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    救急・消防 現場へ出動…「女性傷病者に安心感」

    • 出動に備え、救急搬送に使う道具を点検する松平さん(京都市の中京消防署で)
      出動に備え、救急搬送に使う道具を点検する松平さん(京都市の中京消防署で)

     救急隊や消防隊などで活躍する女性消防職員が目立つ。災害の現場で「同性の傷病者に安心感を与える」などと評価されている。ただ、全職員に占める女性比率はまだまだ少ない。さらなる増加には、男性職場というイメージの払拭や、女性が働きやすい環境の整備など課題も多い。

    体力差埋める努力

     世界遺産・二条城近くにある京都市の中京消防署で、松平美沙さん(25)は唯一の女性救急隊員だ。交通事故の現場に駆けつけたり、急病人を搬送したりと、多い時は1日十数件出動する。「命にかかわる仕事。責任を感じながら、日々現場に向かっています」

     高校3年生の時、路上で倒れた男性を救助する救急隊員の姿を見て憧れた。専門学校で救急救命士の資格を取得。2012年、京都市消防局に採用された。

     当初は「男性社会になじめるだろうか」と不安だったが、周囲の気遣いもあって全く気にならない。一方、搬送などの際は、男性隊員との体力差を痛感する。少しでも差を埋めようと、帰宅後は懸垂と腹筋、休日はランニングにも励む。

     自分がいたことで喜ばれたこともある。急病人の60代女性を搬送した際、「女の人がいると安心するわ」と言われ、うれしかった。

     松平さんの上司で、警防課担当課長の小谷純也さん(53)は「見るのがつらいきわどい現場でも、ぐっと前に出てきちんと観察する。文句一つ言わず、たくましい」と見守る。松平さんは「やりがいのある仕事。もっと女性が増えてほしい」と期待を口にする。

    産休・育休経て復帰

     全国最大の人数を抱える東京消防庁では、女性は1160人で全体の約6・2%。家庭と両立しながら働く女性職員も多い。

     救急部救急管理課の尾崎七恵さん(34)は、現在、3歳の長女を育てながら、時短勤務で働く。04年に入庁し、主に救急隊で活動後、2年半の産休・育休を経て、昨年、復帰した。

     今の職場では、女性が働き続けられる環境の整備にも取り組む。「本人の家庭の事情を考えた勤務体制ができ、時短勤務でも日中は救急隊として活躍できるような働き方が当たり前になれば」と尾崎さん。その時には「自分も現場に戻って、救急隊長になりたい」と夢を語る。

    環境整備に課題

    • 「両立するためには、一緒に働く上司や同僚の理解も不可欠です」と話す尾崎さん(中央)=東京消防庁で
      「両立するためには、一緒に働く上司や同僚の理解も不可欠です」と話す尾崎さん(中央)=東京消防庁で

     女性消防吏員(消防士、消防士長などの階級を持つ職員)は全国で3850人(15年4月現在)おり、10年前の約2倍に増えた。ただ、全吏員に占める女性比率は2・4%で、同じく24時間体制の現場活動がある警察官(8・1%)、自衛官(5・7%)などを下回る。総務省消防庁消防・救急課課長補佐の田中俊郎さんは、「消防は24時間体制で働く人が全体の8割を占め、他の職業よりも高い」と理由を説明する。

     同庁は昨年、大学教授らによる検討会を設置。多くの女性が参加・活躍することが消防・防災体制の向上につながるとし、26年度初めまでに女性職員比率を今の2倍にあたる5%に引き上げる目標を掲げた。

     一方で、検討会が行った女性職員アンケートなどから、「女性が働く職場というイメージがない」「浴室や仮眠室などの女性用施設の整備が不十分」といった課題もあがった。

     検討会の委員で、和歌山大学准教授の岡田真理子さん(労働問題)は、こうした課題の解消に加え、「勤務を2交代制にするなど、両立しやすい環境を考えることが大切だ」と指摘する。また、女性のロールモデル(手本となる存在)を増やすなどし、「女性たちに消防職員としてのキャリアの道筋を明確にすることも重要」と話す。

    説明会やサイトも

     消防職員を目指す女性を増やすため、総務省消防庁は2016年度、地域別の説明会を開催したり、女性職員を紹介するポータルサイトを開設したりする。いずれも初めての取り組みで、こうした広報活動のため、新年度予算に4700万円を計上した。

     また、浴室や仮眠室など女性専用施設の整備を促進するため、各自治体の消防本部に財政的支援も行う。(矢吹美貴)

    2016年03月29日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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