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(2)産婦人科医療に思うこと : 大石静さん

危機にさらされる産婦人科医療

Q今回のドラマ「ギネ」は、原作を書いた岡井医師の昭和大が協力しています。

A昭和大の全面協力を得ています。病院には何度も行きましたし、書きながら何度も担当の先生と電話でお話ししました。取材して、実際目の当たりにすると、本当に産婦人科医は大変な仕事です。
 月の半分は当直、少ない人でも10日は病院に泊まっています。しかも、その当直が、昼間勤務して、当直して、翌日も外来の仕事をして、夕方やっと帰れる、という三十数時間勤務なんです。先生たちの奮闘には、土下座したい気分になりました。
 それに、勤務時間が長いというだけではなく、命に立ち向かっているんです。緊急帝王切開なんか1分1秒を争うわけですから、先生たちはもちろん、助産師、看護師たちもものすごい緊張の中で本当に頑張っています。命を助けたい、というのは人間の本能なんだと感じました。


「ギネ」の脚本家、大石静さん

 

Qその産婦人科が減っていて、ますます現場は厳しく過酷になっているのですね。

A医学生のうちは産婦人科に興味を持つ人が多いらしいんですが、研修医が終わって専門を選ぶ時、勤務時間も長く、お金もそれに比べれば安くて、訴訟の危険も大きいことで、みな断念してしまうそうです。研修医が終わって後の新人医局員の給料は15万円くらい。産婦人科は医師全体の8〜9%いなければ足りないのに、今は4%しかいないそうです。
 「情熱だけでは支えきれない」という台詞を何回も書いたんですけど、燃え尽き症候群のようになって辞めていく先生もいるそうです。長年のストレスがたまって、産科医は、57〜58歳で亡くなる先生も多いと聞きました。

Qそれで日本の少子化をなんとかしようと思っても……

A今、妊娠したとたんに出産する病院を予約しないと、お産難民になっちゃうくらいです。
 産科医をとにかく増やさなければいけない、と。岡井先生は、研修医とか医学生さんに会って、いかに産科医は素晴らしいかを涙を流して説くそうです。それで一人一人産科医として確保してくるそうです。そのくらいやっているんですよ、最前線の先生たちは。

Q日本の産科医療への危機感が今回のドラマを作らせたともいえそうですね。

Aその危機感が、岡井先生に小説を書かせたのでしょう。ただ、ドラマはドキュメンタリーやニュースと違いますがら、そういうテーマだけを前面に出しても意味はありません。ドラマの第一義は、人間を立体的に描いて、上質のエンターテインメントを創ることですから。

Qそれほど過酷な状況に置かれている今の産婦人科医たちを激務に耐えさせているものは何ですか?

Aそれは、「赤ちゃんの産声」だそうです。「新しい命の誕生は、どんな激務も乗り越える感動なんです」って。
 私自身は、子供を産んだこともないし、産みたいと思ったこともなかったのですが、分娩室の外にいて産声が聞こえると、ああ、よかったと思うようになりました。

Qこのドラマがきっかけで産科医療がよくなるといいですね。

A産婦人科崩壊の現状は、一つのドラマで一気に変わるほど甘くはありません。しかし、政権も代わったことですし、少しずついい方向に行ってくれるといいなと、心から願っています。(3ページに続く

2009年11月5日  読売新聞)


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