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長男の妻「損」7割

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 ◆「跡取り」の重圧20―30代にも

 今月のテーマ「長男の妻」には、112通の投書が寄せられた。「長男の妻は得か損か」という問いに対しては、「損」が7割を占めた。長男を“跡取り”と位置づけ、親の扶養などで特別な役割を負わせる「家制度」は、今も根強く残っているようだ。意識を変えようと訴える投書も少なくなかった。

 112通の内訳は、30代の36通が最も多く、50代の25通、40代の20通と続き、20代も13通。男性は1通だけだった。

 自由と豊かさを楽しんでいるように見える若い世代の女性から、昔と変わらない悩みが寄せられたことが印象的だった。

 「長男と結婚し、良かったことは一つもありません。嫌なら身一つで出ていけ、子どもは跡取りだからお前には渡さない、と何度、夫と義母から暴言をはかれたことでしょう。長男の妻はタダで使える家政婦で、子づくりマシンでしかないのです」(東京都 主婦 33)

 「夫の両親から、老後の面倒を、と言われプレッシャーを感じています。法律上は家制度は消えましたが、親の世代には根強く、そうした観念が残っている気がします」(千葉県 主婦 26)

 「長男の妻」を悩ますものとして、盆暮れの接待と義父母の世話、さらに跡取り意識があげられた。家を継ぐのは直系男子というのが戦前の家制度の根幹だったが、この少子化の時代でも、「男の子を産まなければ」という義務感に悩む女性は多いようだ。

 栃木県のパート(34)は「不妊治療をしていても妊娠できなかった時、義父に『子のいない風来坊に土地はやらない』と言われた。結局、息子を授かりましたが、その言葉は忘れないし、これから義父の介護をする気はありません」。「男児を産まなければ、などと皇室みたいなことを考えてしまうことがあります」という東京都の主婦(30)もいた。

 「長男の妻の義務は夫の父母の老後の面倒をみることですよね? そんなの耐えられない。絶対に長男の妻にだけはなりません」(東京都 フリーター高橋聖子さん 26)という若い世代の意見とともに、「娘を長男とは結婚させたくない」という親世代の投書もあった。未婚化が進むこの時代、「家」という意識を変えない限り、若い人がさらに結婚しにくくなるのではという懸念も生まれてくる。

 旧民法では長男が単独で相続することを定めていたが、1947年の新民法で相続は兄弟姉妹間で平等になった。それでも長男は特別と思われている背景には、「家や墓を守るのが長男の役目」(茨城県 主婦入江康子さん 63)という考えも。

 「長男やその妻に特別な役割はない」とする意見は約3分の1だが、インターネットでの投稿では、20、30代の5割が「特別な役割はない」と答えている。三重県の主婦(37)は「あくまで私は夫と結婚したわけですから、夫のための妻の役割はあっても、夫の親に対しては一切ないです」と言い切る。

 意識の変革を訴える意見があったことも強調したい。

 岩手県の主婦工藤敏子さん(54)は「帰省も義姉に迷惑をかけないように日帰りにしています。長男、二男、その妻が重荷を分け合うべきだと心得ています」。

 山梨県の主婦加賀美朝子さん(56)は「少子化でほとんどが長男、長女の時代。若い人は『跡取り』にこだわらずに生活してほしいと思います」と寄せてきた。

 ◆根強い「家」意識変える時

 戦後の日本は、核家族化が進んだ。夫婦と未婚の子からなるのが「核家族」で、伝統的な3世代同居の「拡大家族」と対比される。この核家族が、家制度のしがらみから解放された新しい夫婦単位の家族と言えるのかどうか、学者の間でも長く議論されてきた。

 明治大学の加藤彰彦助教授が2001年の日本家族社会学会の全国調査を分析したところ、結婚直後に親と同居する子の割合は、若い世代ほど低く、1960年代生まれの世代で20%ほど。しかし、結婚後10年を過ぎた時点で、30%以上が親と同居していた。さらに、長男である場合に、同居傾向は強まった。

 「長男が親と一緒に暮らすという伝統は残っている。結婚後の一時期、親と別居し核家族を形成するパターンに変わっただけです。近居の例も増えており、ゆるやかな拡大家族へ移行したと考えられる」と加藤助教授はいう。

 一方、京都大の落合恵美子教授は「今後、少子化によって家は崩壊せざるを得ない」と指摘する。

 夫婦が平均2人の子を生むとして、長女、二女の組み合わせとなるケースは単純計算で25%。男の子が家を継ぐという制度が続くならば、4分の1の割合で「家が絶える」ことになる。実際、現代と同じように子どもが少なく、人口が増えなかった江戸時代の家族を落合教授が調べた結果、家を維持するために盛んに養子、婿養子が行われていたことが確認された。昔は長男との同居が当たり前というイメージとは異なり、60代男性で実の息子と同居している例は4割ぐらいだった。

 「婿養子も難しい現代、もう『家』は維持できません。柔軟に考え方を変えていかないといけない」と落合教授は指摘する。「制度は強固なもののように感じられても、時代によって変わるものです。長男の嫁としての役目を押しつけられて、つらい目にあっている方もいますが、人間関係もまた働きかけで変わるのです」

 ◆[記者から]小学生の長男自由に生きろよ

 亡くなった父は二男。私も二男。だからか、あまり家ということを意識したことがない。仏壇が兄のところにある以外、権利も義務もきょうだい間で平等だと自然に思っている。それだけに今回の投書の傾向は予想外だった。

 まだ小学生の長男をみても、跡取りだとは思わない。継ぐべき家業も財産もないのに、跡取りと言われても困るだろう。将来、何者になるかわからないが、世界中、どこにでも行って存分に生きてほしいと思う。(斎藤雄介)

(2005.5.25)


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