元気なうちに探すついの住みか
5年で施設100か所訪問
「入ってもいいな、と思う老人ホームはあったんですが、頭金の額を聞いてあきらめました。だって7150万円ですよ」。マイクを握りしめた評論家の俵萠子さん(74)がそう話すと、会場に集まった約30人が「ひえー」と驚きの声をあげた。
10月初め、読売・日本テレビ文化センター恵比寿(東京)で開かれたのは、講座「子どもの世話にならずに死ぬ方法」。ひとりで暮らす俵さんが、自ら目指す生き方をそのままタイトルにした。講座では老人ホームの現状を独自の視点で語る。同名の本(中央公論新社)も今年出版した。
この5年間に訪ね歩いた高齢者施設は約100か所に上る。「介護が必要になった時、だれにオムツを替えてもらいたいかを考えたんです。娘や息子は気兼ねするから絶対イヤ。お金を出して他人にみてもらうのが一番気楽だと思いました」
大学卒業後、新聞社に入社した俵さんは26歳で結婚、2人の子どもをもうけた。34歳の時、作家デビューし独立。その後、42歳で離婚を経験した。執筆や講演の傍ら、55歳からは陶芸を始め、今は陶芸作家としても活動する。
そんな俵さんが「子どもの世話にならない生き方」を真剣に考え始めたのは2000年ごろ。弟夫婦と二世帯住宅で暮らす独り身の母親の体が弱り、介護が必要になったことがきっかけだった。
「長年嫌っていた嫁に対し、85歳を過ぎた母が気を使い、こびへつらうんです。その姿を見た時、涙があふれました」と俵さん。明治生まれの母は最後まで「養老院はいや」と世間体を気にして高齢者施設への入所を拒んだ。「ひとり暮らしはみじめで寂しく、息子夫婦と一緒の方がまだまし、という不幸な思いこみが母自身と家族みんなを苦しめた」。倒れてから7年後、母は92歳で亡くなった。
俵さん自身、息子から「将来はオレが面倒みてやるよ」と言われたことがある。「うれしいけど、善意だけで介護は出来ない。介護地獄に陥らないようついの住みかを探しておくべきです」
☆☆☆
高齢者施設行脚で見たものは家庭的なグループホームや高学歴者が集う大規模老人ホームなど多種多様だったが、「すぐ入りたい」場所はまだ見つかっていない。
一番のネックは伴侶である飼い犬の存在。ペット同伴で入所できる施設は極めて少ないという。「子どもに頼らず、自分の財産は使い切るつもりで居心地よく暮らせる場所を探したい。ひとりであっても、そんな生き方が出来れば幸せだと思うんです」
◇
ついの住みかとなりうる高齢者施設選びでは専門家からアドバイスを受けるのも有効な方法だ。「シニアライフ情報センター」(03・5350・8491)や「タムラプランニング&オペレーティング」(03・3292・1107)では会員制で相談などを受けている。
|















