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    「台所」から見えてくる様々な人生を描く連載小説。
    「おりおり堂」のおしながき

    師走・和のクリスマス

     2014年のカレンダーも残り1枚になりました。12月の連載小説「出張料理・おりおり堂」では、毎日のように忘年会やクリスマスパーティーの予約が入り、大忙しの様子が描かれています。

     今回の番外編では、小説に登場する「大人の和のクリスマス」メニューから、“定番”とも言えるローストチキンを日本料理店「銀座小十」の奥田透さんに作ってもらいました。

    チキンはいつからクリスマスの定番なのか?

    • ローストチキン。手前右はシシトウのおかかあえ。ユズこしょうを添えていただく
      ローストチキン。手前右はシシトウのおかかあえ。ユズこしょうを添えていただく

     さて、日本ではいつから「クリスマスにはチキン」という風習が広がったのでしょうか。読売新聞の朝刊「くらし家庭面」には、1914年(大正3年)の創刊時からレシピが載っているのですが、今年はちょうど100周年。それを記念して、古いレシピのなかから、次の世代に伝えたい料理を選ぶ企画を進めています。ちょうど先日、1977年(昭和52年)に新聞に掲載された「ローストチキン」のレシピを大手小町で紹介しました。

     材料は、ひなどり1羽。手順はまず、「おなかを抜き、水を通してよく洗い、逆さにつるして水気を切る」「首の骨を切り落とす」――。おっと、これはハードルが高い。しかしその記事によると、ローストチキンは、昭和初期からすでにクリスマスの料理として新聞に登場しているそうです。そして「昭和40年代は、ローストチキン、洋酒、ケーキが『ファミリークリスマスの三種の神器』だった」とか。意外に「伝統ある風習」だったんですね。

     さて、奥田さんが作ってくれたローストチキンを紹介しましょう。骨付きの鶏もも肉を用意し、みりん、酒、濃口(こいくち)しょうゆを「3:1:1.5」の割合で合わせて、たれを作ります。このとき、みりんと酒を先に小鍋で合わせて火にかけ、アルコール分をとばす、いわゆる煮きりの作業をします。冷めたらしょうゆも加え、鶏肉を漬けておきましょう。

    • ハケでたれを塗りながら、じっくりと火を通す
      ハケでたれを塗りながら、じっくりと火を通す

     焼くときは、皮を強火でパリッとさせるのもおいしいですが、今回は炭火でじっくりと火を通しました。ときどきハケでたれを塗りながら焼いたので、表面はきれいに照りが出ています。「家庭で焼くときはグリルやプライパンで構いません」(奥田さん)

     全体にしっとりとしてやわらかな仕上がりで、しょうゆの香ばしい香りはお酒もご飯も進みそう。そしてユズこしょうを少し付けるのもおすすめです。香りも味も引き締まり、大人向けの一品になります。シシトウのおかかあえを付け合わせました。

     「クリスマスはこんな日本料理店でも、やはり予約が多いです」と奥田さん。しかしメニューはいつも通りだそうです。チキンは出ません。「カモのローストとか、カモ鍋なんかはクリスマスに出すと楽しいかな。ガラでスープをとって、内臓も混ぜ込んだひき肉でつくねを作り、ネギと煮る。そんなクリスマスメニューはいかがでしょう」と笑顔でアイデアを披露してくれました。

    まるで手品! 透明なゼリーの正体は?

    • エビとアボカドのカクテル
      エビとアボカドのカクテル

     もう1品は、こちらも「大人の和のクリスマス」メニューから、エビとアボカドのカクテルです。まずは材料の下ごしらえ。クルマエビは殻付きのまま、お湯でさっとゆでます。小十の料理人さんは、殻の色がパッと赤く変わったあと、頭のあたりの殻を親指と人さし指で挟み、かたさを確かめていました。ちょうどよいゆで加減が指先で分かるのですね。

     ゆであがったら氷水に取って冷ましたあと、殻をむき、2~3センチ長さに切っておきます。アスパラ、インゲン、パプリカ、アボカドも同じくらいの長さに切りそろえましょう。

     「完成です」。運ばれてきた美しいカクテルグラスには、透明なゼリー(ジュレ)とエビ、野菜が入っていました。「だしのゼリーであえたのかな?」などと思いながらスプーンに載せ、口に運ぶと、思いもよらない味が広がりました。ちょっと青臭くて、酸味があって……これはまごうことなきトマト! 見た目からは予想もしなかった味に、舌の味蕾(みらい)たちが戸惑っているように感じました。

    • エビは殻付きのままゆで、氷水に取って冷ます
      エビは殻付きのままゆで、氷水に取って冷ます

     「トマトをフードプロセッサーにかけて回すとジュースができますよね。それをそのままキッチンペーパーの上に流して、こし取るんです。そうすると不思議なことに透明な汁が下にたまります。それを少し温めて、ゼラチンを加えれば透明なゼリーのできあがり。透明なのに、味も香りもちゃんとトマトなんですよ」と奥田さんが説明してくれました。

     きらきらときらめくゼリーは、冬の夜のイルミネーションのよう。華やかなおもてなしの日に用意するとよさそうです。そして何より、「驚かせよう」「笑顔が見たい」――そう誰かのことを思いながら作る料理は、どんなものでも聖なる夜にぴったりだと感じました。

     連載小説の第9話「師走 ミルクがゆと難破船」は、いよいよクリスマス本番が近づいてきました。主人公のイケメン料理人・(じん)さんと、思いを寄せる助手の澄香(すみか)。どんな夜を二人が過ごすことになるのかは、乞うご期待です!

    2014年12月19日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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