文字サイズ
    年間で一番心に残ったトピックを、読者投票を基に、大手小町編集部が選びます。
    シンポジウム

    リポート(2)シンポジウム ある日、介護は突然に…

     第2部では、ノンフィクションライター・中澤まゆみさん、タレント・壇蜜さん、フリーアナウンサー・町亞聖さん、司法書士・村山澄江さんが、「お金」「健康」「孤独」など、老後の不安要素となる問題への備えについて話し合いました。

     まずは、介護が必要になったときのために、日頃から用意すべきことなどを紹介します。

    「自分だけは大丈夫」「家族だけはありえない」

    司会・鈴木美潮(読売新聞メディア局編集委員、以下鈴木) 「終活」というと葬儀の仕方や遺言などが頭に浮かびますが、まずは介護が必要になるケースがほとんどだと思います。町さんは高校3年生のときにお母様が倒れ、それから10年間介護したということですが、いろいろ大変だったのではありませんか?

    町亞聖さん(以下町) 母がくも膜下出血で倒れたのはまだ40歳のとき、私は18歳、弟が中学3年生、妹は小学6年生でした。当時は「まさか」と思いましたが、今やがんも認知症も、ほとんどの人が直面する病気。「自分だけは大丈夫」「家族だけはありえない」ということはありません。介護が始まったら、そこから「新たな人生をスタートさせる」といったつもりで、前向きに捉えてほしいと思います。

     当時は介護保険もまだなく、体験者が介護を語ることさえまだ「タブー」。家族が介護するのが当たり前で、「高校生の私が介護する」という選択肢しかありませんでした。

    終わりが見えない介護は、長く続けていかなければなりませんが、そのために大切なことは、まず「現実を受け入れる」ということだと思います。私が泣いたり悲しんだりして母が倒れる前に戻るなら、たくさん泣けばいいと思いますが、泣いても叫んでも変わらないなら、ありのままを受け入れるしかありません。10代ということもあって、柔軟性があったし、「こうしなければ」というお手本がなかったことで、逆に試行錯誤しながらできたように思います。

     あと、その頃の考え方で役に立っているのは、「できなくなったことではなくて、母のできることを数えよう」ということ。右手が動かないなら左手がある。言葉が話せないなら言語以外で何とかコミュニケーションを取ればいい。

     一番大変だったのは、やっぱり相談する相手がいなかったことです。10代、20代では、「気持ち分かるよ」って言われても、「分かるわけないだろ!」ってなりますよね。同じ悩みを抱えている人と、自分が苦しんでいることをぜひ共有してください。

     もし家族に介護が必要ということになったら、介護保険を使えばいいと思います。高い保険料を払っています。いま介護保険料は5000円から8000円ですけれども、まもなく1万円くらいになるでしょう。上手に使って精神的な負担のないようにしてください。

     母はその後がんになり、最期は在宅で看取(みと)りました。体にはいろんな管が付いていて、「こんな状況で生きていてもしょうがないんじゃないか」と思われるような状況でしたが、母は最期まで「感謝だわ」という言葉を繰り返して、一生懸命生きました。「無駄な延命治療」というようなことも言われますが、「それでも必要な措置はある」ということを私は母の介護で学びました。諦めず、最期まで生ききることが大事なのかなと思っています。

    介護は“チーム”で

    鈴木 町さんのお話を聞くと、介護は本当に人ごとではなくて、自分の身にいつふりかかってきてもおかしくないことなのだと思いますね。誰かを介護することになるかもしれないし、もしかしたら自分自身が介護をされる側になるかもしれません。今日は私も含め全員「おひとりさま」ですが、皆さんは親の介護や自分の介護について、心配に思うことや備えていることなどはありますか。

    壇蜜さん(以下壇蜜) 私はこれまで身近な人で介護が必要になるということがほとんどなく、親を看取るということについても、今はお金のことしか考えられません。ただ、もしパートナーがいたとしても、そのパートナーとうまくやっていけるかなんて誰も分かりませんよね。「そろそろ誰かいい人」なんて周りは言いますけど、見つけたときと今とで、何かが変わるように思えないんです。だから一人でも別に「焦り」や「不安」のようなものを感じないのかもしれません。「あっちもこっちも保証しよう」「用意しよう」とか思うことが、逆に不安を生んでしまうのかなと思います。

    村山澄江さん(以下村山) 30歳になったとき「ねんきん定期便」が届き、開けてびっくりしたんです。私は「成年後見人」の仕事を何件か受けているのですが、今、年金をもらっている皆さんと比べると全然額が違うんです。そこで保険を見直しました。あと最近、親が還暦を過ぎたので、なるべく顔を見せるよう心がけています。

    中澤まゆみさん(以下中澤) 私は11年前に突然、友人の介護が飛び込んできました。「自宅にいたい」と言ったので、8年間は在宅で、3年前からグループホームに入っています。ちょうど同じ3年前、母親が認知症になりましたが、このときは全然あわてなかったんですよね。その理由を考えてみると、やはり10年近い介護生活があったからかなと思います。子育てでも「2人目は楽だ」と言いますよね。

     一番大切なのは「一人で介護しない」ということです。医療、介護はそれぞれのプロを味方に付けて、そして友人や近所の人なども含めて“チーム”を作っていきましょう。それができれば、おひとりさまでも、かなり最期のほうまで自宅に住むということが夢じゃないと思います。

    鈴木 「2人目はラク」というお話ですが、いろいろな知識をすでに持っているということも大きいのかなと思います。介護サービスや行政相談など、今から知っておくべきことはありますか?

    中澤 まずは何といっても「介護保険」。どんな制度で、どうやったらサービスを利用できるのか、その流れなどを押さえておきましょう。もう一つ、親の介護については「親のことを知る」ということも必要だと思います。年金や貯金などの状況だけではなく、どんな趣味を持っているか、地元で誰と付き合っているのか――そんなことについて情報収集することも必要です。

     遠距離の場合は特に、日頃から見守りを頼める人と顔つなぎしておかなければなりませんし、自治体ごとに制度も異なる場合があるので、地元の介護制度を調べておくことも欠かせません。今はインターネットですぐ調べられますので、ぜひそんなことから始めてみてください。

    語って輪を広げよう

     私の母には、介護をしてくれる「私」という存在がいましたが、私はおひとりさまなので介護は切実な問題です。中澤さんがお友だちの介護をされたように、良い医療者、介護者に出会いたいなと思っています。きょうは良い司法書士さんとも出会えてうれしいのですが、やはり人のつながりですよね。

     先ほども「相談できる人がいなかった」と話しましたが、ぜひ介護体験をどんどん語ってください。語ると輪が広がります。私の場合も、母を介護していたと知った上司がいきなり「私も実はね……」と話してきたりしました。働きながらの介護で困ったことがあったら、少し勇気を出して声を上げていくと、会社の制度が良くなることもあると思います。

    鈴木 決して特殊なことではないから、体験者が語り出すと意外なネットワークができて、そこから知恵も生まれてくるということがあるんでしょうね、中澤さん。

    中澤 ありますね。一人きりだと思わず、悩みを分かち合うことが必要ですね。ぜひ覚えておいてほしいです。

    2016年01月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun


    くらげっとのつぶやき
    発言小町ランキング
    アーカイブ