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    <識者はどう見る?>恋愛しない若者たち

    • しらかわ・とうこ 相模女子大客員教授。内閣府「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員。54歳。
      しらかわ・とうこ 相模女子大客員教授。内閣府「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員。54歳。

     若者の恋愛離れが指摘されている。内閣府の調査では20~30歳代で恋人のいない人は6割、そのうち4割近くが「恋人が欲しくない」と答えた。

     結婚はしたいが、「恋愛は面倒」という声も聞かれる。若い世代の恋愛に対する意識について、3人の専門家に聞いた。(生活部 大石由佳子、山村翠)

     

    結婚望むが恋は面倒 少子化ジャーナリスト・白河桃子氏

     今の若者たちに、「結婚とは関係なく、恋愛だけを楽しむ」という感覚は少ない。特に女性は、結婚に結びつくような恋愛しか必要としていない。

     女性にとって恋愛と結婚、出産の関係はイコールになっている。夏の花火みたいな恋には憧れない。バブルの頃は「結婚前のセックスもあり」などと貞操観念が変わり、女性の自立も相まって、「結婚に縛られず、恋愛を楽しむわよ」という機運が高まった。だがそれは一時的だった。

     今の若者にとって、恋愛は面倒なものになっている。日本は世界最大の「え」生産国で、アイドルやアニメ、ゲームなど、恋愛の代わりに「ときめき」を与えてくれるものがいくらでもある。恋愛と違い、相手から傷つけられることもない。

     複雑に人とつながるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)時代の、人間関係の面倒くささも問題だ。関係を乱さないよう職場恋愛はしない。趣味や地域貢献活動などの集まりは「恋愛する場でない」という雰囲気だ。空気を読む人間関係の中で、うまく男女の関係になるのは難しい。

     若者が憧れる男女のモデルもない。今の夫婦や親たちは、男女として楽しく過ごしているだろうか。豊かな男女関係を育む大人が見当たらないのも、恋愛離れの大きな要因ではないか。

     結婚のための恋愛ならば、結婚相手を探せばいいのだが、女性にとって魅力的に見える男性が少ない。

     今の若者は、専業主婦や一時的でも主婦業に専念した母親を持つ人が多い。だから、キャリアのある女性も、男性に「子育て中は養ってくれる経済力」を求めがち。だが、そんな人はごく一部だ。しかも、日本の男性は家事や育児の能力が低く、女性を褒めるなどサービス精神もない。

     女性には受難の時代。結婚後も働き、家事や育児もしなくてはいけない。電通総研の2010年の調査では、23~49歳の男性の6割が「恋愛では受け身」と答えた。恋愛も、女性から口説かなくてはいけない。

     結婚願望はあるので、望む人が共働きで結婚、子育てできる社会環境を整えることが必要だろう。

     雇用の安定や、家庭と仕事の両立支援は重要だ。非正規で働く女性などは思うように育児休業が取れない。仮に結婚や出産後に相手と別れても、安心して仕事や子育てできる環境があれば、「失敗しても何とかなる」と、恋愛に積極的になれるのではないか。

    口説く力育っていない 早稲田大教授・森川友義氏

    • もりかわ・とものり 専門は政治学。国連専門機関での勤務などを経て、現職。早大で「恋愛学」講座を持つ。59歳。
      もりかわ・とものり 専門は政治学。国連専門機関での勤務などを経て、現職。早大で「恋愛学」講座を持つ。59歳。

     若者の恋愛離れといっても、恋愛したいという欲求がなくなったのではない。社会環境や経済状況が変化したために起きている現象だと考えている。

     大きな変化の一つが、コミュニケーション能力の低下だ。パソコンや携帯電話が普及し、1日何時間も使う若者が多い。機械にかじりついてばかりいては、異性を口説くコミュニケーション能力は磨かれないだろう。

     SNSを通じた出会いもあり得るが、コミュニケーション能力が低下しているので、実際に会っても関係を築きにくい。

     デフレ経済が長く続き、非正規雇用者が増えたことも見逃せない。デートで着る服や食事など、交際にはお金が必要だが、生活に余裕がない若者が多い。

     日本は、労働時間も長い。なくなったのは恋愛への関心ではなく、男女間のコミュニケーション能力と、恋愛にかける時間、金、労力なのだ。

     若者はよく「恋愛は面倒くさい」「友達付き合いのほうが楽しい」と主張する。しかし、それは自己正当化にすぎない。恋愛の楽しさを認めてしまうと、恋愛ができていない自分がみじめになってしまうから、言い訳を並べるのだろう。

     高学歴、高収入の女性が増えたことも、恋愛の難しさの背景にある。女性は「恋愛イコール結婚」と捉えがちで、自分より高学歴、高収入の男性を選ぶ傾向にある。そういう男性を探そうとすると、極端に少ない。

     1950年代は結婚の約半分がお見合いだった。日本人は、伝統的に恋愛結婚が苦手なのかもしれない。見合い結婚というシステムが働いていたときには奥手な男性でも結婚できた。今は自分で努力して相手を見つけなければならない。若年層の人口が減る一方なので、待てば理想の異性が現れる時代でもない。

     日本の少子化問題を恋愛を通じて解決しようと、2008年から、早大で恋愛を客観的かつ科学的に探究する「恋愛学」講座を開いている。学生に、男女が引かれ合うメカニズムやデート戦術などを解説している。

     IT化が加速するなか、若者はますます恋愛から縁遠くなるだろう。コミュニケーションが苦手でも、出会いがなければ何も始まらない。地方都市を中心に、行政が婚活やお見合いパーティーをしているのは、評価できる。少子化を防ぐためにも、男女が出会うチャンスを広げることが重要だ。

    恋人不要認めていい 和光大准教授・高坂康雅氏

    • こうさか・やすまさ 専門は青年心理学。大学生ら若者を対象に、友人関係や恋愛の心理について調査研究している。37歳。
      こうさか・やすまさ 専門は青年心理学。大学生ら若者を対象に、友人関係や恋愛の心理について調査研究している。37歳。

     恋愛に価値を見いださない若者がいるのは当然のことで、恋愛を押しつけるべきではない。

     2011年、全国の大学生1530人に調査したところ、20%が「恋人がいない。ほしいと思わない」と答えた。驚くような数字ではない。なぜなら、大人たちをみても、50歳までに一度も結婚したことがない「生涯未婚率」が、10年には男性が20%に達し、女性が10%となっているからだ。

     恋人がほしくない理由は様々だが、大まかに四つのタイプに分類できる。〈1〉自分に自信がなく、恋愛に意義がないと考える〈2〉過去の恋愛経験を引きずっている〈3〉現実の生活が充実しており、恋愛はいずれできるだろうと楽観している〈4〉恋愛に費やすお金や時間、労力が煩わしく、恋愛の負担を回避したい――の4種類だ。

     彼らが恋愛を敬遠する背景の一つに、氾濫する恋愛情報からの影響が考えられる。アニメや漫画、インターネットサイトなどを通じて、大量の恋愛情報に接するうち、未経験なのに経験した気になってしまう。幸せな恋物語だけでなく、失恋やトラブルに発展するケースなどマイナスの情報も多く、恋愛に憧れを抱けない。むしろ、否定的な印象を持つようになる。

     中には、「恋愛は美男美女など一部の人がするもの」といったイメージを膨らませ、「圏外感」を抱く者もいる。特に〈1〉の自分に自信がないタイプの人は、「自分は恋愛する人間ではない」と決めつけて目を背ける。異性に告白されたとしても、「からかわれているだけだ」と好意を疑ってしまう。

     自ら恋愛を遠ざけている若者に、恋愛すべきだとの考えを押しつけていいのだろうか。少子化の問題はあるにしても、価値観が多様化した社会では、そうした自主的な選択もまた、認められていい。

     恋愛を求めない若者がいる一方、恋愛に前向きな若者の方が多数派だ。恋人がいる人は、いない人より、生活の充実感が高く、周りからの人物的評価も上がる傾向がみられる。きっかけさえあれば、恋愛してよかったと思えるだろう。

     あまり着目されていないが、最も多いのは「恋人がいないが、欲しい」という人たちだ。どの程度そう思っていて、そのために何をしているのか。研究が進めば、恋愛に関して若者への働きかけが必要か、具体的にどんな働きかけをすればいいかが見えてくるかもしれない。

    恋人はいないけど…「結婚したい」 71%

     内閣府が6月発表した2014年度の「結婚・家族形成に関する意識調査」では、20~30歳代の未婚男女の64%、5人に3人は恋人がいない。また25%、4人に1人は交際経験がない。恋人のいない人のうち、38%が「欲しくない」と回答した。その理由は、多い順に「恋愛が面倒」「趣味に力を入れたい」「仕事や勉強に力を入れたい」「恋愛に興味がない」「友人と過ごす時間を大切にしたい」など。

     一方で、結婚願望のある未婚男女は多く、恋人のいない人でも71%は「結婚したい」と答えている。

    2015年08月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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