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京都大…「個性派」生む 自由の学風「自鍛自恃」の精神「源氏物語は、一つの文が長く複雑ですが……」 京都大学文学部3年の筒井秀美さん(21)が、英語で話し始める。ヘンリー・スミス教授(69)や、周りに陣取るアメリカ人留学生たちが耳を澄ます。この日の授業は「若紫」の英訳文を素材にした翻訳論。議論はすべて英語で進むので、真剣勝負の連続だ。 授業を行う「京都アメリカ大学コンソーシアム」は、米国の14大学が設立した教育研究機関で、約1400人の留学生が学ぶ京大内に置かれてきた。米国から来た学生に日本文化などを教えているが、5年前から、英語力に磨きをかけたい在学生が授業に加わるようになった。今期の授業は1月から、同コンソーシアムが移転した同志社大学で開講している。 「最初は議論の輪に入れなくて苦労したが、『下手でもいいや』と思ったら、ふっきれた」と筒井さん。一緒に受講する文学部4年、寺尾紘平さん(22)も「留学生とカラオケや居酒屋に行くのも楽しみ」と笑う。 スミス教授は「二人の発言は留学生の刺激になっている」とほめる。春休みを返上しての「武者修行」は来月まで続く。 必要と思えば、自ら枠を飛び出して学ぶ。そうした京大の「自由の学風」は、一朝一夕に築かれたものではない。 首都から遠く離れた地に誕生した京大は、「官吏養成所」東大に対抗するべく、自由な学問研究と学生の自主性を尊重した教育を目指した。後に京大と合併した旧制第三高等学校の草創期に校長を務めた折田彦市が、学生自治の校風を育んだことも見逃せない。 卒業生も個性派が多い。ノーベル賞受賞者は、三高卒の江崎玲於奈さんを含めると6人。しかし、最近は、羽目を外しすぎ、犯罪に走る学生も出てきた。 松本紘学長は「人間の幅が狭まっている。教養を深めつつ、体験も積んでほしい」と、精神的に自立した「自鍛自恃(じたんじじ)」の気構えを説く。そんな期待を先取りし、実践するような学生もいる。 プロボクサーに「とにかく無我夢中で打ち合いました」 医学部5年の自閑(じかん)昌彦さん(25)は昨年6月、プロボクサーとしてスーパーバンタム級4回戦に出場した。 出身地は埼玉県だが、あこがれの京大に入るため2浪。その間、なまる体を鍛えようと始めたボクシングに、はまった。入学後も、サークル活動を楽しむ同級生を横目に、せっせと京都市内のジムに通った。 「バイトで食いつなぎながらプロを目指す社会人など、大学で勉強しているだけでは巡り合えない出会いがありました」 自然と練習に身が入り、4年生の時、プロテスト合格を達成。無性にうれしかった。プロとして臨んだ最初で最後の試合は、4ラウンドTKO負けを喫したが、「とてもよい経験になりました。今は医師になるため、病院実習に打ち込む毎日ですが、投げ出さずにやっていけるのは、ボクシングのおかげ。将来は救急医になりたい」と笑顔で話す。 ふと空を見上げると、京大のシンボル・時計台が高く突き出していた。真っすぐな若人の志のように。(石塚公康)
(2010年4月22日 読売新聞)
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