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ペット

かりんくん 印象に残る、大切な思い出の猫


もう1匹の猫、ミヨシくんと、今は亡き、かりんくん(撮影:鈴木美也子)

まん丸お目目のハンサム猫(撮影:鈴木美也子)

東京大空襲をまぬがれた、レトロ感あふれる店内(撮影:鈴木美也子)

本物のレトロ空間で昭和初期にトリップ

 東京・墨田区にある、昔ながらの小さな商店街、その名も「鳩の街商店街」に着いたのは夕方すぎだった。夕飯の買い物をする人たちで賑わう細い通りは、子供の頃母親に手を引かれて買い物をした記憶の風景そのものだった。話題のスポットは無いけれど、懐かしくて、居心地のよい街。

 ここ、鳩の街通りをしばらく進むと、これまた古いつくりの木造のカフェがあった。ガラス戸からオレンジの温かい光が漏れている。客が何人かいるようだ。ブリキの看板には「こぐま」とあった。作りものではない、本物のレトロ空間がそこにはあった。

 「このあたりは東京大空襲を奇跡的にまぬがれた一角なんですよ。」タイムスリップでもしたようにキョロキョロする私と鈴木さんに、オーナー夫婦は笑いながら答えてくれた。この地域を気に入ったオーナー夫妻は、薬局だった建物をカフェに改造、2匹の猫を連れて、移り住んだのだということだった。改造したとはいっても、ほぼ手を加えておらず、ショーケースには昔の薬がオブジェのように飾られている。ガラスには以前の店名も残ったままだ。客席は、学校で使われる木の椅子にアンティークのテーブル。オーナーセレクトの本は読めるし、買える。「こぐま」は、芸術家でもある夫妻らしく、アートの香りがする、それでいて気負わず長居できる、素敵な空間に仕上がっていた。

 そして、夫妻の愛猫、かりんくんの存在。取材時、すでに18歳の老猫だったかりんくんだが、その顔立ちは子猫のように可愛らしかった。人が好きで、お店にいるのも大好き。ガラス戸のなかから外を覗く姿は、どの猫よりも可憐であった。「子猫のような顔をしているのは、歯が全部抜けてちょっぴり下ぶくれになっているから」とのこと。そんなところも、わたしの実家の老猫と重なり、さらに愛しくなってしまったのだった。

 さらに、かりんくんは、大きな目がとても印象的な猫だった。まっすぐにこちらを見つめる、人が大好きなんだ、とでも言っているような、表情のある目をしていた。撮影に協力してくれたあとは、大好きなオーナー夫婦に抱っこされてうれしそうだったのを憶えている。

 残念ながら、かりんくんは亡くなってしまったが、かりんくんなしには、本は完成しなかっただろうと思えるような猫だった。

 現在、「こぐま」には、かりんくんと仲のよかったミヨシくん(9歳)がいる。ミヨシくんはシャイなのでめったにお店には降りてこないので、行っても猫には会えないかもしれない。

 しかし、あんなに特別な猫がいた店だ。猫好きなら何か温かいものを感じるのではないかと思う。大好きなこの店を、私も久しぶりに訪ねてみようと思う。かりんくんの思い出話を楽しみにして。

    アート&カフェ こぐま
      場所 東京都墨田区東向島1-23-14
      TEL:03-3610-0675
2009年8月4日  読売新聞)
プロフィル
逸見チエコ  (へんみ・ちえこ)さん
ライター/イラストレーター/漫画家
猫好きが高じて猫カフェ本を制作。愛猫は茶トラの「うに」(16歳・女の子)。猫に話しかけられると泣いて喜ぶ。幼児誌、女性誌などでイラストから漫画まで幅広く執筆。最新著書は『猫カフェめぐり 旅情篇 〜あの猫(こ)に会いに旅しよう〜』(エンターブレイン)現在、『ねこのこ』(HK INTERNATIONAL VISION)にて、猫マンガ「モフ子がゆく!」連載中。8月発行予定同誌にて、写真家・関由香さんとのコラボ特集「鎌倉周辺猫散歩・本日はお日柄もよく」を執筆。
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2008年9月1日発売。逸見チエコ/編「猫カフェめぐり 旅情篇 〜あの猫に会いに旅しよう〜」
1,365円(税込み)
(エンターブレインムック)
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2008年2月2日発売。逸見チエコ/編「TOKYOカフェEXTRA 猫カフェめぐり-あの猫に会いにでかけよう-」
1,260円(税込み)
(エンターブレインムック)
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