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    発言小町を基に、少子化ジャーナリスト・白河桃子さんが社会現象などを分析します。

    前例なきアイドル道を行くSMAPとファンのパワー

    • 署名サイト「change.org」から。5人での活動継続を呼びかけている
      署名サイト「change.org」から。5人での活動継続を呼びかけている

     月曜の夜、スマスマ(SMAP×SMAP、フジテレビ)はご覧になりましたか? 解散騒動後、本人たちがコメントするのは初めて。しかも5人そろっての緊急生放送ということで、最高視聴率は37.2%だったそうです。「紅白か?」という数字ですね。

    か弱いファンに“力”を与えたのは…

     解散騒動が起きた日から連日、新聞もテレビもSMAP一色でした。スポーツ紙はスポーツの結果そっちのけで1面で扱い、売り上げもアップしたとか。一般紙もNHKも“通常のニュース”として報道し、海外でも大きく取り上げられていました。

     皮肉なことに、こういった事態になったことでSMAPは別格であり、特別な存在なのだと、日本全体、ファンではない人にまで強く印象づけることになりました。

     メンバー同士の関係、事務所の“圧力”……臆測が入り乱れた情報がメディアに氾濫していますが、ひとつだけ確かなのは、今、ファンのソーシャルパワーが無視できない存在になってきたことです。

     解散騒動が起こってすぐ、ネットでは、SMAPの人気曲「世界に一つだけの花」(2003年、約260万枚)を買い、トリプルミリオンを達成しようという運動が拡散されました。CDショップやアマゾンでは、SMAPのほかのCDシングルやDVDも売り切れ、売り上げランキングの上位にSMAPの曲が並び、ファンの購買力を見せつけました。

     署名サイト「change.org」でも解散に反対する署名運動「SMAP STAY! どうか届きますように…」が始まり、あっという間に1万人以上が署名。15日には1万3000人以上の署名を事務所に届け、今も2万5000人に迫る勢いで続いています。この署名サイト、普段は児童扶養手当増額キャンペーンなど、社会問題、政治問題で活用されることが多いところです。こんな使い方もあったのだと驚きました。

     ツイッターでも、さまざまな応援ハッシュタグが立ち上がり、ラジオやテレビの音楽番組へのリクエストの仕方、スポンサー企業への働きかけ方などのノウハウも共有されていました。

     ファンがインターネットの力を使い、団結し、モノを言うようになったのですね。

     ファンはかつて弱い存在でした。どんなに好きなアイドルでも、どんなに愛とお金と時間をつぎ込んでも、彼らとて生身の人間。恋愛したり、結婚したり、思わぬスキャンダルを起こすこともある。

     また、分裂や解散、引退など、ファンの手の届かない「オトナの事情」で、突然ファンの前から姿を消すこともある。東方神起の分裂のときも、「信じて待つ」と言いながら、引き裂かれていく大好きなグループをみているしかなかったファンたちの悔しい思いがありました。

     しかし今回は違います。「もの言う株主」が出現したように、「もの言うファン」がパワーを発揮したのです。ファンは団結し、CDを買い支え、署名をし、またそれがネタとなってマスコミに取り上げられることで、広くSMAPの影響力のすごさを見せつけました。ファンが弱い存在ではなくなったのは、ツイッター、署名サイトなどのインフラがそろっている時代だからこそなのですね。 スマスマの直後、ツイッターなどがダウンしていました。まさにファンのパワーでしょう。

    女たちはライバルを応援しつつも「つながる」

     驚いたのはSMAPファンだけでなく、ほかのジャニーズグループを応援するファンたちの結束力です。「#kinkiファンでも出来ること」「#TOKIOファンでも出来ること」「#嵐ファンでも出来ること」などなど、別グループのファンたちもハッシュタグをつけてツイッターに投稿。リクエストに協力するなど自分たちでできることをつぶやき始めました。ジャニーズファンの輪がSMAPを応援したのです。

     これも興味深い現象です。私は大学で「男子アイドル文化論」を講義することがあるのですが、中央大学の講義では「男性アイドルファンと女性アイドルファンの違い」について調べました。

     男性はファン同士でも競い合います。「AKB総選挙」などがいい例ですが、ごひいきのタレントをもり立てるための競争に躍起になるのに対し、女性たちは共感してつながるのです。ライバルでもある他グループのファン同士がつながって応援するというのも、まさに女性ファンらしい行動だと思いました。

    ファンには“予感”があった

     思えば彼女たちは鋭かった。ファンに聞くと、口々に昨年からの「異変」を教えてくれました。

     昨年、大みそかの音楽番組「CDTV」(TBS)の生放送ライブでは、観覧の客をフロアに呼び込み、メンバーがもみくちゃにされるという出来事があり、それはありえない大サービスだったといいます。

     さらに東京・赤坂のTBS前では毎年、期間限定でSMAPグッズの専門ショップ「SMAP SHOP」が設けられるのですが、昨年の大みそかには中居正広さんが現れたそうです。しかもめったにないことに、木村拓哉さんと一緒だったとか!

     長い間SMAPを応援する彼女たちにとっては、この「過剰ともいえるファンサービス」はただ喜ばしいだけではなく、「天変地異の前触れ?」「なにかすごいことが起きるのでは?」と(うわさ)される重大事だったそうです。そして、その“予感”は現実のものとなってしまった……。ファンはすでに感じていたのですね。

    「たったの50年一緒に」

     さて、今回の騒動でSMAPは、他の芸能人とは違う“格上感”を見せつけることになりました。同じ芸能人の言葉がそれを裏付けています。

     笑福亭鶴瓶さんは、テレビの番組で「SMAPは日本のエンターテインメントの特別ですよ。SMAPはSMAPだけのものじゃないという自覚を本当に持つべきやなと思います」と話しました。古舘伊知郎さんは報道番組で「SMAPはインフラ」と述べました。

     SMAPは今年25周年を迎えます。長くトップの座を守り続け、前例なきアイドル道をいくSMAP。多くの日本人にとって、彼らがいる光景は、あまりに長い間共有されてきた「国民の記憶」です。

     生身の人間である彼らにとって、コラムニスト・中森明夫さんが表現したように、「自分たちだけのものではない」「解散すら自分たちの一存では決められない」存在になることは、大変なことです。しかし、それを乗り切ってきたからこそ、SMAPはSMAPなのでしょう。それができたからこそのモンスターグループです。

     「永遠なんて言わないからさ…たったの50年一緒に」。これは前述のCDTVライブで歌われた曲「STAY」の歌詞で、ファンには人気のアルバム収録曲です。そんなファンの願いが、ひとまずは届いたことを心から喜びたいと思います。

    2016年01月20日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    白河桃子 (しらかわ・とうこ
     少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。「一億総活躍国民会議」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。婚活ブームを起こした「婚活時代」(山田昌弘共著)は19万部のヒットとなり、流行語大賞に2年連続ノミネート。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「専業主夫になりたい男たち」(ポプラ新書)。公式ブログ:http://ameblo.jp/touko-shirakawa ツイッター:@shirakawatouko
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