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    学校 モノ・風景

    多機能、玩具化 男児が夢中…筆箱

    読売新聞教育部 泉田友紀
    • 象のCMで話題となった筆入れ
      象のCMで話題となった筆入れ

     「象がふんでもこわれない」――。

     本物のゾウが筆箱に足を載せるテレビCMは、強烈な印象を残した。高度成長期の1965年に発売された「アームふでいれ」。開発に携わった伊藤幸信・サンスターホールディングス会長(74)は、暴走族が信号に石を投げても割れなかった様子を見て、「警察に問い合わせ、ランプ部分と同素材のポリカーボネートで筆箱を作った」と話す。

     戦後出回ったセルロイド製は燃えやすく、火鉢の近くで発火することも。代わって使われたプラスチック製はすぐに壊れ、「丈夫で熱に強い筆箱を作ろうと考えた」という。

     日本で鉛筆が普及したのは大正時代で、当時は木製の筆箱もあった。終戦直後には航空機の材料だったジュラルミンを活用。生活に余裕が出てきた1970年代以降、筆箱は急速に多様化する。

     蓋にカギがついた「ロック式」、引き出しや仕切りをたくさん付けた「多面式」、超合金ロボットのような「ジョイント式」……。各メーカーがアイデアを競い、「玩具化」した筆箱に男子児童らが夢中になった。

     「子どもが集中できず、学習にふさわしくない」――。ロック式筆箱を雑誌「暮しの手帖」が批判し、大手百貨店が「取り扱わない」と貼り紙で告知するほど、人気は過熱していた。祖父の代から文具店を営む東京都小金井市の中村研一さん(49)は小学4年の頃、ボタンを押すと鉛筆を入れた面が飛び出す「多機能型」筆箱を使っていた。実家の店では扱っておらず、「他の店に買いに行き、友達に羨ましがられた」と笑う。

     中村さんは現在、週末だけ古い文房具を販売する店を開いているが、筆箱を手に取る中高年が多いという。

     各地の学校が学用品の種類を制限したこともあり、80年代後半頃には、ブームは下火になった。中高生に流行した「缶ペンケース」を経て、現在は布や人工皮革などの実用的なものが主流だ。その中で、シンプルなアーム筆入は大阪府の私立小学校で採用されているなど、現役を続ける。

     「遊び心が行き過ぎた時代もあったけれど、筆入れはいつの時代もランドセルの中の王様。お気に入りがそばにあると、勉強も楽しくなると思うんです」。アイデアあふれる商品を生み出した伊藤さんは語っている。(泉田友紀)

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    2015年04月28日 08時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun