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東京海洋大…商船と水産、伝統脈々と

学部超え部活

海の日の記念イベントで見学者を乗せて船を漕ぐ海洋工学部のカッター部員=工藤菜穂撮影

 ともに100年以上の歴史を持つ二つの国立大学を統合し2003年10月、東京海洋大学は2学部で船出した。

 旧東京商船大を前身とし船舶や物流管理を学ぶ海洋工学部と、旧東京水産大が前身で水産加工や海洋資源を学ぶ海洋科学部だ。

 先月20日、「海の日」の記念行事を見ようと、東京都江東区越中島にある海洋工学部のキャンパスを訪ねると、学生が見学客の案内をしていた。結成50余年の「海事普及会」の部員たちだ。白一色の夏の制服が、海のエリートを育ててきた学部の歴史を感じさせる。

 「海に興味を持ってもらおうと、海のない県の小学校を回り手旗信号やロープの結び方を教えています」と話す海事システム工学科3年の斉藤学さん(20)は、海軍出身の祖父の影響で船が好きになり、航海士を目指して勉強中という。

 100年以上前に作られた天文観測台などを見ながら歩き、足を止めたのは明治丸の前。かつて学生の練習にも利用された全長約74メートルの帆付き汽船だ。

 明治政府が英国に建造を依頼した往年の豪華船。東北・北海道巡幸の帰路、明治天皇がこの船で横浜港に着いたのが1876年7月20日だった。後に海事関係者がこの日を祝うようになり、海の日につながった。

 高層マンション群を望む係船場は研究船の試乗会でにぎわい、カッター部の学生たちも見学客を乗せてこぎ出していた。

 海洋電子機械工学科でエンジンについて学ぶ主将の3年、斎藤淳さん(20)はキャンパス内の寮に暮らす。

 寮歌を何曲か暗記して歓迎会で合唱するのが、新入生の習わし。「寮歌の歌詞は難しい漢字が多く、覚えるのが大変」と笑う。あいさつや礼儀が重んじられる寮では、「先輩に勉強を教わったり、人付き合いのこつも学べる」そうだ。

 JR品川駅の近くにキャンパスを構える海洋科学部にも、カッター部はある。

 水泳部など、学部の枠を超えた部活も増えている。共通授業はほとんどなく、学園祭も別々だが、学生たちは特に学部の垣根を感じてはいないようだ。

変わらぬ実習重視

 サバにマグロを産ませる研究や水中ロボットなど学問の幅が広がった今もなお、両学部とも海や船の実習を重視している。

 海洋科学部海洋環境学科4年の沼田理恵さん(21)は、1年次の遠泳について、「童謡の『海』を歌ったりして隊列を崩さないように泳ぐんです。一体感や達成感を味わえました」と振り返る。3年次の乗船実習では、釣り上げたイカを沖漬けにして堪能。交代で夜間の見張りにも立ったそうだ。

 海洋科学部は、4割強と女子学生の比率が高い。

 同じく海洋環境学科4年の久留綾(くるあや)さん(21)は、高校時代に読んだ科学誌で学科のクジラの研究を知り、念願をかなえて今は鯨類学研究室で学ぶ。「種類により骨格が違うんです。新種を確認できたら最高」と夢を語る。

 無限の可能性を秘めた海に、学びの帆を広げる学生たち。海洋国日本の未来を照らすのは彼ら、彼女らかもしれない。(関仁巳)

〈沿革〉
 東京海洋大学は2003年に設置され、翌年に国立大学法人に移行した。海洋工学部は1875年設立の三菱商船学校の流れをくみ、1957年に江東区の現キャンパスに移転。海洋科学部は1888年設立の大日本水産会水産伝習所に端を発し、1957年に港区の現キャンパスへの移転を完了した。学生数は約2100人。卒業生に元首相・鈴木善幸、元通産相・高碕達之助、パイロット創業者・並木良輔ら。OBの作詞家・星野哲郎さんは統合後の新校歌を作詞した。


(2009年8月7日掲載)

2010年2月5日  読売新聞)
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