文字サイズ
    学校、受験など教育に関する掘り下げた記事をタイトルごとに掲載します。
    学校 モノ・風景

    勤勉の象徴 改めて光…二宮金次郎像

    読売新聞教育部 小松夏樹
    • 文部科学省の道徳教材(小学低学年用)に描かれた二宮金次郎
      文部科学省の道徳教材(小学低学年用)に描かれた二宮金次郎

     「金次郎像は校門を入って右側にありました。賢そうな顔立ちで、働きながら学問をした真面目で一生懸命な人なんだと子ども心に思っていました」。千葉市在住の主婦、大川節子さん(60)が、50年ほど前の小学校時代の思い出を手紙で寄せてくれた。

     「金次郎」は、江戸後期の農政家、二宮尊徳(1787~1856年)の通り名。薪を背に歩きながら書物を読む子どもの立像が目に浮かぶ人も多いだろう。「勤勉」「努力」の象徴として、昭和の初め頃から戦前にかけ全国の小学校に像が建てられ、子どものお手本とされた。

     だが、生誕地にある尊徳記念館(神奈川県小田原市)によると、戦時中、像は軍事物資の不足を補う「金属供出」のために学校から消えていった。戦前戦中は金次郎の「忠孝」の側面が強調されたため、戦後は軍国主義と重ねられて疎まれる憂き目にも遭った。

     本来の尊徳の思想は、農作や商いの実践と学問から得た独創的なもので、600か所もの困窮した農村を復興させるなどの偉業につながった。

     最近は関連書籍の出版が目立つなど、業績に改めて光があたる。文部科学省が昨年度から全国に配布している道徳用教材の小学校低学年版にも金次郎が登場している。

     像も再び建つようになった。小田原市立豊川小学校には、丸太に座り本を読む像がある。寄贈した石材業、渡辺明さん(79)は、「金次郎が座って読書していたという記録があったことと、車が多い現代に歩いて本を読む像は合わないという意見があって、座像になった」と話す。

     同市立桜井小には、昔からあった立像が中庭に、開校100周年を記念して建立された座像が校庭にある。

     同小などでは、小さな努力の積み重ねが大きな収穫や力に結びつくという尊徳の教え「積小為大せきしょういだい」を実感する体験学習を行っている。金次郎が、本を読む灯りあか用の油を得るために菜種を荒れ地で育てた逸話にならい、実際にアブラナを栽培して搾った菜種油で火をともす。子どもたちは、大地の恵みを感じるという。(小松夏樹)


     「学校 モノ・風景」では学校生活を彩るモノや行事を通し、教室や子どもの暮らしの変遷をたどります。今後「給食の牛乳」「学生帽」「通信簿」などを取り上げる予定です。
     エピソード・氏名、電話番号などを明記し、〒100・8055 読売新聞東京本社教育部へ。ファクス03・3217・9908.メールは kyouiku@yomiuri.com
    2015年06月03日 08時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun