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    発言小町で話題になっている事柄を、専門家らの意見も交えながら掘り下げます。
    小町拝見

    育児 弱音吐いたっていい…香山リカ

     日本の子育ては、「母性は最強」という幻想に縛られすぎていると思う。診察室にも、子育ての大変さに悩む母親以上に、「子育てがうまくできない自分は母親失格か」と悩む女性が大勢やって来る。


     「わが子をかわいく思えない」というトピもあったが、まさに同じことを訴える女性が相談に来ることもある。そういう女性に「子育てに支障を来すほどですか」と聞くと、「なんとかできています」という答えが返ってくる。「じゃ、それでいいんじゃないですか」と伝えると驚かれる。

     おそらく子どもの世話はできているのに、「母親であるからにはあふれる愛情で子どもを包み込まなくてはいけない」との考えにとらわれ、自分を苦しめているのだ。その際に必要なのは、「子どもとの関係は人それぞれ。母親はみんな同じではない」と自分に言い聞かせ、心を解きほぐすことなのだ。

     もちろん、父親である夫も「母性は最強」という思い込みに依存しすぎることなく、しっかり育児をこなし、妻と向き合うことも大切。「もう母親になったのだから」と妻をひとりの女性として見ようとしない夫が、母親たちをどれほど孤独に追い込んでいるか。

     仕事なら「私もうムリ」と言えば、その日は早退もできるかもしれないし、同僚が手助けしてくれるかもしれない。しかし、こと育児に限っては、「あなたが産んだのだから」と弱音を吐くことすら許されない。「子どもって最高にかわいいでしょう」と言われると、「助けて。ひとりじゃ育児はできない」と声を上げることもできなくなる。こんな状況では少子化だって解消しないだろう。

     「育児もうムリ」と言える子育て。そんなのおかしい、と言われるだろうか。

    香山リカ(かやま・りか)
     精神科医、立教大教授。1960年、北海道生まれ。豊富な臨床経験を生かし、新聞やラジオ、テレビなど様々なメディアで、現代人の心の問題について発言している。
    2018年06月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun


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