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心も温まる土鍋ご飯あさみ ちゆきさん 歌 手
1978年、山口県生まれ。5年前に始めた路上ライブで「井の頭公園の歌姫」と話題に。今年4月、中国・北京の公園でライブを開いた。「ちゆき」の芸名は、高校生の時に亡くなった兄の智幸(ともゆき)さんの名からつけたという。 ■■■ 東京都内の一人暮らしの部屋。仕事で遅く帰宅したときでも、台所の土鍋でご飯を炊く。 炊き始めは土鍋の水が噴きこぼれるほど強火で約15分。その後、約20分じっくり蒸らす。じっと待ってから、鍋のふたを開ける。「おいしそうなにおいに包まれると、心が温かい気持ちになり、とても安らぎます」 土鍋は3年前のデビュー当時、芝田山親方(元横綱大乃国)からプレゼントされたもの。芝田山部屋を訪ねる機会があり、けいこを見た後、親方たちの前でデビュー曲を歌った。 歌い終わった後、親方から「プロなんだから歌詞を間違えちゃだめだ」と一喝された。2番と3番の歌詞を混同していたのを、歌詞を読みながら聴いていた親方は見逃さなかった。土鍋は「頑張れよ」という親方の気持ちが詰まっている。 山口県の漁港近くで生まれ育った。刺し身や煮物、それにご飯が並ぶ畳間の食卓を正座して囲んだ。両親は礼儀作法には厳しかったが、食卓は笑顔や温かさがいっぱいで大好きだった。 幼いころから目指していた歌手になりたいと、上京したのは高校卒業後の1996年春。アルバイトで生活をつないでオーディションに挑戦するが、落選が続いた。 「人間関係も希薄だったので、心がカサカサ乾いていました。寂しかったですよ」 絶望と孤独感から帰郷を考え始めた2001年秋、ガード下に立つ路上ミュージシャンの歌声に胸を打たれ、「井の頭公園」(東京・武蔵野市、三鷹市)で路上ライブを始めたことが転機となった。 初めは素通りしていた散策の人たちが、切なさや温かさのこもった、昭和の雰囲気漂う演歌やムード歌謡のギターの弾き語りに立ち止まるようになった。「井の頭公園の歌姫」と呼ばれ、その輪は数百人にも上るようになり、あこがれのプロデビューにこぎつけた。 今も忙しいスケジュールを縫って、毎月1回、公園の片隅で歌い続けている。 「公園は、自分が一歩踏み出し、大勢の人の優しさに触れた第二の故郷なんです」 そのこだわりは、土鍋で時間をかけて、手作りのおいしいご飯を炊く姿にどこか通じている。(龍野晋一郎) (2006年11月16日 読売新聞)
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