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改正児童虐待防止法が成立…「もう死なせない」立ち入り接近禁止 相談所に強制力25日の参院本会議で、改正少年法などとともに可決・成立した改正児童虐待防止法。子供の虐待死が後を絶たず、児童相談所への批判が高まる中、難しいケースに対応するため、児童相談所の権限を大幅に強化する内容だ。改正法の施行は来年4月。新しい武器を手に、今度こそ、悲惨な事件を防げるようになるのだろうか。(社会部 渡辺亮、岩永直子) ◎ ■命の危険 「なんで来た!」 昨年、東京都内の児童相談所職員が立ち入り調査に踏み込むと、母親は激高し、職員が示した「立ち入り指示書」を破り捨てた。 中学入学後、登校しなくなった少年は、食事も満足に与えられていないとの情報があった。職員は10回近く家庭訪問を試みたが、窓に人影が映っているのに応答がない。現行法では、中から子供の悲鳴が聞こえるなど、命の危険が迫っていると判断できれば警察が踏み込むことも可能だが、表だった兆候がなければ強制措置を取ることは出来ない。そこで、児相職員が早朝から深夜までの張り込みを1週間続け、母親が買い物に出る時間を探った上で、ドアが開いたすきに立ち入り調査を行った。といっても、立ち入り指示書に強制力はないため、母親に玄関で抵抗され、その説得に1時間近くを要し、ようやく一時保護にこぎつけた。 2005年度に全国で実施された立ち入り調査は243件。その多くで、立ち入りまでに膨大な下調べの手間をかけている。最終的に親に拒否され、子供の安全を確認できなかったケースも少なくとも8件あった。今改正により、出頭要求や立ち入り調査に親が応じなかった場合、裁判所の令状を得て、児童相談所がカギを壊すなどの強制立ち入りを行えるようになる。 東京都児童相談センターの職員は「時間やエネルギーがかかっていた立ち入り調査がやりやすくなる」と歓迎する一方で、「令状を取るためにどれほどの証拠が必要なのか。手続きが厳密に過ぎると、命がかかる緊急ケースで使えない制度になる」と不安も漏らす。 ■つきまとい 改正法のもう一つの目玉は、虐待の危険を取り除くため、強制的に施設に入所させた子供につきまとう親に対し、罰則付きで接近禁止命令を出せるようにしたことだ。 こんなケースがあった。育児放棄(ネグレクト)されていた東京都内の小学男児について、児童相談所は家庭裁判所の承認を得た上で、児童養護施設に入所させた。ところが、居場所を知らせていないのに、母親は男児の新しい学校を突き止め、校門前で待ち伏せして連れ去ってしまった。その後、男児は遠く離れた駅に置き去りにされ、保護された。職員が一時保護所に連れ帰ったのもつかの間、施設の向かい側の建物に、男児に向かって手を振る母親の姿があった――。 現行法では、こうした親の行動を制限することはできず、児童相談所は、子供の居場所を変えて対応するしかない。職員は「規制強化で、親がちゅうちょしてくれればいいが、法律など気にかけない親も多いので、効果は未知数」と話す。 ■問われる実力 今改正で、児童相談所の権限は大幅に強化されるが、事態改善に直結すると期待する声ばかりではない。現状では、児童相談所によって取り組みの差が大きく、「結局は、関係機関との連携や工夫を重ねなければ、様々なケースには対応できない」との指摘もある。 昨年、神奈川県内の児童相談所が、心を病んだ母親が子供とともに、カギをかけて閉じこもった事例で立ち入り調査に踏み切った。親族を捜し当て、一緒に説得したものの、中から反応はない。最後は親族に玄関のチェーンを切ってもらい、調査を断行した。 性的虐待を加えていた子供を取り戻そうと、一時保護所に乗り込んでくる暴力団関係者について、弁護士や家裁調査官と協力して親権を喪失させた事例もある。一時保護した子供を親が連れ戻しにきた際、子供の「助けて」という訴えを重視し、法的裏付けのない面会制限をしたこともある。 これらのケースについて、同県中央児童相談所の小林秀次所長は「親から訴えられたら、どうなっていたかわからない」と、今回の法改正を歓迎する。その上で、「強力な武器を与えられるのだから、児童相談所は、もう下手な弁解はできない。新たな武器を効果的に使いこなせるよう、我々はこれまで以上に専門性を磨く努力が求められている」と自戒を込めて語った。 ◇ [改正の骨子] ▽児童虐待の恐れがある場合、保護者に出頭要求する制度の創設。 ▽保護者が出頭要求に応じない場合、裁判所の許可を得て、児童相談所が強制的な立ち入り調査を行う権限の付与。 ▽立ち入り調査を拒否した場合の罰金を「30万円以下」から「50万円以下」に引き上げる。 ▽裁判所の承認を得て強制的に施設入所させた子供に対する、つきまといなどを禁じる「接近禁止命令」の創設。 ▽重大な児童虐待事例の分析を、国や自治体の責務とする。 児童虐待防止法 2000年5月に議員立法で成立。児童虐待を、身体的・心理的暴力、わいせつ行為、育児放棄、虐待放置などと定義し、発見者の通告義務や、国や自治体の早期発見、予防、適切な保護を実施する責務を明記している。 (2007年5月26日 読売新聞)
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