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    児童書の世界で活躍する人々から子どもたちへのメッセージ。

    人生のバトンを手渡す…YAブッククリップ

    「おいぼれミック」 バリ・ライ著

    「ロックなハート」 ひこ・田中作

    ナビゲーター 那須田淳(作家)

     少年や少女たちが、学校や家庭以外の場所=社会でみょうな老人と出会い、それをきっかけに自分をみつめ、あらたな価値観かちかん見出みいだしていく。これは、YA小説の王道でもあります。

     老人たちは最後に、もう一度、自分らしく生きてみようともがく。そんなモドカシサやいらだちって、若い世代には共感できるものでしょう。で、なりゆきでかかわっているうちに、さまざまなことを学ぶことになるのです。そして、そのとき、大事な人生のバトンをこっそり手渡てわたされているから油断ゆだんがならない。

     というわけで、今回はちょっと型破かたやぶりなおじいちゃんたちが登場するYA小説を2さつクリップしてみました。

     『おいぼれミック』。いろんな国からの移民いみんが多いイギリスの町レスター。15さいのハーヴェイは、そんなレスターに引っしてきたインド系のシン一家の息子むすこ。ところが、となりにひどく口うるさい老人ミックがいた。なにしろとびっきりの人種差別主義しゅぎ者で、なにかと文句もんくをつけ、いやがらせをしてくる。こんなやつと仲よくしようなんて、絶対ぜったいに無理。ところが、ミックがっている犬をきっかけに少しずつ交流が……。

     相手を知ること。それこそが、人種をえて理解りかいしあえる最大のポイントなのだと教えてくれる物語。

    • イラスト・十々夜
      イラスト・十々夜

     『ロックなハート』。都会のど真ん中にらす少女「コトノハ」は、夏休みに、いつも出入りしているショッピング街で、ロックをやりたいというストリートミュージシャンの老人「シュガー」に出会う。シュガーは、コトノハの友人「700」の祖父そふだったのだが、なかなかにカッコいいし、なぜ急に歌おうと思ったのか気になって、調べてみることに……。

     思い通りに生きるって、簡単かんたんじゃない。やりなおすのもむずかしい。でも人生って、なやむからこそ、深くて楽しいのだと感じさせてくれる素敵すてきな作品です。

     さて、YA世代のみなさんに、読書のきっかけになればとおとどけしてきたこのコーナーは、今回で最終回です。自分のお気に入りの本との出会いって、実は直感が当たるので、これからも、こんな書評しょひょうを読んだり、書店や図書館をうろついたりしてみてくださいね。よい本と出会えますように!

     なすだ・じゅん ベルリン在住。青山学院女子短大でYAや童話の創作を指導するほか、翻訳も手がける。作品に『星空ロック』など。

    ※YAは「ヤングアダルト」の略で、子どもじゃないと思っているのに、大人扱いされないキミのためのジャンルです。

    読書ガイド
     『おいぼれミック』(あすなろ 書房 しょぼう 岡本 おかもと さゆり やく )のバリ・ライさんは、1971年にイギリスのレスターで生まれたインド けい 移民2世。『ロックなハート』( 福音館 ふくいんかん 書店)は、都会で らす子どもと大人の 日常 にちじょう えが いた「モールランド・ストーリー」シリーズ2作目。 大阪府 おおさかふ 生まれのひこ・田中さんは、作家で 評論家 ひょうろんか
    2016年03月31日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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