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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    史上最大の解答、200兆文字を使った証明…竹内洋人

    「ブールピタゴラス問題」

    ”史上最大の答え。数学の証明問題、解が200TBに達する”

     主に最新テクノロジーに関する内容を取りあげるWEBサイト「ギズモード」でこんなタイトルの記事を見つけました。(http://www.gizmodo.jp/2016/06/200tb.html)。Natute(ネイチャー)という非常に権威のある科学誌が取りあげた論文のニュースに関する記事です。

     1B(バイト)というのはパソコンで半角英数字1文字分の情報量。1TB(テラバイト)が約1兆バイトなので、ざっくり言えば「証明するために必要な説明資料の文字数が200兆文字」ということですか。うーん…。想像できないけどなんだか(すご)そうです。まずは簡単に問題の内容を(のぞ)いてみましょう。

     この数学の証明問題は「ブールピタゴラス問題」と言って、

     整数に赤または青の色を付けていき A×A+B×B=C×C となるような A,B,C の組み合わせ(ピタゴラス数)のすべての数が同じ色にならないようにすることは可能か?

     可能ならばなぜ可能なのか、不可能ならばなぜ不可能なのかを説明するか、もしくは証拠を示して下さいね、という問題らしいです。

     「ピタゴラス数」は知っていますか。中学生で習うのですが、6年生くらいだと「ピタゴラス(三平方)の定理」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。ピタゴラス数というのは3辺の長さが整数で直角三角形を作ることができる数の組み合わせです。例えば中学受験で頻出の直角三角形には次のようなものがありますね。

     これらの3辺の長さには 3×3+4×4=5×5 , 5×5+12×12=13×13 のように A×A+B×B=C×C の関係になっています。つまり (3,4,5)や (5,12,13) がピタゴラス数です。例えば1から13までにピタゴラス数は上の2つの組み合わせと (6,8,10) もあるので、次のように塗ると、

     (3,4,5) の組み合わせでは (赤,赤,青) 、 (6,8,10) の組み合わせでは (青,赤,青) 、 (5,12,13) の組み合わせでは (青,青,赤) となっていて、どの組み合わせも3つの数がすべて同じ色にならないように塗ることが可能です。

    スーパーコンピュータが全パターン書き出し

     上の例はあくまでも1から13までに限った場合ですが、1から15になるとピタゴラス数 (9,12,15) が加わるのでより複雑になります。このブールピタゴラス問題は数十年間未解決だったそうですが、このたび3人のコンピューター科学者によって証明されたようで、その結論は「不可能」。

     スーパーコンピューターであらゆるパターンを調べ上げた結果、1から7824までは可能だけれども、その次の1から7825までだと塗ることができなかったそうです。7825までになると、どんな風に塗っても (赤,赤,赤) のように3つの数がすべて同じ色になってしまうピタゴラス数の組み合わせが必ずできてしまうということです。

     例えば中学受験でおなじみの「場合の数」でもそうですが、式でスマートに解く方法もあれば、すべて書き出して求める方法もあります。

     「1,2,3,4と書かれたカードが1枚ずつあります。これらを使って4ケタの整数を作ります。何通り作れますか?」

     上のような問題であれば、4×3×2×1=24通り という風に求める人もいれば、1234から4321までをすべて書き出して答える人もいるでしょう。後者と同様に今回のブールピタゴラス問題の証明ではスーパーコンピューターでひたすら書き出して答えを見つけるという方法だったので「解答」が200TB(テラバイト)という膨大な量になったのです。実際のところ、こういう「書き出し・調べ上げ」による証明には「解き方が美しくない」という声もあるようですが、「可能か不可能か」ということの結論さえ未解決だったわけですから、やはりコンピューターの恩恵は大きいですよね。

    「プログラミング」中学生になったら始めてみよう

     ところで、みなさんはパソコンで「プログラミング」をやったことがありますか?

     最近では「アプリを作ろう!」みたいな教室なんかもあったりしますね。さきほどのブールピタゴラス問題の証明もそうですが、大学(特に理系学部)では研究に「コンピュータープログラミング」が欠かせない道具になっていますし、先日はGoogle社の「Alpha碁」というコンピューターが世界トップレベルの囲碁棋士に勝利したというニュースもありました。

     受験勉強で今はまだ時間がないかもしれませんが、中学生になったら遊び程度に始めてみるといいですよ。身近に詳しい人がいれば教えてもらうのもいいですし、インターネットで調べながら独学でマスターすることだって可能ですから。「こんなアプリがあったら便利だな」というアイデアを少しずつ組み立てていくのはとても面白いですよ。

     さて、今回で僕のコラムは最終回となります。2年以上、この「マナビレンジャー」で連載させて頂きました。

     読者の方々にとってほんの少しでも参考になることが書けたなら、とても(うれ)しく思います。ありがとうございました。受験生のみなさんの地道な努力を今後も応援しています。

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    2016年06月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
    プロフィル
    竹内洋人  (たけうち・ひろと
     東京大学理学部・同大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修了。自身の体験を通じて算数指導に目覚め、在学中より塾講師・家庭教師として数多くの子供たちを教える。森上教育研究所特設教室として宮本算数教室教材「賢くなる算数」教室を指導運営。著書、『中学受験 お父さんが教える算数(ダイヤモンド社)』『算数 計算と一行問題(受験研究社)』など。
     
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