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    発言小町15周年を記念したインタビューや懐かしいトピの紹介コーナーです。
    私の「発言」

    (1)「反抗期がない」新たな親子関係…博報堂「若者研」リーダー・原田曜平さん

     大手小町15周年企画として、昨年4月からスタートしたインタビュー「私の『発言』」。最終回は、若者研究が専門で、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平さんです。

     原田さんは、2013年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされた「さとり世代」という、1990年代生まれの若者を表す新語を世に浸透させた立役者の一人。現代の若者気質やSNSの将来像についてうかがいました。

     ――原田さんの著書「さとり世代」「ヤンキー経済」「女子力男子」などを読むと、親子関係が以前と大きく変わっていることに驚きました。

     原田曜平さん)今の高校生、大学生に聞くと「反抗期はない」と答える子どもたちが非常に多いんですよ。僕なんか、この年になっても反抗期が続いていて、親に何か言われると「もう、うるさい!」と言ってしまっているんです。だから、若者たちを見ているとすごく大人だなと思うんですよね。親に対しても客観的なジャッジをするような目線も持っているし、独立した人間として、親とバランスよくうまく付き合っているなと感じる子が多いですね。

     ――この数十年間で、その変化を生み出したものは何だったのでしょう。

     原田)いくつか要因があると思っているんですね。非常に大きいのは、親世代の変化。新人類世代からバブル世代、団塊ジュニア世代の母親は、それ以前の戦中、戦前世代の母親像に比べると、かなり「私」の部分が強くなってきています。ですから、中高年の年齢になっても、高い化粧品を買ったり、ママ友とのホテルのランチにお金をかけたり、昭和時代の母だったら「もういい年なんだし」と考えたものをあきらめない。すごく自分の時間を大切にするようになってきているので、昔と比べると「子どもしかない」という状況の母親が減っています。自分の楽しみがあると、子どもへの過干渉の度合いは減りますよね。

     ――今は家族一人ひとりが携帯電話やスマートフォンを持っている時代になりつつある。子どもの友人関係が見えづらくなる一方で、親子関係は“良好”になっているというのがおもしろいですね。

     原田)今のような親子関係になった要因はいくつかありますが、ソーシャルメディアというのは非常に大きな存在です。僕が大学時代、友達の家を泊まり歩いて家に帰らない日が続くと、うちの母親は心配して、僕の友達の実家にまで電話をしていたんです。でも、今は親が「子どもがどこにいるか分からない」という悩みがほぼゼロになっている。特に無料通信アプリ「LINE」の普及が大きいですよね。「あんたどこにいるの?」「今、駒込で原田さんといる、恋愛相談にのってもらっている」とLINEで「会話」すると、じゃあいいかとなるわけですよ。もちろん、それを利用して(うそ)をつく子どもも多いので、だまし、だまされる可能性も含めてですが、いずれにしても、直接会わない「遠隔」も含めて、昔より明らかにコミュニケーションが増えているので、親としては理解した感覚になっている。それゆえの信頼感、安心感というのがお互いにある、というところはあるんじゃないか。

    「専業主婦志向」 5割近く

     ――理想の家族像にも変化を感じています。大手小町の掲示板「発言小町」にも若者の投稿が増えていますが、以前よりも若い女性たちの「専業主婦志向」が強くなっていると感じます。

     原田)各種の調査でも、10年ぐらい前からそういう傾向ですね。20歳代の女性では、5割近くが専業主婦志向です。首都圏、阪神圏で5割いるというのは結構すごいですよね。

     ――「専業主婦になりたい」という投稿がくると、30~40歳代の発言小町のユーザーが、「リスクが高い」「資格があったほうがいい」と止めに入るケースが多い。人生経験の差や世代間の意識のギャップがよく出ていると思うテーマです。

     原田)今の20歳代の人たちの親は、専業主婦率が非常に高いんです。親子関係も良好になっているので、「お母さんみたいになりたい」とモデルになりうるんですよね。

     ――「働く女性」がクローズアップされたバブル期と比べると、ずいぶん違いますね。

     原田)今の20歳代だと、母親の専業主婦率が高いうえ、就職氷河期とか、女性の非正規雇用率が男性に比べて圧倒的に高いという現実を見るうちに、何となく「お母さん世代のほうが幸せなんじゃないか」と見えるというのがありますよね。そのほか、専業主婦でいられることが一つの特権階級になってきている。「専業主婦=かなり豊かな夫がいる」という、希少価値として願望が高まってきているというのもあると思うんですよ。1970年代に生まれた団塊ジュニアを母親に持つ子どもたちが就職する年代になると、働いている母親が多いので、専業主婦志向もばらついてくると思いますが、まだ先の話ですね。

     ――現在の働く女性の姿が、若い女性たちから見るとあまり幸せそうに見えないという声もありますね。

     原田)メディアの世界でも、酒井順子さんの著書「負け犬の遠()え」に始まり、ドラマの世界を見ても、本当に幸せそうに働いている女性、全てを得ている女性というのが、なかなか現実味をもって登場しないですよね。男女雇用機会均等法施行から30年近くたった今、女性にとって仕事は、「すごく新しいものとして輝いている」ものから、「お金を稼ぐもの」という男性と同じようなものになってきた。自己実現なんてできるのは一部の人で、基本はつまらないよな、と。人がやりたがらないことをやるから、お金がもらえるんだよなということに気づいちゃったというところがあると思いますね。

     ――さきほど、これから先はまた専業主婦志向もばらついてくるとお話しになりましたが、また「働く女性」志向にシフトする時代がくるのでしょうか。

     原田)徐々に徐々に変化が起こってくる。団塊ジュニア世代は、世代間の賃金格差が20歳代から非常に開いた世代ですし、正規雇用の人と非正規雇用の人の間でも、かなりばらつきができました。コミュニティーごとに「格差」が大きいので、専業主婦を選ぶかどうかについても、もっといろいろな考え方が出てくると思います。また、日本はまだ豊かな国のほうですが、それでも、相対的貧困率を見ると、貧しい家庭が生まれてきているのも確かです。貧しい家庭が子どもをつくってさらに貧しくなっていくという構図もはっきり出ているので、いずれ今の子どもの世代が大人になると、もっといろいろな問題が出てくるでしょうね。

    プロフィル

     原田曜平(はらだ・ようへい) 1977年東京都出身。慶応大学卒業後、(株)博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。2003年JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。専門は若者研究で、日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行っている。著書に「さとり世代」「ヤンキー経済」「女子力男子」など。

    2015年03月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun


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