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    マンションで認知症トラブル

    高齢者の見守り管理組合が強化

     マンションで、認知症が原因とみられるトラブルが相次いでいる。住人の高齢化が進んでいるためで、他の住人の生活環境を乱し、管理運営に支障が出るケースも少なくない。

     管理会社や管理組合は認知症への理解を深めたり見守り活動を強化したりして、対策を模索している。


    • 「潮音の街」の住人らがマンション集会室などで開く茶話会。調理体験やミニコンサート、詐欺対策など、テーマは多様だ(千葉県浦安市で、自治会提供)
      「潮音の街」の住人らがマンション集会室などで開く茶話会。調理体験やミニコンサート、詐欺対策など、テーマは多様だ(千葉県浦安市で、自治会提供)

     「ドアが開かない。カギの調子が悪いようだ」

     東京都内にあるオートロック付きマンションでは昨秋、一人暮らしの80代の女性が毎日のように、管理人を呼び出した。管理人がカード方式のカギを使うと、自動ドアは問題なく開く。女性には、使い方が分からなくなっているようだった。

     管理人は呼ばれるたびに使い方を教えたが、今年に入ってから自動ドアをたたくなど、危険な行動が見られるようになった。管理会社を通じて家族へ状況を伝えると、女性は間もなく転居した。

     各地のマンションで、認知症とみられる住人によるトラブルが顕在化している。業界団体「マンション管理業協会」は2015年、管理物件数の多い大手など16社を対象に、認知症やその疑いがある住人によるトラブル実態などを調べた。すると、数年内の事例約100件が報告された。

     共用廊下の徘徊はいかいのほか、各住戸のインターホンを押して歩き回る、トイレに汚物をため階下に漏水させる、管理費と修繕積立金を長期滞納し督促に応じない――など、マンション特有の事例が少なくなかった。トラブルを起こすのは、独居の80代が目立った。

     調査結果をもとに同協会は昨年末、管理会社向け対策マニュアルを作成。代表事例と対処法を紹介し、関係者との連携や早期発見の重要性などを訴えている。

     マンション管理に詳しい弁護士の篠原みち子さんは「管理会社や管理組合の役割は共用部の維持管理で、住人個人への関与は本来は含まれない。だが住人との意思疎通なしに、維持管理は成立しない。住人の認知症対策は将来必ず直面する課題で、無関心ではいられなくなってきた」と話す。

     こうした中、管理会社は管理人に対し、認知症に関する教育研修に取り組んでいる。例えば大京アステージでは、約5000人の管理人全員が「認知症サポーター」だ。国が認知症啓発の一環として始めた養成講座で、認知症の基礎知識や接し方を学ぶ。受講後は、ボランティアとして認知症の人や家族を支える。

     首都圏を中心に約90物件を管理する中銀インテグレーションも、管理人全員が認知症サポーター。また年に1回、管理人を対象に、認知症の講習会を開く。

     住人の支え合いも広がる。築40年の都内マンションの管理組合では、認知症が疑われる一人暮らしの80代男性に輪番制の理事を任せるにあたり、理事全員が認知症サポーター養成講座を受講。男性と一緒に活動することになった。

     9棟に約1300人が暮らす「潮音しおねの街」(千葉県浦安市)の自治会は2年前から、高齢者約60人の見守り活動と月1回の茶話会を始めた。自治会長の八田一さん(64)は「問題が起きてからでは遅い。少しずつ顔見知りの関係を作っておきたい」と話す。同市はマンションでの高齢者の孤立防止活動に対し、運営費を補助して支援。現在は「潮音の街」を含めた4団体が補助を受けている。

     早稲田大教授の加瀬裕子さん(老年学)は「異変に早く気づき、家族や行政につなぐことが大切。本人や家族が対策を考える時間的な余裕を作れ、住人も不測の事態を未然に防げる」と話す。その上で、住人同士で認知症の勉強会を開くことを提案する。「地元の実情を知る地域包括支援センターの職員らを講師に呼べば、知識が身に付き、支え合いのネットワーク作りにもなる」と話している。

    日ごろのつながりが大切

     マンション住人の共助などについて考える民間団体マンションコミュニティ研究会代表の広田信子さんの話

     住人の高齢化は、認知症や孤独死といった福祉の問題に限らない。管理組合理事のなり手がいない、重要問題を決める総会で意思表示をできない、などはよく聞く。非居住の親族の理事就任を認める、子どもがいれば一緒に総会に出てもらうなど、工夫が必要だ。

     住人同士のつながりは欠かせないが、「組織的な支え合い」「コミュニティー活動」が苦手な人は多い。ただ、重く考える必要はない。基本は会った時のあいさつと、困った時のさりげない声掛け。日ごろから緩やかにつながっておくことが、いざという時役に立つ。

    住人の高齢化と永住志向

     

     国土交通省のマンション総合調査によると、世帯主の60歳以上の割合は2013年度に50%で、1980年度の7.9%の6倍以上に増えた。

     かつては戸建てへの住み替えを望む人が多かったが、99年度に永住を考える人が住み替え派を逆転。以降、永住志向が高まっている。近年は郊外から都心部に移り住む中高年が増えているとされ、マンション住人の高齢化は今後も進みそうだ。

    共同体あり方考える契機

     ◎取材を終えて 分譲マンションに暮らして3年ほど。不満なく暮らしてきたが、取材を通じ不安が募った。国の推計では、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が、認知症になるという。自分が住むマンションでは、郵便受けには部屋番号だけで、表札を出す人もわずか。エレベーターでは軽く会釈しスマホを見つめる。そんな環境では心もとない。マンションという共同体のあり方を、長い目で考える必要があると思った。(斎藤圭史)

    2017年03月21日 Copyright © The Yomiuri Shimbun


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