文字サイズ
    年間で一番心に残ったトピックを、読者投票を基に、大手小町編集部が選びます。
    シンポジウム

    リポート(3)シンポジウム 自分らしい最期への備え

     遺言や成年後見などは、「終活」でぜひ知っておきたい制度。「難しそう」と敬遠しがちですが、シンポジウムではまず押さえるべきポイントを整理して話し合いました。

    「遺影」選びを終活のきっかけに

    司会・鈴木美潮(読売新聞メディア局編集委員、以下鈴木) ここからは、元気なうちにいろいろと準備しておくことについて話したいと思います。壇密さんは遺影に使う写真を用意しているそうですね。

    壇蜜さん(タレント、以下壇蜜) 志半ばで倒れたときのためです。ペットの猫と一緒に写っているものなど、何枚か用意しています。実は、葬儀のお仕事をしていた頃、遺影がなくてご遺族が慌てているのを見たことがあるんです。男の人は特に写真を撮られないので、最終的には免許証の写真を引き伸ばしたこともありました。

    町亞聖さん(フリーアナウンサー、以下町) 病気の家族とは、なかなか「死」について話すことができませんが、「遺影どうする?」という話は、「死」をタブーにしない、いいきっかけかもしれないですね。

     私が母を看取(みと)ったとき、「また来年」「また今度」という言葉が言えませんでした。「あ、来年はもういないかも……」と思って、口にできなかったのです。一緒に出かけた楽しかった思い出は、写真を見ると泣いてしまうのが分かっていたので、何となく当たり障りのない会話ばかりになっていましたが、でも写真を見ながら振り返ればよかった。先に逝く人が悔いがないようにしなければいけなかったと後悔しています。アルバムを見ながら、「ああ、これいい笑顔じゃない。遺影にしたら?」なんて話すのもいいかなと思います。

    遺言と事前指示

    • 村山澄江さん
      村山澄江さん

    鈴木 生前の準備では、「遺言」もありますね。

    村山澄江さん(司法書士、以下村山) 遺言書の種類は大まかに2種類あります。一つ目は「自筆証書遺言」で、もう一つは「公正証書遺言」。どちらがいいですかと聞かれたら、私はだいたい「公正証書」をおすすめしています。自筆証書遺言はタンスなどにしまっておいて誰にも発見されなかったり、開けてみたら形式が整っていなくて無効になってしまったりというケースも多々あるからです。

     公正証書の場合、公証役場に原本が保管されるので、たとえ本人がなくしてしまっても「おじいちゃんが作ったはずなんですけど捜してもらえませんか」と言えば捜してもらえるというメリットもあります。

     遺言書の作成を何人もお手伝いさせてもらっていますが、「遺言を作っておいたほうがいい人」の代表的な例としては、まず「子どものいない人」です。あとは「遠くの親戚よりも、近くのお世話になった人に残せるものを残したいという人」。公証役場のホームページなどによると、手数料の目安は「目的財産の価額」が100万円までの場合は手数料5000円、1000万円までで1万7000円などとなっています。

     遺言を作るときには、ぜひお手紙を入れてください。遺言書には「財産を誰々にあげる」など書くことが決まっていて、効力のあること法律で決まっています。でもそれ以外のことを書くのも自由です。「私はこんな気持ちで遺言を書いている。誰々にはお世話になったからこういうものをあげたいし、誰々にはこういうものを。そして絶対にケンカしてほしくない」などと、家族への思いを添えるといいと思います。読んでいて、感動のあまり泣いてしまった遺言もあります。

    鈴木 おひとりさまでも書いておいた方がいいですか。

    村山 おひとりさまといっても、本当に一人の場合と、遠くに親戚がいる場合があります。もしどこかに寄付したいという場合は書いておいたほういいです。

     遺言は経済的なものについてですが、医療的ことについて明記しておく「事前指示」というものもあります。「尊厳死」とか「延命治療」という言葉は耳にしたことがあると思いますが、「延命治療はしてほしくない」「胃ろうはいやだ」などと考えている人は、書いておくことも検討してみてください。

     ただ、母の場合を振り返ってみても、体の状態はどんどん変わり、そのときに必要な医療行為も変わっていきました。医療は進歩しているので、「病気を治す方法はない」となっても、患者の生活レベルを維持したり、ケアしたりという点でできることはたくさんあります。「すべていらない」という選択は、ちょっと先走りすぎかなと思いますね。何でも相談できる「かかりつけ医」を見つけておくのが大事です。

    中澤まゆみさん(ノンフィクションライター、以下中澤) やはり家族間で話しておくのが大切ですね。離れて住んでいる人などは特に、お正月やお盆など、実家に戻ったときにアルバムでも見ながら話してみるのもいいと思います。

    鈴木 イベントの参加申し込みの際に、「万一のときにどうしたいか、夫の両親に聞きたいが、嫁の立場から聞くのは避けたほうがいいか」という質問が寄せられていますが……。

    中澤 義理のお母さんとの関係性があると思いますが、いろいろ話ができるなら話せばいいし……なかなか一概には言えないですね。まずは息子である旦那さまから話してもらいましょうか。

    壇蜜 あとは孫という手もあります。うちの祖母は私の言うことなら聞きます。

    一同 それはいいですね。

    成年後見制度を知ろう

    • 町亞聖さん
      町亞聖さん

    鈴木 さて、認知症などで正しい判断ができなくなったときに活用したいのが「成年後見制度」です。

    村山 「成年後見制度」も2種類あり、一つ目が「法定後見」、二つ目は「任意後見」です。法定後見は判断能力がすでに落ちてしまっている人が使う制度で、例えば「認知症になってしまった人」です。後見人は裁判所が選びます。

     もう一つの「任意後見」が、いわゆる「おひとりさま」に向いている制度で、「判断能力が落ちてしまったとき、いざとなったらお願いしますね」と契約するものです。私も何人かと契約していますが、何度も面談を重ね、半年くらいかけて契約したこともあります。

     法定後見を使うときは「後見人を早く立てないとお金がおろせなくて大変だ!」となっても、申し立てから家庭裁判所での調査など、実行できるまでにはだいたい2か月くらいかかってしまいます。

     任意後見の場合は契約ですが、事前に契約していた人が「悪い人」で着服されたりすることがないよう、財産管理が始まるときには後見人を監督する「任意後見監督人」を裁判所で選びます。

    壇蜜 質問です。「でも、お高いんでしょ?」……皆さん費用が気になっていると思います。

    村山 法定後見のほうは、まず裁判所に申し立てをする際、切手や収入印紙などが必要なので、だいたい実費で1万円くらいです。あとは後見人への報酬が発生する場合があります。

    壇蜜 あと「後見人って誰がやっているの?」という点もナゾです。

    村山 私のように法律の専門家がやるケースと、あとは家族がやるケースもあります。専門職が付いた場合は必ず報酬が発生すると考えてください。裁判所のホームページにも出ていますが、ベースは「月2万円」で1年後の後払いです。後見人は入退院などの財産管理をした後で裁判所に報告書を提出し、そこでようやく報酬額が決まります。

    鈴木 成年後見制度についても質問があります。「独身で今後結婚することもないと思います。きょうだいも独身なので(おい)(めい)もいません。後見人はどこで探せばよいでしょうか」ということです。

    村山 任意の場合は、まず地域の「包括支援センター」で詳しく教えてもらえます。

    中澤 あと社会福祉協議会の「成年後見センター」もあります。そこで紹介してもらったり、弁護士、司法書士、社会福祉士の協会に相談したりするのもよいでしょう。無料相談も開かれているので、それを利用するのもいいと思います。

     後見人になれるのは、どんな資格があるのですか?

    村山 資格はいりません。家族でもできます。ただ、裁判所が選ぶ場合は専門職の名簿の中から選ばれます。

     成年後見人になるということは、認知症のその人に一生寄り添うということだと思います。ただ財産の手続きをすればいいというわけではないですよね。

    鈴木 任意後見の契約は60歳くらいでするという人が多いそうですが、そんなふうに親身になってくれる人かどうか、見極める目もある元気なうちに契約しなければなりませんね。

    村山 そうです。契約は複雑で、例えば「財布の管理をするときは月3万円」などという日常的な内容のほか、「倒れたときに緊急で駆けつけたら日当が発生します」などと一つずつ具体的に決めていくのです。それを一緒に進める「力」が必要です。

    中澤 社会福祉協議会には、通帳を預かってくれたり、手続きを手伝ってくれたりする「日常生活自立支援事業」もあります。いろいろな方法があるので、制度を知って使いこなすことが必要になりますね。

    鈴木 公証役場も社会福祉協議会も普段あまり認識していないので、ちょっと垣根が高い感じもしますね……。

    中澤 市報や区報などはいい情報源です。チェックする癖をつけてください。

     区報は捨てがちですね。「まだ関係ないわ」って。

    鈴木 スーパーのチラシだけじゃなくて、そういうのもちゃんと見ないといけませんね。

    2016年01月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun


    くらげっとのつぶやき
    発言小町ランキング
    アーカイブ