしれないし、何かの力仕事かもしれない。私はこれがボランティアの基本だと思います」と話した。

    生徒の学びの「場」を広げる

    • 中学校クリスマス礼拝の聖歌隊
      中学校クリスマス礼拝の聖歌隊

     「学校がやるべきことは、ボランティアに限らず『場』をたくさん作ること」と田部井校長は話す。同校独自の「ARE(Ask Research Express)学習」は、そうした考えに基づく学習方法だ。既に15年ほどの歴史があり、文科省が提唱するアクティブラーニングの考えを先取りしている。

     「ARE学習」は総合的な学習の一つで、自らテーマを求め(Ask)、調べ(Research)、言語化して発表する(Express)学習だ。中1では新聞を題材とした感想文のまとめ、中2で長崎・平戸への修学旅行に向けての調べ学習、中3で平和や人権についての考察を行う。この基礎のうえに高1、2で論文作成のオリエンテーションを受講し、高3では卒業論文として本格的なテーマ設定、資料のリサーチ、ドラフト論文の作成、本論文の作成などを行い、12月にプレゼンテーションを行う。

     この卒論作成は、立教大学への推薦を受ける場合は必修だが、希望者による執筆もある。昨年度のある卒業生は、「日本で死刑を極刑とし、絶対的終身刑を導入しない理由」というテーマの論文を作成し、現在は慶応大学法学部で学んでいる。

     大人が考えもしないような面白いテーマ設定も目立つ。13年度に、立教大経営学部に進学した卒業生は「日本のトイレの先進性とその背景」という論文が評価され、その後メーカーや研究者らで作る任意団体「日本トイレ協会」の会員になった。

     「もちろんテーマは大事ですが、論文ですから客観性がなくてはならない。論文形式を意識し、注も付ける。分析したり、表現したり、構成したりして、自分が疑問を持ったものを論証していく。そういうことを高校時代に学ぶことは将来、高等教育を受けるための基本的な力になります」と田部井校長は話す。

     同校が掲げる五つの教育目標の中に「世の中に流されない(りん)とした人間になる」という言葉がある。田部井校長が語る生徒たちの姿を思い浮かべながら、この言葉が重なり合うのを感じた。

     (写真・文:中学受験サポート)

     立教女学院中学校・高等学校についてさらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年05月30日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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