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首相の「靖国神社」参拝外交問題もからみ論議写真の拡大
![]() ●イラスト スパイス コミニケーションズ(帯ひろ志)
小泉首相(こいずみしゅしょう)は10月17日、東京(とうきょう)・九段北(くだんきた)にある靖国神社(やすくにじんじゃ)を参拝(さんぱい)しました。首相は年1回の参拝を公言(こうげん)しており、就任(しゅうにん)してから今回が5回目です。靖国参拝の中止を求めてきた中国(ちゅうごく)と韓国(かんこく)は、今回も日本政府(せいふ)に対して強く抗議(こうぎ)し、外相(がいしょう)の訪中(ほうちゅう)を拒否(きょひ)するなど外交問題(がいこうもんだい)となっています。 起源は明治維新靖国神社とはどんな神社なのでしょうか。 起源(きげん)は明治維新(めいじいしん)にさかのぼります。1869年、戊辰(ぼしん)戦争で死んだ新政府側の軍人のために、明治天皇(てんのう)がつくった「東京招魂(しょうこん)社」が始まりです。10年後に靖国神社と改(あらた)めました。「靖国」というのは国を守るという意味(いみ)です。 特徴(とくちょう)として、一般の神社は神話(しんわ)や歴史上の人物を祭(まつ)っていますが、靖国神社は「国家のために命をささげ、戦って死んだ人」であることです。別格(べっかく)の神社として、戦前は陸海軍(りくかいぐん)が管理(かんり)していました。日清(にっしん)、日露(にちろ)戦争、第2次世界大戦など、日本が近代化の中で戦争をした時、愛国心(あいこくしん)や戦意(せんい)をもり上げるための精神的(せいしんてき)な役割(やくわり)をはたしました。 ちなみに、明治維新の立役者(たてやくしゃ)の一人、西郷隆盛(さいごうたかもり)は、新政府軍と戦ったので祭られていません。東京大空襲(くうしゅう)や原爆(げんばく)で死んだ民間人も対象外(たいしょうがい)です。 A級戦犯を合祀問題点の第一に、「A級戦犯合祀(きゅうせんぱんごうし)」があります。 A級戦犯とは、アメリカなど連合国(れんごうこく)が開いた極東国際軍事裁判(きょくとうこくさいぐんじさいばん)(東京裁判)で、「平和に対する罪(つみ)」、つまり侵略(しんりゃく)戦争を指導(しどう)した罪により有罪になった東条英機(とうじょうひでき)元首相ら28人の被告(ひこく)のことです。 太平洋戦争は、日本が行ったアジア諸国(しょこく)への侵略戦争である、というのが国際社会の認識(にんしき)です。しかし、靖国神社は1978年、戦争で亡くなった人の遺族(いぞく)らで作る会に確認(かくにん)の上、A級戦犯14人を祭りました。 「合祀」とは、二つ以上の神や霊(れい)を一つの社(やしろ)に祭ることを言います。靖国には246万人以上が祭られています。 A級戦犯合祀後の85年8月15日、中曽根康弘(なかそねやすひろ)元首相が「首相としての資格(しかく)で参拝した」と、初めて公式参拝しました。これを受けて、中国や韓国は強く抗議しました。 亡くなった人の霊を慰(なぐさ)めることは、日本人にとっては自然なことです。しかし、中国は侵略戦争の、韓国は植民地支配(しょくみんちしはい)の被害(ひがい)を受けました。自国民の命をうばった戦争の指導者を祭っている靖国神社を、現在の指導者である首相が参拝するのは、過去のあやまちを全く反省していないようにみえるからです。この反発などで、中曽根首相は参拝を中止しました。 政教分離の原則二つ目に、「政教分離(せいきょうぶんり)の原則(げんそく)」を定める憲法(けんぽう)にそむくのではないかという問題があります。憲法は、政治と特定の宗教(しゅうきょう)が結びつくことを禁(きん)じています。 これは戦争の反省から生まれました。戦前、天皇を生きた神様とあがめる「国家神道(しんとう)」という国策(こくさく)の宗教がありました。「国民は、天皇とお国のために命をささげよ」と、戦争につき進む原動力となりました。だから、連合国は45年、国家神道を廃止(はいし)し、靖国神社は一般の宗教法人(ほうじん)になりました。 このような流れもあり、首相など公的な立場にある人の靖国参拝は微妙(びみょう)な問題なのです。それは裁判でもあらそわれています。 今年9月、台湾(たいわん)や日本の戦没者(せんぼつしゃ)の遺族たちが、「政教分離の原則を定めた憲法に違反(いはん)し、精神的苦痛(くつう)を受けた」として、国、小泉首相、靖国神社を相手取った裁判の判決がでました。大阪高等(おおさかこうとう)裁判所は「参拝は公的なもので、憲法で禁止された宗教的活動にあたる」と、「違憲(いけん)」としました。一方で、「私的な行為(こうい)」との判決も出ています。 新追悼施設案もこれらの問題を解決(かいけつ)するために、政府の中に「A級戦犯は別の場所に祭ってはどうか」という「分祀(ぶんし)」の意見も出ています。しかし、靖国神社は「個別の霊をぬき出すことは、教えの上からできない」と拒否しています。そこで、国立の戦没者追悼施設(ついとうしせつ)を新しく建てる案(あん)も出ています。日本は今、戦後60年という大きな節目(ふしめ)をむかえています。読売新聞が「戦争責任」をテーマに10月に行った世論調査(よろんちょうさ)では、「政治や軍事指導者の戦争責任について議論(ぎろん)が足りない」と考えている人が約6割に上りました。「戦没者を祭るのにふさわしい場所」については、「靖国神社」と答えた人は42%と半数にとどまり、国民の意見も大きくわれています。戦争の記憶(きおく)がうすれる中、戦争や歴史を学び、議論を深めることが、靖国問題を乗りこえ、アジアの国々と新しい関係を築(きず)くために重要です。 (2005年11月8日 読売新聞)
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