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児童扶養手当削減へ、戸惑うシングルマザー

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「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」には、母子家庭の様々な悩みが寄せられている=東京・豊島区で

平均就労年収162万…働けど生活苦

 増加する母子家庭への支援のあり方が問題になっている。2008年度から低所得の母子家庭を対象にした児童扶養手当の削減が始まることなどに、反対の声が広がっているからだ。

 政府は、手当削減の代わりに就労支援に力を入れるとするが、母子家庭の8割は働いている。子育てとの両立は難しく、働けども生活苦から抜け出せないシングルマザーも多い。(竹之内知宣)

 東京都内の30代後半の女性は、仕事を辞めるか悩んでいる。

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東京・渋谷の「マザーズハローワーク東京」では、子どもを連れて、求人情報を調べることもできる

 元夫の暴力に悩み、1年前に離婚。昨年10月から、事務のパートを始めた。午後5時までの契約だが、当然のように残業を求められた。将来に備え働きたい。だが、自宅では小学生と保育園の2人の子どもが待つ。残業の日は、近所の両親に見てもらった。

 昨年末、午後9時までの残業が続き、下の子が夜中に突然吐いた。翌日会社を休むと、すぐ元気に。「ストレスがたまっていたみたい。子どもにも申し訳なくて」

 残業のない転職先を探しているが、なかなか見つからない。そして、今、一番気がかりなのが児童扶養手当の削減だ。現在の月給は約12万円。これに元夫からの月10万円近くの養育費と月約4万5000円の児童扶養手当で暮らす。しかし、子どもとの時間を増やすため転職して給料が減り、児童扶養手当も減額されると、生活は苦しくなる。

 児童扶養手当は、現在約97万人が受給。収入などで異なるが、子ども1人の全額支給は月4万1720円。02年の児童扶養手当法などの改正で、5年間支給した世帯は08年度以降、支給額の半分を超えない範囲で減額されることが決まった。

 減額の背景は、財政難だ。離婚の増加などで、受給者がこの2年間で約5万人も増えている。また、母子家庭政策を「給付依存型から自立支援型に転換したい」との国の狙いがある。東京大助教授(労働経済学)の玄田有史さんは「給付より就労支援という流れは理解できるが、シングルマザーの求職状況は非常に厳しい。過度の自立を求めるのはよくない」とくぎを刺す。

 03年度全国母子世帯等調査によると、母子世帯数は約123万で、5年前より28%増えた。83%が働いているが、正社員は39%で前回より12ポイントも減少。パートや派遣社員が半数を超え、平均就労年収は162万円に過ぎない。

 NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)が昨夏、約250人のシングルマザーを対象に行った調査(中間報告)では、この3、4年間の暮らしについて全体の7割が「家計が苦しい」とし、自分の健康状態も過半数が「悪い」と回答。児童扶養手当が削減された場合、「仕事を増やす」が約34%で最多だが、「どうしていいかわからない」も約30%で、戸惑いの大きさがわかる。

 同ふぉーらむ理事の大矢さよ子さんは「先進国と比べても日本の母子家庭の就労率は高い。しかし、女性の低賃金など構造的な問題で、働いても生活苦から抜け出せないのが実情」と話している。

企業の意識改革が課題 退職に追い込むケースも

 シングルマザーが自立した生活を送るためには、どのような支援が必要なのか。

 国は、情報提供を進めるため新年度から、子育てをしながら就職を希望する女性を対象にした「マザーズハローワーク」を全国に設置する。先行して昨年4月にできた東京・渋谷の「マザーズハローワーク東京」では、求人情報に合わせ、保育園の入園情報なども提供している。

 また、職業訓練の受講費を一部負担する制度を設けたり、シングルマザーを雇用した企業に助成金を支給したりするなど、雇用先の開拓に努める。

 しかし、助成金を受け取った後、重労働を課して退職に追い込むケースもあるといい、企業側の意識改革や、受け入れ態勢はまだ整っていないようだ。東京都内の女性(37)は「面接で、幼い子どもがいる母子家庭だと言ったら、すぐに断られた」。千葉県の女性(40)は「保育園が決まらないと就職できないが、就職していないと公立保育園には入園できないことが多い」と打ち明ける。

 日本女子大教授(社会福祉学)の岩田正美さんは「まずは保育所不足の解消や公営住宅への入居など、安心して働ける環境をつくらないと、就労支援も効果が期待できない」と指摘する。

 民間団体による支援の動きも広がりつつある。在宅での仕事を紹介するのはNPO法人「あごら」(東京)。理事長の久保勲さんは「子どもが病気がちだが、在宅でなら働ける場合もある」と、在宅でできる会議録作成や翻訳などの業務を発注する。月20万円以上の収入を得る熟練者もいる。

 また、生活面に関して電話で相談に応じる団体もある。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(03・5995・3711)は、毎週月曜日の午後6時半〜8時。離婚問題などに取り組む「現代家族問題研究所」(東京)(03・3261・1835)は、毎週土曜日の午後1時から5時まで電話相談を行う。

 東洋大教授(児童福祉学)の森田明美さんは「働きながらひとりで子育てするのは不安で大変。第三者に相談できる支援システムを充実させるべきだ」と話している。

 【etc・えとせとら】

「養育費受けたことない」67%

 厳しい雇用環境に加え、シングルマザーの生活を困難にしているのが、父親の養育費の不払いだ。

 2003年度の全国母子世帯等調査によると、「養育費を受けたことがない」が67%にのぼり、5年前の調査より7ポイント増えた。「受けたことがある」が15%で、「現在も受けている」は18%に過ぎなかった。1世帯の平均月額は4万4660円で、前回より8540円減少した。

 また、離婚する際に養育費の取り決めをしているのは3割だけ。していない理由として「相手に支払う意思や能力がないと思った」(48%)が一番多く、「相手とかかわりたくない」(21%)、「交渉をしたがまとまらなかった」(10%)などが続いた。

2007年2月14日  読売新聞)
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