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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    「あなたのため」は呪いの言葉…おおたとしまさ<7>

     【中学受験必“笑”法】中学受験に「必勝法」はないが「必笑法」ならある。結果を勝ち負けと捉えるのではなく、自分たちが「やって良かった」と思える中学受験にすることが大事。人と比べない中学受験、頑張りすぎない中学受験、子供を潰さない中学受験のすすめ。

    理性の皮を被った感情の暴力

    • あなたの振る舞いは「教育虐待」になっていませんか?(画像はイメージ)
      あなたの振る舞いは「教育虐待」になっていませんか?(画像はイメージ)

     わが子に中学受験をさせようというような親は、例外なく教育熱心だ。わが子のためなら何でもする。そんな覚悟がある。しかし皮肉にも、教育熱心過ぎる親が、子供を追い詰めてしまうことがある。それを近年「教育虐待」と呼ぶ。

     「これくらいのことができないなら死んでしまえ!」とか「あなたはダメ人間」などとむやみに怒鳴(どな)ったりたたいたりする親は、実は少数派ではないかと思う。多くの親は、子供を叱るに十分な理由を見つけてから、その正論を振りかざしているのではないだろうか。「この子が約束を破ったから、そのことを叱っている」などと、正当化をしているのではないだろうか。そうやって「自分は感情的に怒っているのではない」と親は自分を許しているのだ。

     しかし結局のところ言外に伝えているメッセージは、「あなたは自分で言ったことも遂行できないダメ人間だ。だから成績が悪いのだ」ということにほかならない。子供は反論できない。逃げ場を塞がれ、完全に追い詰められてしまう。いわば、理性の皮を被った感情による暴力である。

     自律を学ばせるために親子でルールを話し合い、それを守らせること自体は立派な教育である。しかしやり過ぎれば約束を盾にした容赦ない攻撃にもなる。明確な線引きはきっとない。

     たとえばテストで悪い点を取ってしまったとき、その成績を見ながら親が説教を始める。その場では激高しない。「どうしてこうなったと思う?」「これからはどうする?」などと、あくまでも冷静に、原因と対策について話し合う。

     ヘビににらまれたカエルのような状態の子供は、今までの反省点と改善策を話す。「具体的にはどうするんだ?」と親はさらに問い詰める。たとえば「これからはテレビゲームをやる時間を減らして、毎日3時間勉強する」などと、子供は応対するしかない。ほとんど誘導尋問であるが、こうやって子供は約束させられる。

     約束したときには子供も本気に違いない。しかし人間そんなに強くはない。まして子供である。約束不履行はすぐに見つかる。

     「あなたは約束を破った」「やるって言ったじゃない!」。親はそのことを責める。約束を破るのは人の道に反することだとされているので、親はそれを厳しく叱る。正当性を得る。子供は言い逃れができない。追いつめられてしまう。

     毎日の運動が持続できない、つい間食をしてしまう、ストレスのせいで深酒をしてしまうなど、親にだって人間として至らない部分は多い。それを棚に上げて、子供には完璧を要求してしまうのだ。

     「どうしてできないの?」も、子供の勉強を見ているとつい言ってしまう言葉の代表格だろう。

     本来であれば、「この子はなぜこんな簡単に見える問題が解けないのだろう。この子にとってはどこが難しいのだろう。どうやったらこの子にもこの問題の解き方が分かるようになるだろうか」と考えるべきところであるのだが、つい「どうしてできないの?」という一言に集約されてしまう。

     すでにそこには「どうして?」という優しい問いかけのニュアンスはない。「こんな問題ができないあなたはバカだ」という言外のメッセージが、子供を直撃する。

     「どうしてできないの?」と言われても本人にはどうしようもない。何の解決にもならない。それどころか、問い詰められれば問い詰められるほど、頭は真っ白になる。「どうしてできないの?」が口を突きそうになったときには、ぐっとこらえたほうがいい。

    2018年03月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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