香り選び 役柄や気分で
東京都生まれ。1984年、「椿姫」の主役でデビューし、国内外のオペラなどで活躍。来年には25周年を迎える。15日に東京都内でオペラ・リサイタルを開く。
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バッグから大切そうに取り出したのは、バラの大輪を思わせる鮮やかな赤色の香水瓶。ふたを開けると、ふんわりと優しい香りが漂ってきた。「朝摘みのバラのように、軽くてさわやかでしょう」
2005年、ブルガリアのソフィア国立歌劇場で初めて歌った時、ブルガリアンローズの香水の魅力を知った。ちょうど05年の花だけを使った香水が日本で売り出され、「記念にもなるから」と購入した。「瓶の形が微妙にゆがんでいて、手作りっぽいところも好きです」
若いころは、演じる役に近づこうと、本を読んだり先輩に聞いたりして、がむしゃらに研究した。たどり着いた方法の一つが、香りで役のイメージを膨らませること。ブルガリアンローズからは、「オテロ」の純粋で薄幸なヒロイン、デズデモーナを連想する。舞台では、共演者に気付かれないくらいの微量の香水を、首筋や手首に。公演前のけいこや日常生活でも、その香りを愛用する。
海外公演が増えたころ、外国人にとっては「しのぶ」という名前が発音しにくく、覚えづらいことに気付いた。尊敬する共演者らに自分を印象づけようと、お香や墨の香りを使ってみたこともある。
年間50回ほどの公演をこなす多忙な日々が続くため、香水は気分転換にも欠かせない。コットンにしみこませて枕元に置くと、ぐっすり眠れる。その日の気持ちや会う人によっても使い分ける。「好きな香りでも『今の自分に似合わないな』と思う時がある。目的に合わせて香水を選ぶのも年齢を重ねてきた楽しみかな」
自宅に並ぶ香水瓶は100本以上。演じた役柄、うまくいったこと、悩んだこと、共演者との思い出などが詰まっている。オペラ人生のかけがえのない財産だ。
「今まで積み重ねてきた経験を生かして、心を打つ歌を作り上げていきたい」。香水を活力の源泉とし、歌声にますます磨きがかかる。(小野仁)
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