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    発言小町で話題になっている事柄を、専門家らの意見も交えながら掘り下げます。
    小町拝見

    妊娠 祝福するムードを…香山リカ

     親族や周囲から「おめでとう」と言ってもらえない妊娠がある。そんなトピを見つけてドキリとした。最近、保育園で働く保育士には“妊娠順”のルールがあるとか、高校生が妊娠したら学校から退学を勧められたとか、「おめでとう」と言われない妊娠の話題を報道やネットでいくつか見ていたからだ。


     精神科の診察室には、子どもがほしくてもなかなか授からない、いわゆる不妊で悩む女性もときどきやって来る。不妊治療が進んだとはいえ、治療そのものがストレスになったり、それでもなかなか妊娠に至らずにうつ状態になってしまう人さえいる。その相談に乗っている身としては、妊娠はそれだけで「すばらしいこと、すごいこと」に思える。さらに本人も出産したいと考えているなら、周囲がかける言葉は「おめでとう」以外にないはずである。

     もちろん、妊娠した女性が未成年だったり生活や健康に問題があったりする場合、関係が近い人であればあるほど、「だいじょうぶ?」と心配になるのも理解はできる。とはいえ、いちばん不安なのは本人やパートナーだ。それに追い打ちをかけるように「たいへんだよ」などと言う前に、まず「出産するなら応援するよ」とこちらの姿勢を示すべきだろう。

     フランス留学中に妊娠を疑って産科を受診した日本人女性の話を聞いたことがある。女性医師が「妊娠です。おめでとう!」と祝福してくれ、「私、学生で未婚なのですが」と伝えたら「それがどうしたの?」と不思議そうな顔をされ、自然に出産を決意できたそうだ。日本ではまだそこまでの状況は整っていないかもしれないが、心意気だけでも、「妊娠した」と言われたらまずは「おめでとう」と元気に伝えるムードを広めたい。

    香山リカ(かやま・りか)
     精神科医、立教大教授。1960年、北海道生まれ。豊富な臨床経験を生かし、新聞やラジオ、テレビなど様々なメディアで、現代人の心の問題について発言している。
    2018年05月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun


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