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小町さん
小町さんが聞く

「あなたのゴールは何?」が転機に

佐々木順子さん(ささき・じゅんこ) 日本マイクロソフト 執行役 カスタマーサービス&サポート ゼネラルマネージャー。1983年日本IBM入社、99年IBMアジア・パシフィック ラーニング・サービス・オペレーション・マネージャー、2007年執行役員IBMチャイナ・グローバル・デリバリー ジャパン・デリバリー・リーダーを経て、11年1月マイクロソフト執行役カスタマーサービス&サポート担当に就任、同7月から現職。

 2011年、人生の新しい一歩を踏み出した人たちの中に、日本マイクロソフト執行役佐々木順子さんがいます。仕事に真っ正面から取り組みつつ、自分の時間を楽しむ余裕も忘れない、しなやかな生き方のコツをうかがいました。

 Q 2011年を一言で表すとどんな年でしたか?

 A 「変化と学びの年」でした。四半世紀勤めた会社を離れ、新しい環境でさまざまなことを学びました。

リーダーシップを伝えたい

 Q 昨年、日本IBMを執行役員で退社、今年1月に日本マイクロソフト執行役に就任されたのはなぜですか?

 A IBMでは、ミャンマー、ベトナム、韓国など様々な国の人たちがリーダーシップをとって生き生きと活躍しています。その姿と接しながら、かっこいい日本人、尊敬される日本人のために自分は何ができるか、と考えるようになりました。

 日本の中にある「イケテル」部分をきちんと出していくために、アピールの仕方、会議の仕方、相手に難しいことをいう言い方などが少しずつ違うので、異文化の中でのマネジメントやリーダーシップについて学んできたものを、ここと見定めた人に教えたいなあと思っています。1世代、2世代後の人たちに「リーダーシップをとるための早道を教えたい」という思いを実現するのに、一番近いのがマイクロソフトでした。

ツイッターやフェイスブックでサポート

 Q 今の仕事は?

 A マイクロソフト製品に関する日本全体のお問い合わせ窓口を統括しています。

 以前と仕事の内容は似ていますが、違うのは、IBMは法人や大企業が中心なのに対して、今は、大企業から個人まで全部のお客様を相手にしているところが全然違います。

 小町さんがもしあした、オフィスを使って「あれ?」と何かわからないことがあって電話すると、私が担当する部署が対応します。お客様の幅の広さが違うことで、苦労もありますが、面白さもあります。

 IBMでは電話とメールでのサポートが中心でしたが、今は、ウェブとかソーシャルメディアとか何でも使っていてフェイスブックやツイッターでのサポートもやっています。

 Q フェイスブックやツイッターでのサポート?

 A 例えば、だれかがOSをウィンドウズ7にする前に「これからウィンドウズ7入れてみようと思うんだけど、大丈夫かしら?」とつぶやいたとします。

 サーチエンジンでずっと見てる担当者がいるんです。ヒュッと「マイクロソフトのサポートです。ウィンドウズ7いいですよ。ここ(ウェブサイト)を見てくだされば、ウィンドウズ7載ってますよ。かんばってくださいね」などと返すのをやっています。

 Q えっ、返事が来るんですか?

 A 皆さん、答えが来るのを全く期待していなくて、「わっ! マイクロソフトから返事が来た」とか「スゴイ!」とか「ありがとうございます」とか、とてもいい感じで受け止めていただいています。地道に続けていこうと思っています。

 お電話かけてくださる方、メールくださる方はほんの一部です。直接来てくださらないけれど、使ってくださっているお客様の声をどうやってお聞きするか、さらには「使おうかなあ」と迷っている、まだお客様でない方々の声をお聞きするにはどうすればいいか、ということを考えているのです。

 1年前まで外から見ていたマイクロソフトって、ちょっと上から目線で「使え」と言われているようなイメージだったのですが、中に入ってみると全然そんなことはなくて、競合他社さんとの競争厳しいですから、一生懸命どうやってお客様の声を聞くか、その声を早く反映するか、いろいろ努力しています。

 この会社は思いついたらすぐに実行できます。躍動感があって、ベンチャーの雰囲気を残しているところが楽しいですね。

 Q ところで、ご自身もツイッターを活用されていますが、この中にしばしば出てくる「1on1」とは何ですか?

 A 面談です。直属の上司は、1か月に1回、何でもいいから話を聞く、というのが、この会社のやり方です。また、メンタリング制度というのを聞いたことがあるかと思いますが、多くの人のメンターになっていて、絶対に中身は書けませんが、仕事上の相談や、上司に相談できないようなことを聞いています。あと、私自身がアメリカにいる上司と2週に1回はしゃべっています。上司はアメリカ人なので、こちらからできる限りアピールしておかないと。聞くこと、伝えること、それが私の仕事ですね。

35歳で経験した挫折

 Q ご自分の目指すことを実現するための”転職”ですが、これまでのキャリアで挫折経験はありますか?

 A 35歳で初めて課長になったとき、半分年上、半分年下という状況で、最初に面接した人にいきなり「何で(課長が)僕じゃなくて佐々木さんなんですか?」と言われました。びびりまくって、肩に力が入っていたんでしょうね。半年で問題続出でした。会社に来なくなる人が出たり、奥さんから「会社休ませてやってください」と言われたり、上司が「緊急避難させろ」とすぐに課長をクビになりました。

 このとき、管理職とか上に立つのは向いてないと思いました。会社辞めようか、公認会計士受けようか、転職難しいんでどうしようかなどと迷って、新聞読むだけという日もありました。

 Q そこから執行役員にまでなられたのですが、転機は?

 A 少しずつプロジェクトリーダーとかを引き受けているうちに、IBMに入社した理由の一つが外国に行きたかったからということを思い出して、「外国行かせてください。でなければ辞めます」と上司に言いに行ったんです。そうしたら、オフィスは日本だけど「アジアパシフィック行ってみるか」と言われました。アジア各国に研修を売る部門で、私は売り上げの数字を集めて本社に報告したり、本社が新商品を開発したら各国に伝えたりという仕事でした。そこからですね、ギア入ったの。

 そのころアジアに女性エグゼクティブはいませんでした。会議で欧米の女性エグゼクティブを見つけて、ミーハーに「ご飯付き合ってください」とお願いすると、みなさん気軽に付き合ってくれました。ランチとかディナーで自己紹介のときに聞かれたんです。“By the way(ところで), what is your goal?”って。

「あなたのゴールは何?」との出会い

 Q 「目標は何?」という意味ですか?

 A 最初、何を聞かれているかわからなくて、「そろそろ40歳だし、1回マネージャークビになったけど、マネージャーにはなりたい」とポジションなどを答えると、“No, no, it's not goal.”って。「そうじゃなくて、それでどうしたいの?」「あなたは何ができるの?」と聞かれるんですね。「この人、何抽象的なこと聞いてるの?」と思っていました。でも、あんまり聞かれるんです。いずれも女性のエグゼクティブに。39か40歳のときです。

 何のために、毎日毎日混んでる電車に乗って、はきたくもないストッキングはいて、例えばお子さんのいる方であれば子どもを置いて、会社に来て……。で、「あなたは、結局のところ何がしたいの?」「何が譲れないの?」という問いかけだと思うんです。

 Q (ん……?)

 A ちょうどそのころアジアパシフィックから日本IBMに帰任して、担当したのがシニアのチームでした。全員、入社以来一緒にその道15年も20年もやっている人たちで、お互い名前で呼び合うような間柄でした。そこに何も知らない私だけがパラシュートで降下していって、「いったい私に何ができるんだろう」「何のために会社来てるんだろう」って考えているうちに、この”What is your goal?”がつながってきました。

人と人とをつなぐブリッジに

 Q 佐々木さんのゴールは?

 A 私は、ブリッジングが得意みたいなんです。触媒のように、こっちのチームとあっちのチームを結びつけて、化学変化を起こす。1+1でも2になっていないチームありますよね。せめて2にして、それが3とか4になるのがすごく楽しい。そこで何か貢献したい、人の役に立つとか、人が楽しくなるとか、世の中よくなるとか、その役割を果たしたいなあと思っています。

 例えば、エンジニアさんって素晴らしい技術と知識を持っているけれど、口べただったりしますよね。技術に詳しくないお客様や経営者向けに、技術用語が難しくて説明がわかりにくいようなとき、私は翻訳者になって両者をつなぐブリッジの役割ができます。

 あるいは、IBMで中国勤務が長かったので、中国人と日本人それぞれのいいところが見えてきました。中国人に「日本人はなぜ、あんなに残業するんですか?」とか「日本はなぜ、あんなに昇進基準がわかりにくいんですか?」と聞かれれば、「それはね」と説明して、「日本人と仕事するときはこうしたらいいよ」とアドバイスできます。逆に日本人から「なぜ中国人は、あんなに金金言うんですか?」と聞かれれば説明して、といった具合に、様々なグループで自分なりに付加価値をつけていきたいと思っています。

 Q 顧客と開発者をつなぐ、今の仕事もブリッジそのものですね。

 A 中身は仕事でなくてもいいんです。家に人を招待して少人数でのパーティーが大好きです。必ず初対面の人をいれて、「いい人を紹介していただいて」と喜ばれるとか、つなげるのが大好きなんです。その人たちの役に立つことがあれば、すごくうれしいですね。お見合いばあさんみたい?

きのうの自分より、去年の自分より成長を

 Q 「ゴール」が見えると何か変わりますか?

 A 他人と比較しないで、自分自身との比較になったから、楽になりました。それまでは人と比較していました。同期のだれが昇進したとか、昇給額とか、すごく意識していました。学校時代からの延長で人と比べていたんですけれど、そこからスパッと、自分が価値を出せるところを私なりに取り組むことに関心が行くようになりました。

 他人と比べるのではなく、自分が出来ることを最大限やらないと自分に失礼、産んでくれた親に失礼という気持ちになりました。

 「売り上げを上げているか」「長時間働いているか」じゃないんです。この案件とれなかったけど、自分的には新しいことやったから次はこうしてやろうとか、逆に10億円の案件とったけどやり残したことある、とか。

 他人と比べるのではなく、きのうの自分、去年の自分と比べて、一つでも二つでもできるようになったらいい。それに気づいたら達成感があるし、お酒もおいしいし、毎日楽しくなりました。

 Q どうしたら「ゴール」が見えてきますか?

 A やりたくないこと考えていると浮き出てくるよ、と言っています。頭下げるのいや、田舎がいや、むしろ都会がいや、とか。リストを作ってみると、やりたいこととやりたくないことが増えていくと思います。

 どこかで立ち止まって、自分にとってイヤなことやらない。なぜイヤかを考えてみる。なぜ?なぜ?5回くらい考える。私は気づくのが遅かったですが、いつからだって遅すぎることはありません、考えましょう。考えるの大事ですよね。

 ゴールは仕事でなくてもかまわない。地域貢献やボランティア、介護かもしれません。一度、自分は何がやりたいのか決めてみてください。自分で決めたら、自分がそれに向けて努力しているかどうかわかるのは自分だけです。

 Q 挫折なんて関係ないのですね。

 A 挫折を乗り越えるのに5年かかりましたが、自分の中で醸成、熟成させるのにあのぐらいの時間が必要だったような気がします。

 挫折とか失敗とか、早めにやらないと。1回や2回はとことん失敗することないと、考えないじゃないですか。ちょっと幅を広げて無理かもしれない、ということをやってみて、「アイタ!」というのが大事です。女性は上司も本人もあまり冒険させなくて、もったいないですね。

 Q 日本は世界的にも女性管理職の割合が低く、ましてや女性経営者はごくわずかです。NPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)「エグゼクティブ・ネットワーク」幹事として、これからの女性たちを応援しています。

 A 今までは点在していた女性経営者が、ようやく「ネットワーク」になりました。みなさん、とにかく、決定・行動が速くて、ここでの活動はこれから楽しみです。

 Q ご自身のツイッターで、観劇のつぶやきが多くてビックリです。

 A 中学から演劇部で、就職してから自主公演で1本芝居作ったこともあるくらいですが、これは大変でした。それからは見るのに徹して、週末は必ずというくらい出かけます。2、3時間で空っぽになってパワーを直接もらえるので元気のもとになっています。

 ツイッターを通じて、仕事では決してお会いできないような20代やコンサルタントの方とも知り合いになれて、ツイッターは本当に貴重です。

2012年は「絞り込み」

 Q 2012年はどんな年にしたいですか?

 A 「絞り込み」をしていこうかな、と思っています。二つの意味で、です。

 一つは仕事で、自分が貢献できる、やりたかったことに集中して取り組みたいと思っています。

 もう一つはプライベートで、文字通り「絞り込み」たいです。健康も大事ですから、ジョギングを始めようかな、と思っています。

 Q 私も「絞り込み」を目指したいです。12年もよろしくお願いします!

2011年12月28日  読売新聞)

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