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    学習本能を「殺す」もの…宮本哲也氏<1>

    • 「子どもを自分の思い通りに動かしたいというよこしまな考えは、いますぐ捨ててください」と語る宮本氏
      「子どもを自分の思い通りに動かしたいというよこしまな考えは、いますぐ捨ててください」と語る宮本氏

     (この記事は、2014年10月20日付「トピックス」からの転載です)

     わが子を賢い子に育てたいというのは多くの親の願いだ。子どもに対して、親がすべきこととすべきでないことについて、多くの教え子を難関中学へ送り出している「宮本算数教室」主宰の宮本哲也氏に聞いた。

     (9月9日に行われた森上教育研究所主宰の「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」での宮本氏の講演を元に再構成)

    勉強嫌いは親のせい

     子どもの学習において、大事なことはたった二つです。やりたいことはとことんやる、やりたくないことは一切やらない、子どもをそういう状態に持っていくこと。あれもやらせなきゃ、これもやらせなきゃと親が余計なことをすればするほど、子どもの学習本能は衰弱し、そこに義務感が生じると、学習本能は死んでしまいます。押し付けられたと感じた瞬間、それまで大好きだったものが、瞬時に大嫌いになってしまう。

     それは、すべて親が悪いんです。自分の欲望を満たすために子どもを都合のよいように利用するのは、言語道断です。自分で決めたことは頑張れるけど、人に押し付けられたことは頑張れない。全く同じことをやるにしても、自分でこれやろうと決めたのと、人からこれをやりなさいと押し付けられてやるのとでは、気持ちの入り方が全然違う。皆さんも似たような経験をされたことがあるのではないでしょうか。

     ある男の子は、小3、小4のころは、非常によくものを考える、賢い優秀な子でしたが、5年のある日から急にものを考えなくなってしまった。成績もどんどん下がり、持ち直すことなく、結局第4志望校に進学しました。入試の後、両親と本人が教室に来たので、どうして急に考えなくなったの、と尋ねると、その子は「算数は大好きだったけど、親にやらされてるんだと感じた瞬間、大嫌いになった」と言いました。彼は今、楽しい学園生活を送っているようですが、こういったことが高じて、深刻な家庭内暴力に発展したケースもあるのです。

    もし子どもを自由に操れたら?

     たとえば、自分の子どもを自由に操れる機械ができたら、欲しいでしょうか。いつも自分の手元に子どもを動かすコントローラーがある。朝になり、「起きろ」とボタンを押すとパッと起きる。学校から帰ると「宿題!」。成績は伸び、たとえば筑波大附属駒場に進学する。その後も、勉強しろ、(東大の)理三に入れ。研究しろ、ノーベル賞を取れ……全部うまくいってしまう。たいてい親のほうが先に死にます。死ぬ間際になって、子どもを呼んで「お母さん楽しかったわ。ありがとう。これからあなたの好きなように生きていいからね」とコントローラーを子どもに渡して息を引き取る。自分のコントローラーを渡された子どもは、その後どうやって生きていくのでしょうか。自分で考えたことも判断したことも、自発的に行動したこともない。そのまま餓死してしまうかもしれません。

     子どもを自分の思い通りに動かしたい、育てたいというよこしまな考えをお持ちの方は、いますぐ捨ててください。(続く、構成・メディア局編集部 小倉剛)

    プロフィル
    宮本 哲也(みやもと・てつや)
     早稲田大学第一文学部卒業後、当時日本一の進学塾だったTAPに入社。SAPIX横浜初代教室長を経て、1993年、横浜に宮本算数教室設立。2009年に教室を東京に移し、今日に至る。2006年に出した「賢くなるパズル」(学研)はシリーズトータルで220万部を越えるベストセラーに。「賢くなるパズル」のメインである「計算ブロック」は英名KenKenで、世界10か国で翻訳出版されていて、読売新聞、NewYorkTimesなど国内外の多くの新聞、雑誌に連載されている。2015年から活動の拠点をアメリカ・ニューヨークに移す予定。
    2017年09月06日 09時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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