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    シンポジウム

    リポート(1)基調講演 安らかに旅立つために、いま備えたい「力」とは

    • 「自分らしい終活のための 老後の備え10か条」について話す中澤まゆみさん
      「自分らしい終活のための 老後の備え10か条」について話す中澤まゆみさん

     12月に開催したシンポジウム「40代から考える 親と私の終活~『おひとりさま』も『家族持ち』も 今やっておきたいこと」の様子を4回にわたりリポートします。

     第1部、ノンフィクションライター・中澤まゆみさんの講演は、「老後の備え10か条」がテーマ。健康管理など日頃からできることも盛り込まれており、参加者からは「早速取り組みたい」という声が多く聞かれました。

    よりよく生きることこそ「終活」

     私は長年、女性問題やマイノリティー、移民の問題などに取り組んできましたが、今は医療と介護、“ジジババ”専門になっております。

     どうしてこういうことになったかといいますと、おひとりさまの友人が11年前、突然認知症になって、その介護が飛び込んできたというのがきっかけです。そして、介護をしていくなかで、やっぱり自分もジジババの仲間入りをするんだということにだんだん気がついてきまして、自分の老後のためにも本を書こうと思うようになりました。

     健康なときというのは、なかなか医療や介護のことを考えません。ところが、異変はある日突然やってきます。その時、「まったくわからない」ということに気付くんですね。認知症の場合はどこに検査にいったらいいのか、どんな制度や支援があるのか、身近な地域にはどんな医療サービスがあるのか……。わからないことだらけ。11年前の私もそのひとりでした。

     さて、「終活」というと普通は遺言を書いたり、自分の葬儀やお墓のことを事前に決めておいたり、そんなことをイメージすると思います。「自分が死んだあとに向けての活動」という感じですね。でも、そんなことより、「いい人生だった」と納得して旅立てるように、できるだけたっぷりと今を生きることなんじゃないかと思いました。それが“本当の終活”なんじゃないかと思うんです。

     ただ、そうするためにはやっぱりちょっとした準備が必要です。じゃあ具体的に「いい日、旅立ち」をするためには、どんな準備をしていったらいいのか。「10か条」をご紹介します。

    <1>健康は日々の備えから

     まずは当たり前のことですが、健康を保つことですね。その基本は、「自分の体を知る」ということです。週に1回でも血圧を測る日を決めてみてはどうでしょう。あとは体温と、それから体重。この3つを自分の一番体調がいいときに測ってみてください。表にしておくと、自分の平熱もわかるので便利ですよ。

     朝起きたとき、皆さん鏡をご覧になると思いますが、その時には目の下や舌の様子もチェックしてください。日常的に体調をチェックしておくことは、医者にかかるときにも大切です。日野原重明先生(聖路加国際病院名誉院長)は「患者が関わらないと医療の扉が開かない」とおっしゃっていますが、受け身の患者ではなく、自分の症状をきっちり説明できて、そしてお医者さんとコミュニケーションできる患者になることが大切だということです。どんな症状で、どんな既往症があるのか。普段飲んでいる薬はあるか。それらを患者さんが教えてくれれば、早く、的確に診断ができるそうです。

    <2>かかりつけ医をつくる

     日頃から自分の体の声に耳を傾ければ、体はちゃんと「おかしいぞ」と教えてくれます。そこで「変だな」と思ったら、かかりつけ医に相談するという流れを作りましょう。

     かかりつけ医は特に高齢期に入ると、とても大切になってきます。実はうちの母は3年前に認知症になりましたが、最初に見つけてくれたのがかかりつけ医でした。そして要介護認定を取るときや更新するときには、医師の「意見書」というのが必要です。かかりつけ医がいないと、普段の様子がわからず、ちゃんとした診断が出ないというおそれもあります。

     では、いったいどんなお医者さんがいいのか。1番目は、「遠くの大病院よりも近くの診療所」。遠くにいくらいいお医者さんがいても、やっぱり日常的に見てくれるお医者さんじゃないと、やっぱりまずいと思います。それから2番目、かかりつけ医は長年おつきあいをしますから、相性はとても大事です。なんでも気軽に話せることも大切ですね。

     また、分かりやすい言葉で説明してくれることや、新しい医療を勉強していることもポイントになると思います。私は自分よりも10歳ぐらい若いお医者さんを選びたいと考えています。そして、かかりつけ医と親しく話ができるようになったら、「先生、通院できなくなったら、往診をしていただけますか」「万一のときには、()取りをしていただけますか」などと聞いてみるのもいいでしょう。

    <3>介護保険のしくみを知っておく

     10か条の3番目は、介護保険の仕組みを知っておくことです。介護は本当に、ある日突然やってきます。制度については、まずは市区町村の役所の介護保険課や「地域包括支援センター」でパンフレットをもらってくるのがいいと思います。

    <4>行政のサービスを知って、使いこなす

     4番目は、行政のサービスを知って相談するという「クセ」を付けるといいと思います。「申請主義」といって、申請をしないとサービスを受けられないことが多いので、やっぱり知っておくということが必要ですね。情報源はいろいろあります。

    <5>遺言やリビングウィル(事前指示)を書いておく

     「私はお金がないから遺言なんて関係ない」という方もいらっしゃるかと思いますが、お金がなくても「物」があります。老いを感じ始めたら、自分の持ち物を整理していくようにしましょう。どんな終末期医療を受けたいか、その事前指示書も忘れないようにしてください。

    <6>緊急医療情報を用意する

     高齢者やおひとりさまにとって不安の一つは、やっぱり緊急時です。最近、あちこちの自治体で、「緊急医療情報キット」というものが導入されています。かかりつけ医や持病、診察券の写しなどをまとめておくもので、冷蔵庫に入れておき、救急隊が来たら取り出してもらうものです。また、血液型や手術歴、アレルギーの有無などを「緊急医療情報カード」にまとめておくのもいいと思います。

    <7>「 ( つい ) の住みか」を考える

     そして7番目。どこで長い老後を暮らして、どこで人生の最期を迎えたいのか――終の住みかについてもちょっと考えておいていただきたいと思います。今は「元気老人」でも、いずれは「病気老人」、それから「介護老人」というふうになっていきます。自分が介護されるときのことを、ちょっとイメージしてみてください。

    <8>在宅医療について学ぶ

     今、「医療」と「介護」の大改革が進んでいます。これまでは病院で亡くなる方が8割でしたが、入院できる期間はどんどん短くなっていて、「病院から在宅へ」「施設から自宅へ」という流れになっています。「ときどき入院、ほぼ在宅」という傾向も進んでいくでしょう。

     私は取材で、お医者さんや訪問看護師さんの往診に同行させてもらい、200近くのお宅にお邪魔しています。そのとき必ずドクターたちにお聞きしているのが「在宅一人死は可能でしょうか」ということ。そうすると、「可能ですよ。認知症はちょっとハードルが高いけれど」と答える方が多いです。実際、認知症の方を含め、おひとりさまの患者さんを何人も看取ったドクターもいます。

     今、在宅医療はずいぶん進んでいて、できないことは手術と先端医療ぐらいです。もし「自宅で死にたい」と考えている人がいらっしゃったら、在宅医療を味方につけることをぜひ覚えておいてほしいと思います。

    <9>成年後見制度を知っておく

     厚生労働省によると、認知症の方は約440万人と推計されています。高齢者が増えるのに合わせ、ますます増えていくと考えられています。家族や自分が認知症にならないとは限りません。そんなときのために、ぜひ知っておきたいのが「成年後見制度」です。こちらは第2部のシンポジウムで詳しく話します。

    <10>「自分力」「人もち力」「地域力」で、ケアのまちづくりを考える

     家族の力だけでは、介護を支えることは不可能です。そして公的なサービスも、だんだん十分ではなくなってくるでしょう。そうなると、やはり「自分らしい終活」のためには、地域ぐるみで医療・介護を考えることが大切です。地域のつながりですね。

     地域にはいろんな人たちがいます。そんな「人的資源」を見つけて、支えあうことがこれからとても大切になってくると思います。キーワードは「ちょっとずつのおせっかい」。みんながちょっとずつ、できることをする。高齢者になっても、社会資源としての高齢者になることを心掛けていってほしいと思います。

    一人の胸にしまわないで

     人間だれでも最期を迎えます。死なない人はいません。ですからちょっと考えておいてください。もし、認知症になったら、だれに自分を託すのか。そしてもし、病気や認知症になったらどこで死にたいのか。そして終末期を迎えたとしたら、どんなふうに死にたいのか。病気が治らないときに、どうしたいのか――こんなことについて、元気なうちに家族で話し合い、準備をしておいてください。自分だけで考えていても、周りの人に伝わらなければ実現できません。自分の胸だけにしまわないでくださいね。

     そして人生最大の終活は、「たっぷり生きて、安らかに旅立つこと」だと思います。今は超高齢社会、これから超超高齢社会になっていきます。その時に、今の医療保険や介護保険を、子どもたちの世代、それから孫たちの世代につなげていけるかどうか。問われているのは私たち自身です。

    2016年01月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun


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