文字サイズ

    脳に「男女差」 研修で学ぶ

    意思疎通のヒントに

    • 男女の脳に関する講座は、受講者から「切り口が面白い」「互いを理解する手がかりがいっぱい」と好評だった(東京都内で)=飯島啓太撮影
      男女の脳に関する講座は、受講者から「切り口が面白い」「互いを理解する手がかりがいっぱい」と好評だった(東京都内で)=飯島啓太撮影

     脳科学を切り口に、男女の考え方や感じ方の違いを学ぶ企業研修が広がっている。女性社員が増える中、男性上司と女性部下の関係作りに生かそうという動きだ。ただ、脳には個人差があり、男性、女性と単純化できない点も当然ある。うのみにせず、コミュニケーションのヒントの一つととらえたい。

    企業向け講座

     「プロとして仕事を遂行する上で男女差はないが、実は脳の違いから、感じ方や好みの対話などが異なるんです」と講師の吉居理奈子さんが話すと、企業の人事担当らの受講者15人がうなずいた。

     8月上旬、企業研修などを手がけるテンプスタッフラーニングが開いた、「男女脳差理解によるダイバーシティ・コミュニケーション」と題する公開講座。その内容は、人工知能を研究してきた黒川伊保子さんと同社が共同開発したプログラムに基づく。

     吉居さんによると、右脳は「感じる領域」、左脳は「言語領域」をつかさどる。女性型の脳は左右の脳をつなぐ神経の連絡がよく、感じたままをしゃべり、共感によって癒やしを得やすい。一方、男性型の脳は左右の脳の独立性が高く、連絡が少ないため、客観的で、自分の気持ちや体調、状況の変化などに左右されずに任務の遂行が可能という。

     講座では、そうした違いから職場で起こりがちな男女間の認識のズレを紹介。違いを意識することで、関係が良くなると紹介する。

     例えば、女性部下が男性上司に企画を提案する場面。女性型の脳は自分の直感を重視し、「これが最高です」と伝えがちだ。だが、男性型の脳では、一押しの提案に対し、「思いこみで客観性に欠ける」と低い評価を下してしまう。それを避けるには、複数の提案を示すとよいという。

     同社のプログラムは、製造業や金融などを中心に約30社が利用。女性の採用や定着が進む中、男性上司と女性との認識のズレが、職場での課題になってきたと感じる企業が増えているためだ。

    経過と結論

     清水建設は4年前から、女性部下を初めて持った男性管理職向けの研修で、このプログラムを使い、男女の脳の違いについて説明している。「新人女性のことがよく分からない」「普通に話しただけで泣かれた」などと戸惑う男性側の声に応えた。これまでに約100人が受講した。

     昨年、受講した東海林とうかいりん宏昭さん(40)は、「女性は経過を大事にし、男性は結論を求めると聞き、妙に納得した」と明かす。以前は、女性部下がトラブルの経緯などを長々と話すと、「結論から言って」と遮っていたが、研修後はきちんと話を聞くように心がけた。その結果、女性部下からの信頼感が高まったという。

    偏った見方禁物

     製薬会社の日本イーライリリーでも、年配男性から「若い女性と話しにくい」といった声が上がり、昨年から営業担当の管理職向けに実施。リクルートホールディングスは今年、主に28歳前後の女性部下を持つ管理職向けの研修に医学博士を招き、ストレスに対する男女の感じ方の違いなどを聞いた。

     ただ、こうした考えが行きすぎると、「女だから」「男ってやっぱり」などと、型にはめてしまいかねない。吉居さんも「偏った見方を持つのは、部下を管理する立場として問題。講座でも、バランス感覚を持って見てほしいと伝えている」と訴える。

     諏訪東京理科大教授の篠原菊紀さん(脳科学)は「この20年で解析や研究が進み、男女で脳の形や使い方に違いがあることが分かってきた。脳の違いを知っていれば、コミュニケーションのヒントとなり、損はしない」と説明する。

     一方で、「脳には個人差があり、男性でも女性型の脳、女性でも男性型の脳を持つ人もいる。また、脳の違いが男女の考え方や好みの差を本当に生んでいるのかは誰にも分からない。『女性、イコール女性型の脳』と単純に考えるのは危険だ」と注意を促す。(板東玲子)

    会話のズレ問題点と対策

     男女の脳の違いから来るコミュニケーションのズレは、ほかにもある。黒川さんの監修資料などを基に、問題点と対策をまとめた。

    【ケース1・妊娠の報告】

    女性部下「妊娠しました」

    男性上司「いつから休むの?」

     共感よりも問題解決を優先しがちな男性型の脳は、「おめでとう」「よかったね」などの言葉が出にくい。共感を大事にする女性型の脳は妊娠を祝福されていないと受け止めてしまう。気をつけよう。

    【ケース2・相談】

    女性部下「課長、例の案件、部長に伝えたらOKだそうです」

    男性上司「そういうことは私を通すように」

     臨機応変な女性型の脳は、肩書を越えての提案に抵抗がない。一方、男性型の脳は秩序を重んじ、こうした提案や発言があると、結果がよくても不快に感じる。組織の秩序を乱す行為ととられやすいので注意を。

    2015年09月15日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ


    くらげっとのつぶやき
    発言小町ランキング
    アーカイブ