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    【連載】女性と仕事 (4)転居ない総合職、家庭と両立

    賃金や昇進に差…見直す企業も

     どこにでも転勤するのが当たり前の総合職の中で、転勤エリアを絞った「地域限定総合職」を設ける企業が増えている。この総合職の多くは女性だ。家事や育児と両立しやすく働き続けるのに都合がいいが、給与などで通常の総合職と差がつくこともある。


     「新人時代は、管理職になれるなんて想像もしなかったですよ」。そう話すのは、和歌山県と大阪府南部が地盤の紀陽銀行の泉大津支店(大阪府泉大津市)支店長、横出二実子さん(42)だ。入行当時、女性は、窓口業務などを担う一般職にあたる職種を選ぶしかなかったからだ。

    • 行員を指導する紀陽銀行泉大津支店長の横出さん(左、大阪府泉大津市で)=長沖真未撮影
      行員を指導する紀陽銀行泉大津支店長の横出さん(左、大阪府泉大津市で)=長沖真未撮影

     同行の総合職は現在、転勤先を限定しない「フリー」と、転居を伴う転勤のない「エリア」の2コースある。エリアコースは、一般職の立場の女性が遠方への転勤を気にせず活躍の幅を広げられる仕組みとして、2008年にできた。

     横出さんは2人の子を育てながら、途中でエリアコースに移行。個人の資産運用などの相談に乗る営業職も経験し、キャリアアップを重ねた。働いた支店は自宅から通える場所ばかりで、子どもを転校させずに済んだ。支店長として「若い女性行員のロールモデル(手本となる存在)となりたい」と意気込む。

     こうした職種は「地域限定総合職」「エリア総合職」などと呼ばれ、厚生労働省の12年度雇用均等基本調査では、従業員30人以上の企業の4割が採用している。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所研究員の平野恵子さんは「通常の総合職には気が引けたり、地元志向が強かったりする女子学生に人気で、採用実績も女性が大半」と話す。

     だが、初任給から差がついたり、昇進できる年数や最初の職位が異なっていたりと、待遇が違う場合もある。

     大手金融機関で地域限定総合職として働く大阪市の女性(30)は、「自分で選んだとはいえやるせない」とぼやく。

     一人娘で、病気がちの母のそばにいたいと、転居の心配のない地域限定総合職で入社した。仕事の中身は通常の総合職と変わらず、総合職の同期を超える営業成績で表彰されたこともある。しかし、入社数年で、後輩の総合職より月給が1割ほど低いことに気がついた。「総合職といっても名ばかりとしか思えない。一般職を選んでいた方が割り切れたのかも」と苦笑いする。

     厚労省によると、職種による待遇の差は認められており、総合職のコース分けは、男女雇用機会均等法が禁じている差別にはあたらないという。だが、聖心女子大学教授の大槻奈巳さん(社会学)は、「企業の多くは地域限定総合職を女性用の仕事として用意し、業務は総合職とほぼ同じなのに人件費を抑えた雇用管理区分としている」と話す。

     見直しを行う企業も出てきた。東京海上日動火災保険は従来、転勤に制限のない全国型と、転居を伴う転勤のない地域型の職種で、昇進のスピードや給与で差をつけていた。それを一部改め、16年度に始めた新たな人事制度では、昇進面について職種で差をつけない仕組みにした。

     大槻さんは「誰もが働きやすい職場にするには、制度の見直しにとどまらず、転勤や長時間労働を前提とした男性的な働き方の見直しが欠かせない」と指摘する。

    2016年04月13日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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