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    発言小町で話題になっている事柄を、専門家らの意見も交えながら掘り下げます。
    小町の法律相談

    Q.「1家族1個まで」ルールを破って「家族全員」で購入…法的には?

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     「身近に経験したことで、たいしたことじゃないけど法律的にはどうなのかな?って思ったことはよくありませんか?」。そんな質問が「発言小町」の法律相談に寄せられました。トピ主が「どうなのかな?」と思っているのは、次の二つです。

    ◎ケース1)無料券の有効期限

     有効期限のない「コーヒー一杯無料券」を使おうとしたら「かなり古いので無効です」と言われてしまったそうです。「期限が書いていない場合は、お店側が『今日から使えません』と宣言すれば自動的に無効になるのでしょうか?」と質問。

    ◎ケース2)「お一家族1個かぎり」だけど家族みんなで購入

     特売品コーナーに「お一家族1個かぎり」という掲示。「精算の前にダンナや子どもに千円ずつ渡し『今だけ、私たち他人ね』と言って別々にレジを通して、複数個ゲットなんてしたことはありませんか?」とトピ主は聞きます。そんな場合「厳密に言うと詐欺罪など法に触れるのでしょうか?」と気になっています。

     このトピ主さんの質問について、大橋賢也弁護士に聞きました。

    トピはこちら⇒「身近なシチュエーションですが、法律的にはどうなのでしょう?

    A.ケース1)「期限が書かれていない場合、5年で消滅時効になると思われる」

     本件は、期限が明記されていない「コーヒー一杯無料券」はいつまでも使用できるのかという問題です。「コーヒー一杯無料券」を法律的に見てみると、「無記名債権」といえると思います。

     無記名債権とは、証券上に債権者名を表示しないで、債権の成立・存続・行使などに原則として証券の存在を要件とする債権のことをいいます。たとえば、商品券、入場券、乗車券などによってあらわされる債権があげられます。

     では、無記名債権は、いつまでも権利行使できるのでしょうか? 

     民法は、無記名債権を「動産」(不動産以外の財産のこと)とみなしています(86条3項)。そして、動産所有権は、消滅時効(一定の期間の経過によって権利が消滅してしまう制度)にはかからないことから、無記名債権にも消滅時効は考えられないようにも思われます。

     しかし、学説上は、無記名債権の消滅時効については、「債権の規定にしたがい消滅時効を認めるべきで、『動産所有権は消滅時効にかからない』とする理論によるべきではない」と考える見解が有力のようです。

     したがって、期限が書かれていない「コーヒー一杯無料券」は、商法522条により、5年で消滅時効になると思われます。

     本件でも、お店が「今日から使えません」と宣言すれば、自動的に無効になるわけではなく、「コーヒー一杯無料券」を発行してから5年が経過すると消滅時効にかかるので、その時点で店から「使えません」と言われれば、使えなくなるということです。

     もっとも、その店が、従来から、5年よりも短い期限内に限って使える「コーヒー一杯無料券」を配布していたという事情があれば、仮に期限が書かれていなかったとしても、5年以内でも使えなくなることもあると思います。

    A.ケース2)「正当な代金を支払っても『詐欺罪』が成立する」

     これを法律的に言い直すと、「詐欺罪の成立に、財産上の損害という要件が必要か」という問題になります。一般的な感覚としては、「正当な代金を支払っているのだから、詐欺罪は成立しない」と考える方がしっくりくるのではないでしょうか。

     しかし、判例や学説は、詐欺罪があくまでも財産犯である以上、被害者に財産上の損害が生じたことを要するとしつつも、財物や財産上の利益の交付自体が損害であると解しています。真実を告知すれば相手方が財物を交付しないとみられる場合につき、財物の価値に相当する対価を提供しても詐欺罪が成立するとした最高裁の決定があります(昭和34年9月28日)。

     本件において、店が、なぜ「一家族1個限り」として特売品を売っていたのかを考えてみると、それは、できるだけ多くの人に商品を購入してもらい、今後の売り上げ増加に期待していたからではないかと思われます。

     それにもかかわらず、ある家族に属する数人が、別の家族であるように装って特売品を購入してしまうと、店の意図に反することになってしまいます。

     つまり、店としては、同じ家族の人たちが、別の家族であると装って特売品を購入しようとしていることを知ったら、販売を断るでしょう。客もそのことを認識した上で、別家族を装っているわけですから、本件では、正当な代金を支払っても、特売品を交付した店には財産上の損害が発生しており、「詐欺罪」が成立するものと考えます。

    【取材協力弁護士】

    大橋(おおはし)賢也(けんや)弁護士

    神奈川県立湘南高校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。

    一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン(フルマラソン等多数完走)。

    事務所名:川崎エスト法律事務所


    ※この記事は法律相談サイト「弁護士ドットコム」とのタイアップ企画です。大手小町の掲示板「発言小町」に寄せられた相談に弁護士が回答します。相談はこちらからお寄せください。

     

    2017年02月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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