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    理系や医学系で使える科学技術英語の習得を目指す…工業英検

     グローバル化が進み、コンピューター、IT、IoT(Internet of Things)、ロボット、自動運転車、新薬、医療…新しい産業が次々と発展していく中で、非常に重要になってきているのが科学技術英語だ。受験英語でもビジネス英語でもない、科学技術や医療の分野で使える英語が求められてきている。科学技術英語の検定試験である工業英検を実施している日本工業英語協会(東京都港区)の専任講師・徳田皇毅さんに、工業英検の目指す英語について話を聞いた。

    受験英語では理系や医学系の論文が書けない

    • 日本工業英語協会・専任講師の徳田皇毅さん
      日本工業英語協会・専任講師の徳田皇毅さん

    ――日本人は受験のための英語を学習してきたケースがほとんどだ。

     「それでは、理系や医学系の大学や企業に進んだときに、論文が書けません。英検やTOEICを勉強してきても、科学技術英語が使えないからです」

     徳田さんによると、名古屋大学工学部の研究グループが、TOEICで高得点を取るための語彙(ごい)と工学分野の論文に用いられる語彙を比較したところ、重複する頻出語彙は、それぞれの分野の半数にも満たなかったという。それほど受験英語と科学技術英語は違うというのだ。

    科学技術英語は世界で求められている「伝わる英語」

    • 工業英検の要となる「3C」の考え方
      工業英検の要となる「3C」の考え方

    ――受験英語と科学技術英語はどう違うのか。

     「『赤いLEDが点滅している場合、エラーが発生したことを示しています』という日本語を英語にする場合、In the case red LED is blinking, it indicates an error has occurred. というような英文に日本人はしがちです。『~の場合』を『in the case』と暗記しているからです。間違いではありませんが、ネイティブからみると冗長で分かりづらいのです。正しくは、A blinking red LED means an error. 明確(Clear)で、正確(Correct)、簡潔(Concise)な英文にすることが科学技術英語では求められています」

     「例えば、飛行機の操作マニュアルが曖昧な英文では困ります。誰が操作しても間違いなく飛べなくてはなりません。製品取扱説明書、仕様書、契約書、特許文書、また、学会に発表する論文でも、正確に伝わる英語が必要なのです」

    論文の評価を左右する英語力

    • 日本工業英語協会では大学や企業でセミナーを実施している
      日本工業英語協会では大学や企業でセミナーを実施している

     大学や学会でキャリアを積むには、論文を英語で書くのは必須だ。それには世界中で誰が行っても同じ実験結果が出るような、正確に伝わる英語でなければならない。徳田さんは、「研究成果がどんなに素晴らしくても、英語が分かりづらいと、論文自体の評価まで下がってしまいます。特に欧米の学会ではつまらないと、どんどん途中で席を立たれてしまう厳しい世界です。ですから、理学系、工学系、物質科学系などの分野では、工業英検を専門英語教育に取り入れている大学が増えています」と現状を説明する。

     千葉大学工学部では、TOEICと並んで工業英検を英語教育の柱とし、学部で3級、大学院で2級の合格を目指し、学生全員に受験を奨励している。また、北海道大学工学部、名古屋大学工学部、東京理科大学、お茶の水女子大学などでもセミナーや講座を実施したり、取得した級を単位認定したりしている。

     医学系でも工業英検は注目され始めている。徳島大学医学部ではメディカルサイエンス英文のセミナーを日本工業英語協会の講師を招いて実施している。大学医学部・大学病院でも英語の論文を書くことが、大学や研究者の評価を上げることにつながっているからだ。

    実務に直結する工業英検

    • 年に4回実施されている工業英検
      年に4回実施されている工業英検

    ――製造、機械、土木、建築、情報、医学、デザイン、バイオテクノロジー、宇宙開発、コンピューターグラフィックスなどのあらゆる企業で工業英検が重視されてきている。

     「TOEICで高い点数を取って理工系の学部を卒業しても、就職した企業で、それまで身に付けた英語が使いものにならないことが多いのです。今やほとんどの企業が海外と取引をしているので、マニュアル、プロポーザル、テクニカルリポート、スペック、アグリーメント、契約書、承諾書などに英語が必要となっています。企業では入社後に科学技術英語を学ぶ研修を行うなどの対策をしています」

     企業によっては工業英検の受験を奨励し、級の取得に報奨金を出すところもある。

     1級を取得した男性は、「社内の職層に専門職(スペシャリスト)というのがあるのですが、その面接審査を受けるときに工業英検1級の資格はアピールポイントになりました」と話す。

     同じく1級を取得した工作機械メーカー勤務の女性は、「設計、営業、製造などいろいろな部門から翻訳依頼がきます。私の訳した英語から各国の言葉に翻訳されることもあり、1級の取得が社内での信頼につながっていると思います」という。

     工業英検はまさに実務に直結している資格なのだ。

    工業英検の勉強で、世界標準の国際人になれる

    • 1級から4級まであり、準2級以上は記述式の問題がある
      1級から4級まであり、準2級以上は記述式の問題がある

    ――科学技術英語を身に付けるメリットは。

     「理系を目指す中高生にもぜひ知ってほしいです。引き算は英語で何というか、3分の2は英語で何というのか、そういった身近なところから興味を持ってもらえたらいいですね」と話す。

     「日本語は曖昧なところがあり、はっきりさせないのが日本の文化でもあるのですが、工業英検で科学技術英語を身に付けると、結論から先に述べる、簡潔、論理的に話すなど、世界標準の英語が身に付きます。すると人格まで変わってくるのです。世界標準の国際人、世界で好まれるコミュニケーターになれるのです」

     工業英検は1級から4級まであり、理系の大学生だけでなく、工業高校や高等専門学校(主に工学系の5年制高等教育学校)の生徒も、工業英検を積極的に受験しているという。理系に進学を目指す中高生も、大学受験時のアピールポイントとして、工業英検に挑戦してみてはいかがだろうか。

    (文・写真:小山美香 一部写真:日本工業英語協会提供)

    2018年04月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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