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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    人生のちょっとした岐路でしかない中学受験…後藤卓也

    受験生の皆さんへ~自己紹介を兼ねて~

    • ベテラン塾教師の視点で中学受験を語っていきます(画像はイメージ)
      ベテラン塾教師の視点で中学受験を語っていきます(画像はイメージ)

     私が初めて中学受験の世界に足を踏み入れ、小学生を相手に算数と理科を教えるようになってからはや33年半、1世紀の3分の1以上がたちました。

     私が働いているのは1学年200人前後の小規模な塾なので、いつの頃からか「塾長」という肩書をいただき、もうすぐ還暦を迎える年齢になりながら、今でも週6日教壇に立ち、毎年6年生2クラスの担任として、50人余りの受験生の指導をしています。

     縁あって、この欄でほぼ月に1回くらいのペースで連載を担当させていただくことになりました。堅苦しい話ではなく、今もまだ受験生や保護者の方々と苦楽を共にしている1人の塾教師の立場から、「現場の声」をお伝えしていきますので、よろしくお付き合いください。

    就活、婚活、そして“学活”(?)

     いま世間でフツーに流通している「就活」(シューカツ・就職活動)という言葉が『現代用語の基礎知識』に掲載されたのは2000年から、「婚活」(コンカツ・結婚相手を探すこと)という用語が使われるようになったのは2008年頃からだそうですから、意外と最近のことなのですね。

     受験生の保護者の皆さんにとっては、今がまさに最終的な「志望校選び」=「学活」(?)の時期でしょうから、今回は「学校選びのポイント」について書くことにします。

     私たちの塾では、いま毎週2校近いペースで「塾主催学校見学会」を開催しています。見学会のあとは、私たち教師と保護者で「ランチ会」(感想会)を行うのですが、毎回、保護者からため息交じりに語られるのは、「どの学校を見学しても『ステキ』と思ってしまうので、何を決め手として選べばいいのかわからない」、そして「ステキだと思うけど、ウチの子の成績では受かりそうにない」という二つの悩みです。

     「こちらが希望しても、相手がウンと言ってくれるとは限らない」……それは就活や婚活にも共通する悩みです。それに対して“学活”特有の難しさは、「学校選びをするのは親(主に母親)」だけど、「実際に受験し、通学するのは子ども」だということです。

     「親の願い」と「本人の希望」と「学力」がすべて合致していれば、何の悩みもありません。「学力だけが合致しない」場合は、もっと勉強させて成績を上げるしかありません。これはまた別の機会にお話ししましょう。

     となると、残された問題は、最終的に「誰が選ぶのか」、そして「何を決め手にするのか」という2点です。

    大事なのは「ママ目線」で学校を選ばないこと

     以前、ある男子校の校長先生から「進学実績も決して悪くはないし、教師も本当によく頑張っているのに、なぜ受験生が減り続けるのでしょう。私の力不足なのでしょうか?」と、深刻な口調で相談を受けたことがあります。半分冗談で「都心のオシャレな街の、駅から徒歩2分の場所に最新のオフィスビルみたいな校舎をかまえた共学校と、私鉄沿線の昭和の雰囲気満載の駅から徒歩10分以上の男子校。『いまどきのママたち』がどっちを選ぶと思いますか?」と、意地悪な返事をしてしまいました。

     私は特定の学校に「肩入れ」をするつもりはありません。どの学校が向いているかは、子どもの性格や保護者のニーズによって異なるからです。ただ、「駅前の通学路に赤提灯(あかちょうちん)の店が並んでいるから」とか「駅から遠いから」というのはあくまでも「ママ目線」の判断であり、せいぜい年に数回、保護者会や個人面談で足を運ぶだけのママではなく、毎日通学する子どもの目線で学校を選んでほしいと思うのです。

     同様の理由で、(特に男子の場合)モダンな校舎やオシャレな教室も必要ないと思います。私が一番好きなのは神奈川県のA校の教室。広々とした教室の前方と後方は端から端まで巨大な黒板で覆い尽くされている。黒板を消す手間と、生徒が板書を書き取るのを待つ時間が省け、熱のこもったいい授業をする上では最高の環境といえます。ちなみに私が通っていた名古屋の県立高校の教室も同じでした。

     あとは生徒が入りやすいオープンな構造で、質問スペースがある職員室と、授業後まで利用できる食堂があれば最高ですね。本当は広い土のグラウンドも譲れないポイントなのですが、都心では、ないものねだりに近いのが残念です。

     要するに「子どもたちがのびのびと生活し、しっかりと勉強できる空間」であること以上に重要な要素は何もないと(個人的には)思うのです。

    2017年10月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
    プロフィル
    後藤卓也  (ごとう・たくや
    啓明舎塾長。1959年愛知県生まれ。東京大学教育学部博士課程修了。84年の啓明舎設立当初から時間講師として勤務。2年間の西ベルリン(当時)留学経験の後、再び啓明舎へ。94年から塾長。主な著書に『大人のための「超」計算トレーニング』『大人のための「超」計算 正しく速くカッコよく解く!』 (すばる舎)、『小学生が解けて大人が解けない算数』 (dZero社)、『大人もハマる算数 』(すばる舎)、『秘伝の算数』(全3冊、東京出版)、『新しい教養のための理科』(全4冊、誠文堂新光社)など。
     
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