文字サイズ
    学校、受験など教育に関する掘り下げた記事をタイトルごとに掲載します。
    高校

    カドカワが「ニコ動」で乗り出す通信制高校の成否

    京都精華大学マンガ学部教授 すがやみつる
     出版大手の「KADOKAWA」と動画配信の「ドワンゴ」が経営統合した「カドカワ」が単位制の広域通信制高校「N高等学校」を2016年春、沖縄県に開校することを発表し、生徒募集を開始した。「N高等学校」は、若者に人気のインターネット動画サイト「ニコニコ動画」のシステムを改良し、授業を行う。今年でネット歴30年、自身も通信制の大学を卒業し、現在は京都精華大学マンガ学部教授を務めるマンガ家、すがやみつる氏にN高等学校の成否を分析してもらった。

    N高等学校のNは『ネット』や『仲間』

    • N高等学校のホームページ(画像提供:カドカワ株式会社)
      N高等学校のホームページ(画像提供:カドカワ株式会社)

     10月1日に社名変更したばかりのカドカワ(旧社名KADOKAWA・DWANGO)が同14日、通信制高校の開校を発表した。スタートは2016年4月で、校名は「N高等学校」(以下、N高)だ。ホームページ上の「よくある質問」によると、Nの意味は「Net、New、Next、Necessary、Neutralなど」とされているが、川上量生(のぶお)カドカワ社長によると、「『N』は『ネット』や『仲間』など自由に解釈してほしい」(読売新聞記事より)ということらしい。初年度の入学定員は1万人だというが、学校説明会も定員オーバーで追加開催されるほどの人気ぶりだ。

    ラノベやパティシエの授業も

     N高は、ニコニコ動画(ニコ動)をはじめとする強力なネットインフラを持っているせいか、「デジタルネイティブ向けの通信制高校」という側面が強調されている。通常の科目以外に、カドカワが得意とする文芸やラノベ(ライトノベル)、マンガ、イラスト、プログラミングのほか、専門学校のバンタンと提携したファッションやパティシエなどの実務系授業も用意されており、生徒の個性を尊重する学校であることも強調されている。

     ネットの掲示板やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でのN高に関する書き込みを見ていると、「引き籠もりの生徒を増やすだけ」「ニート育成高校」といった通信制高校の学びを揶揄(やゆ)する声が目についた。本当に、そうなのだろうか。

    54歳で大学生に

    • 早稲田大学eスクール受講中の筆者
      早稲田大学eスクール受講中の筆者

     かくいう私は、今年でネット歴が30年。1985年に生まれて初めてアクセスした先は、ニューヨーク工科大学(大学院修士課程)の通信教育用システムであった。当時は英語が苦手だったので、何もしないで切断したのをよく覚えている。アメリカには当時からネットを使った通信制大学があることに驚き、日本でも同じような大学ができたら入学したいと夢想したのも懐かしい思い出だ。

     その夢が実現したのは20年後の2005年のこと。インターネットを使った通信制大学の先がけである早稲田大学人間科学部eスクールの存在を知り、54歳で入学することになったときのことだ。

    • 大学院の修士論文発表
      大学院の修士論文発表
    • 京都精華大学マンガ学部キャラクターデザインコースの授業風景
      京都精華大学マンガ学部キャラクターデザインコースの授業風景

     4年間の必死の学習で研究の面白さを知った私は、eスクール卒業後、早稲田大学大学院人間科学研究科に進み、60歳で修士課程を修了した。ここで書いた修士論文の題目は、「マンガ初学者のための4コママンガeラーニングコースの設計と実践」という。eラーニングとはネットを使った通信教育のことだが、まさにN高がやろうとしていることを、一足先に研究のテーマにしていたことになる。

     そして現在は、京都精華大学マンガ学部キャラクターデザインコースで教壇に立ち、1年生全員を対象にしたeラーニング授業をひとりで担当する身でもある。

     このようなeラーニングやサブカルチャー教育に関わる立場から、いま話題のN高について、少し検証してみたい。

    2015年10月29日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun