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    「台所」から見えてくる様々な人生を描く連載小説。
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    「お口に合いますように」 書籍化記念・安田依央さんインタビュー

    • 安田依央さん(中央公論新社提供)
      安田依央さん(中央公論新社提供)

     「大手小町」15周年を記念した初の連載小説「出張料理・おりおり堂」。

     3月の第12話「弥生 祝い御膳とそれぞれの船出」もいよいよクライマックスですが、4月「卯月(うづき) タワマン夫人と鯛供養」から9月「長月 恋の行方と月夜の宴」までを1冊にまとめた単行本も出版されました。1年間の執筆を終えた作者・安田依央さんに感想などを伺いました。

    幸せな1年間

     ――大手小町にとって初の連載でしたが、安田さんもウェブサイトでの連載は初めてだったんですよね?

     安田依央さん)私もこれまでの作品は全部書き下ろしだったんで、連載そのものが初めてでした。最初は「そんなに毎日書けるのか」という気持ちでいたのを覚えています。最初のうちは1か月分まとめて書き上げて提出していましたが、そのうちどんどん細切れになってしまって……。でも最初は「半年の連載」というお話をいただいていたのですが、たくさんの方に読んでいただき、おかげさまで「もう半年やりましょう」と言ってもらうことができました。

     月曜から金曜まで、毎朝8時に新しいお話がアップされるので、私も毎朝8時になるとサイトをチェックしていましたが、「大手小町」ではトップページの右下のほうにランキングが出ているでしょう。8時になるとすぐに上位に上がってきて、「あ、きょうも皆さん読んでくださっている」というのが伝わってくる。それは本当にうれしい体験でした。

     ふだん小説を書かせてもらっていても、なかなか読者の声というのは届かないんです。本の売れる部数がせいぜい読者の「存在」を感じられる手がかりみたいなもので。今回はランキングもそうですが、「読者がいる」という気配を常に感じることができました。「この人たちに届けねば」という気持ちになれて、最初「大手小町」での連載って、うれしい反面ちょっと「怖い」と感じる部分もあったのですが、本当にうれしかったです。もう、今となってはすべての苦労も懐かしい。つらかったけど、幸せな1年間でした。

    いつか「大手小町」に凱旋を

     ――「ルビが抜けている」とか、間違いがあると朝すぐにご連絡をいただいて……。毎日どんなペースで執筆されていたんですか?

     安田)私は朝型なので、4時か5時頃から書き始めるんです。それで8時くらいにちょうど休憩するので、「大手小町」をチェック。最後のほうは本当にいつも締め切りギリギリだったので、家にいて執筆する以外は、近所のウォーキングと司法書士の仕事を済ませるくらいで、本当に頭の中は「おりおり堂でいっぱい」でした。スーパーに食材チェックにも行けないくらいだったんです。「これは修行か!?」と思っていました。

     ちょうど1年前に今の家に引っ越したんですけど、まだ半分くらいしか段ボールを開けていなくて、寝る場所と机がとりあえずあるだけ。転居通知も年賀状も出せないままなんですよ。

     机に向かっていないとき、例えば電車に乗っているときとかも、この1年間はいつも頭の中に「おりおり堂」の登場人物が現れていて、お話をあれこれと考えていたんです。3月末までの連載分はもう書き上げてしまって、また全然別のお話を考えていかなければならないのに、ふと「おりおり堂」の面々のことを考えてしまいそうです。そのくらい習慣になってしまって別れがたい。

     ――「おりおり堂」は主人公の澄香と仁さん以外にも、魅力的なキャラクターがいっぱいで、彼らが住んでいる街がきっとどこかにあるという感覚を抱いてしまいます。

     安田)そうですね。いいダシになってくれる人、メーンの具になってくれる人、ピリッと利く調味料になってくれる人。考えてみたら、いい小説というのは、おいしいお料理みたいなものなのかもしれませんね。「おりおり堂」も、みなさんのお口に合うといいのですが。

     ――夏には掲示板「発言小町」との連動企画で、冷蔵庫の中にある食材を書き込んでもらい、それを使った短編も書いていただきました。

     安田)自分でハードルを上げてしまいましたね(笑)。でも、皆さんが本当に小説をよく読んでくださっているのが伝わりましたし、やりがいがありました。まだ使い切れていない食材もたくさん残っているので、それをどこかでお召し上がりいただく機会があれば。

     ――魅力的なキャラクターのサイドストーリーも、もっと読んでみたいですね。「おりおり堂」オーナーの桜子さんなんて、過去が気になります。

     安田)そうですね。彼女が「ラスボス」という説もある。今回は春夏秋冬、1年間の食材を書かせてもらいましたが、また次も春夏秋冬の形でいつか書いてみたい。ぜひ「大手小町」に凱旋(がいせん)したいなあ。あと、「おりおり堂のレシピ集」なんかも書けると楽しいんやけどなあ。

     ――ドラマでも見てみたいです。

     安田)いいですね。そういえば今回、書籍化にあたってイラストを一部描き直してもらっているんです。「大手小町」で載ったときと書籍に掲載されたイラストでどこが違うか、ぜひ間違い探しをしてみてください。分かった人は……どうしよう。発言小町に書き込んでもらいましょうか?

     

    2015年03月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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