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    TOEFLテストで入試にアドバンテージ…2020年大学改革

     2020年の大学入試改革で、英語の試験に民間試験を活用することが検討されている。既に様々な大学で、独自に英語の民間試験を利用した入試が始まっており、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能をバランスよく評価できる「TOEFLテスト」への注目度は高い。TOEFLテスト日本事務局である国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部の根本斉事業統括本部長に見通しを聞いた。

    2020年大学入試改革で民間試験を活用

    • CIEE日本代表部の事業統括本部長を務める根本斉氏
      CIEE日本代表部の事業統括本部長を務める根本斉氏

     大学入試センター試験は2019年で廃止され、翌年から新たに「大学入学共通テスト」が創設される。特に注目されているのは英語試験だ。時代の要請に合った英語力の評価をするために、民間試験を活用するとされている。

     その代表的な民間試験の一つがTOEFLテスト。TOEFLテスト日本事務局である国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部の根本斉事業統括本部長によると、日本の英語教育のコンテンツは、文法や英文読解など「読む」「聞く」に重点を置いており、センター試験やこれまでの各大学の入試問題では「話す」「書く」の力を測ることができないという。「大学で日本語を使わず英語で授業を受けたり、社会人になって世界で仕事をしたりするには、『話す』『書く』も学ばなければなりません。そうした4技能の力をバランスよく測れるのがTOEFLテストなのです」

    日本の国際競争力の低下に危機感

    • TOEFLテストは世界で延べ3000万人以上が受験し、国際的に最も評価される英語能力試験の一つだ
      TOEFLテストは世界で延べ3000万人以上が受験し、国際的に最も評価される英語能力試験の一つだ

     文部科学省がTOEFLテストをはじめとする民間試験の利用を推進するのには理由がある。現在、センター試験や各大学の英語試験で行われている「読む」「聞く」の技能を測るだけの入学選抜試験では、大学の国際化が図れないからだ。

     英紙「タイムズ」は6月8日、雑誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」を発行し、誌上で恒例の「クレア・シモンズ世界大学ランキング2017-2018」を発表した。東京大学は28位、京都大学は36位と前年より順位を上げたものの、アジアの中でもシンガポール(南洋理工大学11位、シンガポール国立大学15位)や中国(清華大学25位、香港大学26位)に依然、水をあけられている。

     英語の民間試験活用の論議は、こうした日本の大学の国際競争力の低さに対する危機感を背景にしている。ノーベル賞の受賞数など学界の評価は高いのに日本の大学の評価が低いのは、大学の国際化が進んでいないのが理由とされている。

     「中国の清華大学や北京大学では、英語の授業だけではなく、社会学系や工学系などの学部での専門の授業もかなりの部分を英語で行っています。アカデミックなディスカッション、レポートも英語で行われます。そのため世界中から留学生が集まってくるのです」

     文科省も早くからその対策を練っており、2003年には「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」、2011年には「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」と対策を講じてきたが、英語力が上がったとはいえない状況だ。このため、2013年に「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」という提言が、政府の教育再生実行会議でまとめられ、民間の検定試験を活用する案が検討され始めたのだ。

    大学が独自に英語の民間試験を活用

    • ペーパー試験だった親世代とは違い、現在はパソコンでインターネットを使って試験が行われている
      ペーパー試験だった親世代とは違い、現在はパソコンでインターネットを使って試験が行われている

     こうした流れの中で、様々な大学が独自に民間試験を活用した入試方法を始めている。 「TOEFLテストを大学入試に利用する大学が増えています。以前はAO入試や自己推薦などに利用されることが多かったのですが、最近では一般入試に利用する例が増えています。2015年の調査では入試にTOEFLテストを利用する大学は257校で全体の47%でしたが、この2年間でさらに増えています」

     立教大学では2016年度入試から全10学部の一般入試に「グローバル方式」を導入した。TOEFLテストなど五つの民間試験のスコアを出願資格とし、試験当日は英語の試験を免除している。また、明治大学経営学部でも2017年度入試から一般入試に「英語4技能試験活用方式」を導入した。同様に当日の英語試験を免除し、さらにスコアに応じての加点を行っている。ほかにも慶応義塾大学経済学部のPEARL入試や早稲田大学政治経済学部のグローバル入試など、様々な入試方式にTOEFLテストが採用されている。こうした大学や学部は、入試方法に連動して入学後の学習プログラムでも英語を使用するなど、グローバル化を進めている。

    合格者減少でも民間試験でチャンス拡大

    • TOEFLテストは日本全国約85会場で年間40回以上実施され、国内外の大学入試などに利用されている
      TOEFLテストは日本全国約85会場で年間40回以上実施され、国内外の大学入試などに利用されている

     受験生の立場からすると、このような民間試験の導入に着目することが、大学合格の鍵を握る場合もある。今年度入試から大学側が入試合格者数を大幅に減らしており、狭き門をくぐる上で民間試験のスコアがものを言うからだ。

     文科省は2015年、定員を上回る入学者を受け入れた大学には補助金を交付しないことを通知した。少子化にもかかわらず大学数は増加し、定員割れの大学が全体の4割を上回っていること、しかも、一部の都心の大規模大学に学生が集中していることへの対応だ。

     大学側は、この通知を受けて大きく合格者数を減らした。例えば早稲田大学の合格者はここ数年1万7000人台だったが、今年度は昨年度比9.7%減の1万5840人に。高校別で見ても、開成高校からの早稲田大合格者数は昨年度の283人から195人となった。他の高校でも軒並み合格者数が激減している。ある予備校講師は「昨年は受かったレベルの生徒が、今年は補欠や不合格になるケースが相次ぎました」と話す。

     こうした背景から、TOEFLテストなど民間試験を利用した入試は、合格の可能性を広げるチャンスとなる。ある受験生の保護者は「行きたい大学の学部を、一般入試とTOEFLテストを利用した入試と2回受けられるケースがあります。受験機会が増加するので、それだけチャンスが広がります」と言う。

     TOEFLテストのスコアが大学入学後に学部の英語の単位に認定される場合もあり、大学入学前にTOEFLテストで高いスコアが取得できれば受験だけでなく、入学後も有利なのだ。

    東大とハーバード大の同時合格も

     「TOEFLテストはもともと海外大学に出願するための必須テストなので、かつては留学したい大学生や社会人が多く受験していましたが、最近では高校生も多く受験しています。文科省指定のスーパーグローバルハイスクールの生徒の中には、過去に満点を取る人もいて、そうした生徒は東京大学、ハーバード大学、プリンストン大学など日本と世界の一流大学に同時合格しています」

     灘中学校・高等学校が高校入試にリスニングを導入したり、桜蔭中学校・高等学校が中学からオンライン英会話を始めたりするなど、有名校でも4技能の習得を目指す学習へと英語教育を変化させているが、こうした傾向を見越しての対応とみられる。

     社会人になってからも仕事に4技能の発揮が求められる場は多い。「例えば、理工系だから英語はダメという時代ではありません。理工系の人も自社の商品について海外でプレゼンテーションをしたり、海外の学会で発表したりしなければなりません。それができるかどうかでキャリアが全く違ってきます」

     英語は読むだけではなく、英語を使って学び、英語で発信しなければならない時代だ。グローバル社会で活躍するために、TOEFLテストは大いに役立つことだろう。

    (文:小山美香、写真:国際教育交換協議会(CIEE)提供)

    2017年08月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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