女性の健康Q&A 「ピル」<3>
第5テーマ「ピル」
回答は、種部恭子先生
質問<3>
子宮内膜症があってひどい月経痛があり、最近は仕事にも支障をきたしています。低用量ピルが効くという話を友人から聞きました。ピルは避妊のためのものと思っていたのですが、月経困難症にピルは効くのですか? もし効くのなら、試してみたい気もしますが、結局閉経するまで飲み続けなければならないのでしょうか? また副作用は大丈夫でしょうか? ピルを飲んでいる人は乳がんになりやすいとか、飲み始めたらすごい便秘になって大変という話を聞いたことがあります。アドバイスをお願いします。(30代)
回答<3>
ピルに含まれる少量の女性ホルモン薬により、子宮内膜は通常の状態より薄く保たれます。これにより月経量は減少し、月経痛(月経困難症)も軽快します。
子宮内膜症は、子宮の外側や卵巣など本来の場所ではないところに「子宮内膜」の組織ができる病気で、月経のたびに子宮内膜症の病巣でも出血が起こるため、月経痛、性交痛、排便痛などが起こります。卵巣に病巣ができると、卵巣で出血した古い血液が貯まり嚢胞(チョコレート嚢胞)を形成します。
治療には鎮痛剤や漢方による対症療法、GnRHアナログやピルなどのホルモン療法、子宮内膜症病巣を取り除く手術がありますが、嚢胞が大きくなると破裂や癌化のリスクが高くなるため、鎮痛剤などの対症療法だけで放置することは危険です。
ピルに含まれる黄体ホルモンによって子宮内膜が薄くなるのと同じ仕組みで、ピルを服用すると、子宮内膜症の病巣も勢いを失った状態になるため、病気の進展が抑制され、もちろん月経痛も緩和されます。
昨年から治療用の低用量ピルが承認され、子宮内膜症による月経困難症と診断されている場合、保険診療で治療用低用量ピルを処方できることになりました。
子宮内膜症は、月経がある間は進行し、手術などの治療を行っても再発を繰り返す疾患ですので、閉経まで気を抜くことは出来ません。ピル以外のホルモン療法を長期間続けることは副作用や費用などの面から困難ですが、ピルであれば安価で副作用が少ないので、手術適応とならない程度の子宮内膜症であれば閉経までピルで治療を継続することが可能です。
ピルのマイナートラブルと重篤な副作用についてはこれまでのコラムで述べたとおりです。心筋梗塞などの心血管系障害は(1)加齢、(2)喫煙、(3)妊娠、が最大のリスクで、ピルの服用によるリスクはこれらよりはるかに少ないものです。血栓症リスクも同様で、血栓症の死亡リスクは、ピルより妊娠・出産の方が60倍高く、喫煙はピルの167倍の死亡リスクであることがわかっています。
また、乳癌リスクの上昇も副作用としてあげられていますが、ピル未使用者と比較した乳がん発生リスクは1.0倍〜1.24倍というように報告にばらつきがあります(参考までに、アルコール摂取による乳癌発生リスクは1.5倍です)。現在、日本人女性の乳癌発生率は23人に1人と、ピルの服用率がまだ2%弱であるのにもかかわらず最近急激に増えており、ホルモン使用の有無よりもライフスタイルの変化の影響が大きいと考えられます。
便秘についてはピルに含まれる黄体ホルモンにより腸管の運動が低下する場合があることは予測されますが、全員に便秘が起こるものではなく、ピルの種類を変更することで改善できることもあります。また、もともと習慣性便秘がある女性が多いのですが、便秘薬の併用は可能です。
- 便秘(掲載予定6月25日〜)
- 子宮がん(掲載予定7月9日〜)
- 肩こり(掲載予定8月6日〜)に関するご質問を受け付けています。
プロフィール

種部恭子(たねべきょうこ) 産婦人科医・医学博士
女性クリニックWe!TOYAMA院長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。
富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業後、富山医科薬科大学付属病院、愛育病院、済生会富山病院などを経て2006年より現職。専門は生殖内分泌・不妊、思春期婦人科学。女性の心とからだの健康支援と女性を取り巻く社会環境問題にも積極的に関わる活動をしている。クリニックの名前「We!」はWomen’s Empowermentに由来。
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