挑んだ「夜会巻」 結果はサザエ頭…

長谷川 義史/絵
「夜会巻」なる言葉、ご存知でしょうか? 「真知子巻」の友達ではありません。「納豆巻」とも違います。ポニーテールや三つ編み同様、髪の毛のまとめ方の名称なのですが、「夜会」という華やかな響きが、鹿鳴館の舞踏会を連想させます。……させませんか?
この夜会巻、きもの雑誌のヘアスタイル集にもよく出てきます。ひとつにまとめた髪の毛をグルグルッとねじりあげてピンで留める、巻き貝のような優雅な形。ちょっと正式なきものにもよく似合うアップスタイルです。
先日、読者の方から「きものを着るのなら、やはり髪の毛は伸ばしたほうがいいでしょうか」とのお尋ねがありましたが、そんなことはありません。ショートで快活に着るのも素敵(すてき)です。ただ、個人的な見方なのですが、きもの姿の人を見て「わっ、ステキ」と思うのは後ろ姿、それもうなじから肩にかけてのラインが美しい人の場合が多い。ので、ある程度長さがある方はアップにされることをおすすめします。
わたしはいつもひっつめ髪。いわゆるお団子頭にしているのですが、一度、どうしても憧(あこが)れの「夜会巻」にトライしたくなりました。ちょっと大人っぽくしてみたかったのです。
とはいえ、自分の寝癖さえ上手(うま)く処理できないほどの生来の不器用さ。いざとなればハードスプレーでガチガチに固めてごまかそう……と逃げの一手まで用意したのに、やはり上手くいかない。この毛先、どうまとめるんやったっけ。あぁもう面倒くさい、固めちゃえ。必死のパッチでまとめた髪型は優雅な巻き貝には程遠く、どう見てもサザエの壺(つぼ)焼きを頭に乗せた女、だったのでありました。ああ……。(落語作家)
(2005年12月14日 読売新聞)