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    発言小町を基に、少子化ジャーナリスト・白河桃子さんが社会現象などを分析します。

    夫がアイドルにはまった。その時妻は…

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     たいへんな本を見つけてしまいました。「50代からのアイドル入門」(本の雑誌社)。

     出版社の内容紹介によると、「50歳をすぎたある日、突如『ハロプロ』にハマってしまったSF評論家・翻訳家の大森望さんが書き上げた、実用的アイドル入門書」ということなのですが……。

     男性アイドルにはまる女性たちについては、こちらのコラムでもさんざん書いてきましたが、逆サイドについては取材してこなかったので、たいへん興味深いです。

     親切な本で、「いい年の男性がアイドルにはまるまでのハードル」を丁寧に解説。そしてクリアできるようになっています。ハードルとは例えば「ライブのチケットはどこで買うのか」「コンサートには何を持っていくべきか」「コンサート会場で守るべき作法」など。そして「家族や周囲から理解を得るにはどうしたらいいのか」ということです。

    妻や彼女が夫や彼氏の「アイドル好き」に過敏になるワケは?

     この「家族の理解」というのは、ほとんどの場合、妻の理解ですよね。読み進めると、「発言小町などで、夫 アイドル、離婚、などで検索すると、妻たちからの拒絶反応、はては離婚を切り出されるなどの悲劇的なケースが出てくる」とありました。

     そこで早速検索してみました。

     「アイドルにはまったら妻から離婚を言い渡され……」というような、そのものズバリのものはうまくヒットしなかったのですが、女性たちから「アイドルにはまった彼氏を受け入れるべきか」「お見合いした40代の男性はアイドルが趣味で月に何十万円もつぎ込んでいる。お断りすべきか」というような、女性からのトピが次々に見つかりました。

     ひとつを拾ってみました。「アイドル好きな彼氏」というトピです。

     「彼氏が最近、アイドルのファンになりました」。出だしから不安なものがよぎります。「趣味の範囲だと割り切ろうと思いましたが、以前、私の好きなアーティストが異性のグループだったとき、彼にその話やライブの話を聞くのはいい気がしないと言われ、元々そこまでハマっていたわけではなかったので、控えるようになりました」とのこと。

     彼の様子といえば「画像を集めたり動画をみたり、楽曲が好きでハマったなどではなく完全に見た目、異性としてハマっているとしか思えない」そうです。割り切れないトピ主さまですが、「努力して受け入れられるものなのでしょうか」と尋ねています。

     レスを見ると、「別れたら」「気持ち悪い」という拒絶反応から、「所詮(しょせん)アイドルは遠い世界の人なんだから」などと、理解を示すものもありました。

     気になったのは次のレス。「アイドルをいくら好きになっても、普通に手が届かない非現実な存在です。一方、恋人はそばにいる実際な存在です」

     まったく、その通りなんですね。女性は結構このあたりを割り切って、現実と非現実の線引きをうまくした上で、「アイドル好き」をやっている人が多い。多くの「男性アイドルオタ」女性の家庭が崩壊しないのはそのせいでしょう。

     しかし、妻や彼女が夫や彼氏の「アイドル好き」には過敏になってしまう。それはなぜか? 「『現実』を浸食されると怒りを感じる」――というポイントがあるようです。

    夫のアイドル好きは、どんな現実に影響するの?

     そもそも、こっそりやればいいのに、「夫のアイドルオタク」はなぜバレてしまうのでしょうか。それは多くの家庭、特に専業主婦家庭の場合、妻が家計管理をしているからですね。だから、夫の金遣いが荒くなるとすぐにわかる。使い道もバレる。そしてそれは「家計」という「現実」を浸食するものです。

     一方、夫は妻にそこまで関心を持っていない……というか、会社に大部分の時間を(ささ)げているので、妻が自分のいない間に何をしているのか知らないということが多いようです。だから妻がアイドルにはまっていても、自分のお小遣いに影響が出なければ、我関せず。夫が知ったら後でびっくりという話も聞いたことがあります。

     現実と非現実の折り合いをとりながら、アイドルを癒やしやパワーの源としてうまく利用している。大人のアイドル好きとしては、女性たちのほうが一日の長があるのかもしれません。

    大人のアイドル道…メリットもデメリットもある

     冒頭に紹介した大森さんの著書によって、50代から「アイドル道」に入門してくる夫たちが増えるとどうなるのか?

     本では、効果として「うつが治った人もいる」と紹介されていました。男50代は(つら)い時期。まだまだ家のローンもあれば、子どもの教育費もかかる。稼ぎを求められる一方、仕事人生としてはそろそろ先が見えてきている。つまり「上に行く人」と「そうでない人」がはっきりし始めます。常に競争のただ中にあった男性にとって、「競争から下りる」時期でもあります。

     また、男性更年期の問題もあります。

     そんな中、「アイドル」という存在が自分の人生にキラーンと舞い降りてきてくれる。これはハマらない方が無理というものかもしれません。

     一方、逆の効果として、入門したばかりの“初心者”である夫たちが、家計や教育資金にまで影響を及ぼすほど、ハマってしまう恐れもあるようです。これは妻側から、かなりの攻撃がくるかもしれない。

     ネットで検索すると小町以外でも、「夫 アイドル 離婚」はたくさんのページが表示されます。「新婚なのに……」という人もいて、これはちょっと辛そう。大人のアイドル好きは、「もう男女のトキメキはないけれど、家族として仲良し」という日本的夫婦関係、そして暗黙の了解のもとに成立するものだとすると――海外なら、こんなふうになったら「即、離婚」ですが――新婚ホヤホヤの妻からしたら、イヤでしょうね。

     子どもが巣立ったあとなら、妻も夫も互いにアイドル好きな夫婦は、結構、円満にいきそうです。

     さまざまなメリット、デメリットあるようですが、さて、みなさま、「50代からのアイドル入門」いかがですか?

    2016年09月28日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    白河桃子 (しらかわ・とうこ
     少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。「一億総活躍国民会議」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。婚活ブームを起こした「婚活時代」(山田昌弘共著)は19万部のヒットとなり、流行語大賞に2年連続ノミネート。著書に「妊活バイブル」(講談社新書)「女子と就活」(中公新書ラクレ)「産むと働くの教科書」(講談社)「格付けしあう女たち」「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「専業主夫になりたい男たち」(ポプラ新書)。公式ブログ:http://ameblo.jp/touko-shirakawa ツイッター:@shirakawatouko


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